テーマ
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水素
世界的に脱炭素社会の構築に向けた動きが本格化している。なかでも、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない水素は「究極のクリーンエネルギー」とも呼ばれ、その有効活用に向けた動きが活発化している。米国エネルギー省(DOE)は2023年6月に国家クリーン水素戦略を発表し、製造工程でCO2を発生させないクリーン水素を2030年までに年間1000万トン、2040年までに年間2000万トン、2050年までに年間5000万トンへの生産拡大を目指す。欧州も2030年までに水素関連に最大で50兆円近い金額を投資することを表明している。また、かねてから水素に注力している日本に加え、中国なども本格注力する動きを見せており、水素エネルギーの開発競争は世界規模での盛り上がりをみせている。水素を動力源とする燃料電池車(FCV)のほか、船舶、飛行機、ロケット、それに工場現場などでの水素活用が本格的に模索されている。
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水道関連
米国では5万を超す水道事業体があり、民営企業がその5割以上を占める。日本では水道事業は市町村により経営がなされており、この点が米国との大きな違いとなる。米国でもかつては多くの地域で地方自治体による運営がなされてきたが、規制緩和を受けて1990年代から民営化が進んだ。財政難の地方自治体にとって設備更新の負担が増す中、有力民営企業は近隣の小規模事業体を買収し、サービスの提供エリアの拡大に力を注いできた。水道会社は総じて高成長は望み難く、設備投資負担などで利益率は抑えられる傾向にあるものの、人口増を背景に安定的な需要の伸びが期待できるセクターといえる。また、依然として小規模事業体による細分化の問題が残されており、規模拡大や再編の余地も残されている。なお、景気低迷時には市場ではそのディフェンシブ性で注目されやすい。
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睡眠ビジネス
健康な生活を送るためには十分な睡眠をとることが欠かせないが、不眠症など睡眠の問題を抱えている人は多い。睡眠不足は倦怠感や集中力の欠如を招くだけでなく、肥満やうつ病、心臓発作などのリスクを高める要因になるともいわれており、睡眠不足の解消は現代社会に生きる人々にとって大きな課題の一つとなっている。快適な睡眠を求める人は多く、関連する商品やサービスは寝具から薬品、IT機器まで幅広い。睡眠ビジネスはいまや巨大な産業を形成しており、関連銘柄としては寝具ではキャスパー・スリープやスリープ・ナンバーなど、睡眠薬ではメルクやファイザー、グラクソ・スミス・クラインなどが挙げられる。また、スマートウォッチには睡眠時間の測定や睡眠の質などを測定する機能を搭載する機種が出ており、アップルや傘下にフィットビットを擁するアルファベット(※グーグルを運営)なども関連銘柄となる。
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巣ごもり
巣ごもり消費とは外出をせず、自宅で過ごしながらさまざまな物品・サービスの購入・消費を行う活動様式を指す。インターネットの普及や宅配網の拡充などが巣ごもり消費の拡大を後押ししている。巣ごもり消費の対象となるのは、ネット通販(eコマース)やカタログ通販、飲食物などの宅配サービス、動画配信やゲームといったコンテンツサービスのほか、eラーニングなどがあげられ、関連企業の裾野は幅広い。2019年末に中国で発生し世界中に感染が拡大した新型コロナウイルスでは、各国が外出禁止や大規模イベントの中止、休校、在宅勤務へのシフトなどを余儀なくされ、人々の行動が自宅内へと大幅に制約されたことで、巣ごもり消費関連への関心を高めることになった。主な関連企業としては、eコマースではアマゾン、アリババ・グループ・ホールディング、イーベイ、動画配信ではネットフリックス、アルファベット(※グーグルを運営)、宅配ではブルー・エプロンやグラブハブ、ゲームではマイクロソフトやエレクトロニック・アーツ、eラーニングではグランド・キャニオン・エデュケーションやニュー・オリエンタル・エデュケーション・アンド テクノロジーなどが挙げられる。
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ステーブルコイン
ステーブルコインは仮想通貨(暗号資産)と同様にブロックチェーン(分散型台帳)技術を基盤とした電子決済手段で、名称の「stable(ステーブル=安定した)」が表すように、価格を安定させることを目的として設計されている点に特徴がある。ドルなどの法定通貨や金や原油といったコモディティなどの価格と連動(ペッグ)することで、急激な価格変動を避けることができ、送金や決済などの手段として実用性、利便性を高めている。その価値を裏付ける仕組みに応じて、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「アルゴリズム型」などに分類されるが、現在、世界的に注目が高まっているのが「法定通貨担保型」である。2025年7月には米国でドルに価値を連動させる法定通貨担保型のステーブルコインの普及を促す「GENIUS(ジーニアス)法」が成立した。トランプ米政権は規制の枠組みを整えることにより、ステーブルコインの信頼性の向上を狙う。ステーブルコインが普及することで、企業・消費者には決済・送金コストの低下、米国政府にはドルの基軸通貨としての覇権維持といったメリットが期待されている。
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ストリーミングサービス
インターネット経由で動画や音楽のデータを受信しながら随時再生を行う配信方式を指す。データを全てダウンロードした後に再生を始める方式とは異なり、(1)受信開始後にほぼリアルタイムでの視聴が可能であり、(2)ダウンロードに備えてストレージの空き容量を確保する必要がない、(3)再生後のデータは削除されるため著作権保護が重視されるコンテンツの配信に適している、といったメリットがある。かつては音楽などのコンテンツはダウンロードして視聴するスタイルが主流だったが、高速・大容量のデータ送受信を可能にするブロードバンドとスマートフォンなどの普及により、現在ではストリーミング方式が一般的となっている。YouTube(グーグル:アルファベット傘下)やNetflix(ネットフリックス)、Amazon Prime Video(アマゾン)、Disney+(ディズニー)などの動画配信、Spotify(スポティファイ)、Apple Music(アップル)、YouTube Music(グーグル)などの音楽配信サービスを支える基幹技術として存在感を強めている。米国ではテレビ放送やケーブルテレビなどの従来型メディアからストリーミングサービスが利用者の視聴時間を奪いつつあり、メディアの新旧交代の波を背景に広告ビジネスも急速にストリーミングサービスに軸足を移しつつある。
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スポーツ
米国のスポーツ関連市場は50兆円規模と言われ、世界一の市場規模を誇る。健康志向の高まりでスポーツ人口が増加しているほか、スポーツ観戦に絡む興行市場も拡大基調を続けている。スポーツビジネスは景気動向の影響を受けにくく着実な成長が見込めることから投資家からの注目度も高い。スポーツ熱の高まりを受けてウェアやシューズ、アウトドアなどスポーツ用品の売り上げが拡大し、フィットネスジムの会員数も増加している。野球やアメリカンフットボール、バスケットボールといったプロスポーツの観戦人気も高く、放送産業を含め巨大な産業となっている。また、2023年は「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」や「バスケットボールワールドカップ」(日本・フィリピン・インドネシア共同開催)、「FIFA 女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド 2023」が開催されるほか、来年のパリ五輪の予選も本格化するなどビッグイベントが目白押しであり、あらためてスポーツ関連株への関心が高まる可能性がある。
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スポーツテック
スポーツテックとは、スポーツ(Sports)とテクノロジー(Technology)からなる造語で、スポーツにIoTや人工知能(AI)、ビッグデータなど最先端のICT技術を活用することによって、選手のパフォーマンスの改善やファンの観戦体験の向上などを図り、スポーツの新たな付加価値や、新たなビジネスモデルを実現すること。スポーツテックは大きく「観る」「支える」「プレイする」「創る」の4領域に分けられる。「観る」ではスポーツ観戦の環境をより快適なものに整えるための技術があたる。VR・ARを用いた臨場感ある視聴体験やマルチアングルによる視点の切り替え、スマートフォンなどでの観戦を可能にするストリーミングサービスなどが具体例となる。「支える」は、選手・チームのパフォーマンスの向上を支える技術で、選手・チームに合わせた最適なトレーニングメニュー、練習内容のデジタル化や効果的なアドバイス、データ分析に基づく戦術的な提案を行うシステムなどが該当する。また、競技の運営を支えるサッカーの「VAR判定」や各種採点支援システムなどもこれに含まれる。「プレイする」ではスポーツを主体的に楽しむための技術があたり、スマートフォン・スマートウォッチなどに搭載されたランニングアプリ、ヨガアプリ、フォームチェックなど動作を解析するアプリなどが具体例となる。「創る」は従来存在しなかった新しいスポーツ・環境を創造する技術で、日本発祥のARスポーツ「HADO」などが代表例といえる。スポーツテックはこのように技術の進化とともに裾野が広がりつつあり、市場規模も着実な成長が見込まれている。
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スポーツ用品
健康志向の高まりを背景としたスポーツ人口の増加に伴い、スポーツ用品に対する需要も強まっている。シューズやスポーツウエアなどはその代表例であり、オリンピックやサッカーのワールドカップといったビッグイベントが需要喚起につながることも多い。
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スマホゲーム
スマートフォン(スマホ)の普及とともにゲーム市場は、従来の専用機に加えスマホやパソコン上で動作するアプリへと活躍の場を広げている。特に、この3月には米IT大手のグーグルがインターネットを経由してスマホやパソコンを利用してゲームができる新サービス「Stadia(スタディア)」を発表。今後、ゲーム市場に地殻変動を起こす可能性も出ている。6月には世界最大のゲームイベント「E3」が開催されることもあり、スマホゲーム関連は今後、さらに注目を集めることが予想される。関連銘柄は、グーグルを傘下に持つアルファベットや大手ゲームソフト制作会社のエレクトロニック アーツやアクティビジョン ブリザード、それにジンガなど。
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スマート医療
高度医療の提供や業務効率化・安全性の向上を目的として、AI(人工知能)、ICT(情報通信技術)、IoT、ロボティクスなどの最新テクノロジーを活用する取り組みが医療現場で広がっている。具体例としては、遠隔診察(テレヘルス)やロボット手術、電子カルテ、CT・MRI・X線といった画像データのAI解析、ウェアラブル医療機器を用いた患者モニタリング、さらにはニコチン依存症治療アプリなどのデジタルセラピューティクス(DTx)が挙げられる。また、高性能AIの登場により、臨床データとゲノムデータを統合して高精度かつ短時間での診断を目指す取り組みも加速している。新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)を契機に遠隔診察の普及は大きく進んだが、その後もITの進化を背景にスマート医療市場は堅調に成長を続けており、関連企業の動向が引き続き注目される。
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スマートウォッチ
アップルから「Apple Watch」が販売された2015年以降、スマートウォッチ市場は順調に成長している。特に運動量や心拍数、血圧を記録するフィットネス機能を充実することで新たな需要を開拓した。また、通信規格「LTE」に対応したスマートウォッチも登場。携帯電話がなくても単独で通話やメッセージなどが使えるようになり利便性が大きく高まった。Apple Watchの販売も伸び、それとともにスマートウォッチの市場全体の規模も拡大している。また、19年1月にはアルファベット傘下のグーグルが、時計メーカー「フォッシル」のスマートウォッチ部門を買収することを発表しており、同市場は今後、一段と競争が激化するとともに規模は拡大するとみられている。アップルやアルファベットのほか、フィットビットなどが関連銘柄となる。
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スマートシティ
スマートシティとは、都市の抱えるさまざまな課題に対して、ICT(情報通信技術)や自動運転、MaaSといった次世代モビリティ、ロボット、スマートホームといった新技術のほか、センサーで収集したデータなどを活用することで、都市インフラの整備や管理、運営などの最適化を通じて、人々の生活の質の向上を目指す都市のこと。 現代の都市は人口集中や高齢化、エネルギー消費の増加、災害・治安対策といった多様な課題に直面するが、これに対してICTなどを駆使し、交通渋滞の解消、再生可能エネルギーの活用や省エネ化、自然と共生し得る都市空間の構築、災害に強い街づくり、資源循環など推し進めて、都市全体の最適化を目指す。 スマートシティ構築の取り組みは世界で進められているが、かつてのエネルギー効率重視の都市構想から姿を大きく姿を変えてきている。世界的な人口の増加と都市集中が進むなか、人と環境の双方に配慮しながら成長とサステイナビリティを確保するための、柔軟で全体の最適化を行える仕組みが求められている。それを実現するためのAIやビッグデータ解析、センサー、モバイル端末、再生可能エネルギー、自動運転、蓄電池としても利用できる電気自動車など、各種の要素技術が実用化や普及段階を迎えたことが、各国のスマートシティへの取り組みを大きく後押ししている。 米国ではニューヨークやサンフランシスコなどでスマートシティ・プロジェクトが進められているほか、日本ではトヨタが2021年2月、静岡県で実験都市「ウーブン・シティ」に着工しており、未来の街づくりが期待を集めている。
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スマート農業
「スマート農業」とは、ロボットやAI(人工知能)、IoTなど先端施術を活用する新たな農業のこと。「Agriculture(農業)」と「Technology(科学技術)」を組み合わせた造語で「AgTech」(アグテック)」と称されることもある。先進国を中心に農業分野では、担い手の高齢化や人手不足、労働集約的な作業の非効率性、さらには気候変動による干ばつなどの発生といった作物の安定供給を脅かす課題を解消するために、「スマート農業」の重要性が高まっている。具体的には、自動走行トラクターによる耕耘やドローンを使った農薬散布、収穫ロボットや植物工場の導入、さらにはドローン・人工衛星で集めたセンシングデータや気象情報をAI解析することで農作物の生育や病虫害を予測するなど、活用の範囲は広い。世界最大の農業国である米国は、大農法と呼ばれる広大な農場を大型機械で管理する大規模農業を特徴としており生産性も高い。加えて、ドローンによる農薬散布や害虫・病気の自動検出、データ解析に基づく経営の支援など、農業の競争力に磨きをかける取り組みが進んでいる。また、国土面積が九州とほぼ同じにすぎないオランダを、世界第2位の農業大国に押し上げた原動力となったのも、ICT・IoTなど先端技術を活用した精密な「スマート農業」であったとされる。また、2022年に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、世界的に食糧供給の不安定化への懸念を強めており、生産力強化の切り札として「スマート農業」に対する期待は一段と高まりそうだ。
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スマートフォン
タッチパネルで操作ができる、パソコンに近い性能を持つ携帯電話のこと。従来型の携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)と区別するためにスマートフォンと呼ばれる。スマートフォンの特徴として、インターネットの使い勝手の良さ、アプリの追加による万能性、SNSとの親和性の高さなどが挙げられる。 2007年に米アップルが投入した「iPhone」がスマートフォンのスタイルを決定づけ、多くの追随モデルを生んだ。アップルは主力の「iPhone」を軸にエコシステムを築き上げ、後にプラットフォーマーとして米企業で初の時価総額1兆ドル企業へと躍進する。 長くサムスン、アップルの2強時代が続いたスマートフォン業界だが、高機能化・高性能化の余地が次第に狭まる中、中国企業の躍進、中国・インドなど新興国市場を巡る争奪戦といった地殻変動の兆しも表れている。