テーマ
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認知症薬
認知症は、記憶や思考を司る脳の神経細胞が死んだり働きが悪くなったりすることで、物忘れや妄想、ひとり歩きなどの症状が出て、日常生活に支障を来すようになる病気。脳内にアミロイドベータやタウという異常なたんぱく質がたまって神経細胞を破壊し、脳が委縮することで発症するとみられている。世界では約5000万人の認知症患者がおり、2030年には8200万人、50年には1億5000万人に達するとも予想されている。このうち、最も多いのはアルツハイマー型の認知症で全体の60~70%を占める。認知症の治療薬開発は難航しているが、バイオジェンと日本のエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が米食品医薬品局(FDA)から2023年1月に迅速承認を取得。6月には米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は同薬を正式承認することを勧告した。正式承認されれば、民間保険での使用も広がるとみられ市場拡大への期待が高まっている。
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年末商戦
米国のGDPの約7割は個人消費が占めている。特に年間の約3割にのぼる消費がクリスマスセールを含む年末商戦の期間に費やされると言われており、米国の景気動向に与える影響も大きい。米国のクリスマスセールである年末商戦は11月第4木曜日の感謝祭の翌日の「ブラック・フライデー(赤字の小売店でも黒字にするとのいわれが由縁)」から本格化する。感謝祭の次の月曜日のネットショッピングが最も盛り上がる「サイバーマンデー」を経て12月末まで商戦は続く。特にクリスマス・プレゼントとしてゲーム機や衣料品、宝飾品などでは販売増が見込め、電子商取引(EC)関連や百貨店、ディスカウントストア、ゲーム関連株などが注目される。
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燃料電池関連
燃料電池とは我々が理科の実験で行った水の電気分解と逆の作業で、水素と酸素を電気化学反応させて電気を作る。現在はエコカー分野での需要がクローズアップされているが、パソコンやモバイル端末、家庭用電源、発電向け、産業用コージェネ分野までその用途は多岐にわたる。
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燃料電池車
米国で燃料電池自動車(FCV)に対する関心が高まっている。FCVは燃料に水素を使い、タンク内の水素と酸素を化学反応させることで発電し、モーターを回して走行する。排出するのは水蒸気のみで「究極のエコカー」とも呼ばれるが、主にトラック・バスなど商用車分野での活躍が期待されている。FCVの特徴として、エネルギー効率が高く、走行距離が長いほか、充電が不要で燃料の充填時間も短く、一定の貨物搬送に向けたスペースも取りやすいなどのメリットがある。環境にやさしい自動車では電気自動車(EV)が普及してきているが、EVは走行距離や充電時間などの面で、貨物の長距離輸送にはまだ向いていないとみられており、今後、一般乗用車はEV、商用車はFCVと住み分けが進むとの観測も出ている。関連銘柄は、トラックのFCVを手掛けるニコラや水素燃料電池メーカーのバラード・パワー・システムズ、水素ガス販売のエアープロダクツ・アンド・ケミカルズなどが挙げられる。
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農業関連
米国は世界有数の農業大国であり、とうもろこし生産では世界首位、大豆や小麦などでも世界有数の生産規模を誇る。同じく生産量で世界首位の牛肉や鶏肉など、畜産物の生産でも高い実績を有し、農産物は米国の主要な輸出品となっている。他国との貿易交渉では米国の農産物を巡ってしばしば輸出枠の拡大、関税引き下げなどが協議の焦点ともなる。広大な国土を背景に、米国では農業のみならず農業周辺の幅広い分野で産業が形成されており、その各分野で世界のリーディング企業を擁している。種子・農薬大手のコルテバ、農機のキャタピラーやディア&カンパニー、穀物商社のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドなどが関連銘柄となる。
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農業機械
米国はさまざまな領域で大国として君臨するが、トウモロコシや大豆、畜産といった農業分野においても大国としての顔を持つ。重要な輸出産業でもある同国の農業の強みは、農業機械や遺伝子組み換え作物などの導入による生産の効率化、コーンベルトに代表される適地適作主義による集中生産、アーチャー ダニエルズ ミッドランドなど世界の穀物流通に大きな影響力を奮う穀物メジャーの存在などがあった。現在、米国の農場数は減少傾向にあるものの、一方で大規模農場は増加している。農業従事者の高齢化も指摘されており、米国農業の大規模化・効率化を支える農業機械の重要性は一段と高まっている。
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廃棄物処理
大量消費社会の米国では、生産や消費などその経済活動の過程で生じる廃棄物も増加傾向にあり、その処理は環境意識の高まりもあって重要性を増している。廃棄物の処理方法としては埋立のほか、焼却時の熱を活用する廃棄物発電(有機ゴミの燃焼により発電するのがバイオマス発電)、リサイクルなどが挙げられる。関連銘柄には北米最大手の産業廃棄物処理企業であるウエイスト マネジメント、廃棄物処理大手のリパブリック サービシーズ、廃棄物発電を手掛けるコバンタ ホールティング、医療廃棄物処理で首位のステリサイクルなどがある。
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配車サービス
スマートフォン(スマホ)のアプリやソーシャル・サービスを使って、ネットを介してドライバーと利用者を結びつけるサービス。ドライバーにタクシーやハイヤーといった専業のほか、一般の人を対象とするサービスもある(規制でサービス提供を行えない国もある)。登録したドライバーは運転する時間や頻度、エリアなどを自分の都合で決められる一方、利用者もスマホのGPS機能によって近くに位置する車を希望の場所に手配できる。配車時間の短縮に加え、アプリでの行き先指定や自動決済なども行え、ドライバー、利用者の双方にとって利便性が高く、ウーバーによる提供を機に急速に普及した。自動車を相乗りする割安なライドシェアリング、専業の個人・企業の車を手配するもの、一般人をドライバーとするものなど提供するサービスも多種多様である。世界展開を推し進めたウーバーは600以上の都市でサービスを提供しているが、各地でのライバル台頭により競争は激化している。特にアジアではウーバーの苦戦が目立ち、2016年には中国事業を滴滴出行に売却し同国から撤退。その後、インドネシアやシンガポールなど東南アジアで展開していた事業もGrab(グラブ)に売却している。
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ハロウィン
10月31日に行われるハロウィンは日本でも秋のイベントとして定着してきたが、オリジナルはもちろん欧米の祭りであり、秋の訪れを告げる風物詩として広く親しまれている。ハロウィンではお化けや魔女などに仮装した子供たちが近所の家々を回り、「トリック・オア・トリート(お菓子をくれないといたずらするぞ)」とお菓子をねだったり、ホームパーティを開いたりすることが一般的だ。また、季節限定の菓子や装飾品、衣装の発売や限定イベントなども数多く行われる。アメリカでは、ハロウィンから年末のクリスマスに向けて消費が盛り上がる時期を迎えるため、米国経済に影響を与える季節商戦としてその動向が注目されている。ちなみに、米国の株式市場には「10月末のハロウィンの前後に株を買い、翌年の春に売ると儲かる」という「ハロウィン効果」と呼ばれるアノマリー(経験則)がある。米国の最大手チョコレート会社であるハーシー、スナック菓子のモンデリーズ・インターナショナル、ペプシコなどが関連銘柄となる。
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半導体
半導体はスマートフォンやパソコン、家電製品、自動車などに使われており、あらゆるものをネットにつなぐIoT時代の到来に伴って、その市場規模は一段と拡大している。産業の基盤を支える不可欠な存在として、「産業のコメ」とも称される。半導体には、データ保存などに使われ汎用性の高い「メモリー半導体」のほか、電気自動車(EV)向けなどで需要が拡大する「パワー半導体」、光や音などの情報を処理する「アナログ半導体」、人工知能(AI)に特化した「AIチップ(AI半導体)」など多くの種類がある。なかでもAIチップの分野では、2022年11月に米オープンAIが生成AI「ChatGPT」を公開して以降、開発競争が一段と激化した。米国と中国による政治・経済的な対立の深まりもあり、半導体は国家間の競争力を左右するキーデバイスとして、その重要性を増している。なお、米国半導体関連の代表的な株価指数として、米国上場の半導体設計・製造・流通・販売を手掛ける主要30社で構成される「フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)」があり、関連株の動向を占う指標として日本でも注目度が高い。また、PER(株価収益率)が高い銘柄が多い半導体株は、金利動向に左右される面もある。米金利の低下局面では高PERが許容される傾向が強まるため、半導体株の株価には追い風となりやすいとされている。
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半導体製造装置
半導体は「産業のコメ」と呼ばれ巨大な産業を形成している。半導体製造装置とは、半導体の形状加工や組み立て、検査など半導体を製造する過程で使用される装置のことで、各工程に特化した装置を手掛ける企業や複数の工程の装置を手掛ける企業がある。半導体製造装置メーカーの業績は、世界のIT・デジタル関連の需要を測る先行指標として注目されており、市況関連銘柄として好不況の波をうまく捉えることができれば大きな利益を得ることも可能なため、投資家の人気は高い。あらゆるものがインターネットで結ばれるIoT時代の到来は、膨大な情報量とわれわれの日常空間が、境界線を引かれることなく同化されていく過程でもある。このIoT化の進展と、人工知能(AI)の飛躍的な進化を支えるのが大容量化・高速化が進む半導体の存在である。近年では記憶素子が従来の平面ではなく立体方向に積層化された革新的なフラッシュメモリー3次元NANDやAI向けに特化した先端半導体の開発などで視界が大きく変わった。半導体製造装置業界も新たなステージを迎えている。
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半導体設計・開発(EDA)関連
あらゆる情報機器、電化製品の処理をつかさどる半導体は、産業の競争力を左右する最重要戦略デバイスとして注目度が一段と高まっている。その半導体設計の自動化を支援するソフトがEDA(電子設計の自動化ツール)であり、半導体の製造プロセスの最も上流工程に関わる。半導体設計は、研究開発や製造に向けて根幹部分を握るため、その付加価値は高く市場は急成長している。特に、AI(人工知能)や5G、自動運転車といった最先端技術向け半導体の開発は景気変動の影響を受けにくいという特徴がある。EDA業界は米国のシノプシス<SNPS>とケイデンス・デザイン・システムズ、ドイツのシーメンス傘下のシーメンスEDAの3社が寡占市場を形成しており、残りの市場に多数の企業が参入している。
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ハンバーガーチェーン
バンズ(丸いパン)にパテ(肉)を挟んだハンバーガーの由来については諸説あるが、1904年に開催されたセントルイス万国博覧会の会場内で「ハンバーガー」の名称ですでに販売されていたとされ、米国発祥の料理と考えられている。ハンバーガーは米国では国民食に位置づけられており、第二次世界大戦後にアメリカ文化が世界へ拡散していく過程では、コカコーラやディズニー、ハリウッド映画などとともに、マクドナルドのハンバーガーがその一翼を担った。調理が容易で食事時間が短く、持ち帰りも可能なファストフードであるハンバーガーは、生活ペースの速い現代人のニーズを捉えて市場が成長し、さまざまなハンバーガーチェーンを誕生させている。また、ハンバーガーチェーンは不況に強い業態としても知られる。肥満が社会問題として深刻化する米国では、ハンバーガーやフライドポテトなど高カロリー食品の日常的な摂取が肥満の一因として指摘されてきたが、近年では健康志向の高まりを背景にハンバーガーの脱ジャンクフード化や高級化も進んでいる。ビヨンドミートによる植物由来のパテなど素材にも革新の動きがみられ、ハンバーガー大国である米国の動向からは目が離せない。
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バイオ医薬品
バイオ医薬品はバイオ製剤、生物学的製剤などとも呼ばれ、遺伝子組み換えや細胞培養などバイオテクノロジーを用いて開発・製造される生体由来の医薬品である。化学的に合成された従来の薬(低分子薬)に比べ分子量が大きいことから高分子薬とも称される。薬効の高さ、副作用の少なさなどで注目されており、従来薬がカバーできなかった希少疾病や難治性疾患分野での応用も期待されている。ただし、開発・製造の難度は高く巨額の研究開発費が必要とされるため、従来薬に比べ高価となる傾向がある。バイオ医薬品の開発は欧米企業がリードしており、有望な治療薬の獲得を目的とするM&A(合併・買収)も活発に行われている。
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バイオエタノール
バイオエタノールは再生可能な生物由来の資源「バイオマス」から生成したエタノールのこと。アルコールの一種であるエタノールは燃料として用いることが可能なため、原油価格の高騰時にはサトウキビやトウモロコシなどから生産したエタノールを代替燃料として活用する動きが過熱した。サトウキビやトウモロコシなどのバイオエタノールへの大規模な転用は食糧・飼料需要とも競合し、穀物価格の高騰を招く要因としても指摘された。ただ、近年、シェールガス・オイル革命の進展に伴い行き過ぎた転用の動きは沈静化している。