テーマ
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インフラ
米国では、道路や橋梁、上下水道設備などのインフラ設備の老朽化が深刻な問題となっており、設備の更新に向けた需要は強い。財政負担が増し赤字拡大につながるとの慎重な見方も少なくないものの、景気刺激策としてインフラ投資に期待する声は強い。2020年11月の米国大統領選挙でトランプ氏を破って大統領に就任した民主党のバイデン氏も、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ景気の回復を図るためにインフラ投資を積極的に推し進めようとしている。特に、米国では2022年8月に「インフレ抑制法」と呼ばれる「歳出・歳入法」が成立した。同法はインフラ投資の活発化をもたらす内容を含んでおり、今後のインフラ投資需要の盛り上がりが期待されている。
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インフルエンザ関連
インフルエンザウイルスによって起こるウイルス性呼吸器感染症を治療するワクチンなどを扱う企業を指す。インフルエンザは罹患すると咳や喉の痛みのほか高熱を伴い、気管支炎や肺炎といった合併症を引き起こすことがある。インフルエンザには遺伝的に小さく変異しながら毎年流行する「季節性インフルエンザ」と、動物間で感染するウイルスが変異してヒトに感染する「新型インフルエンザ」がある。このうち「季節性」は早期治療により重症化を防ぎやすいが、大多数が免疫を持たない「新型」は爆発的流行が懸念される上、重症化する可能性も高くなる。 2017-18年の冬に米国でほぼ全土に感染が拡大したインフルエンザの流行では8万人が死亡したとされ、1976年以降で最悪の結果となった。猛威を奮った背景には、ウイルスが「新型」であったことと、ワクチンの接種率が低かったことが指摘されている。たとえウイルスが新型であっても、予防対策としては重篤な合併症のリスクを軽減する意味でもワクチンの接種、感染を防ぐためのマスクや殺菌剤の利用が重要となる。また、感染後の対応ではウイルスの増殖を阻害する抗インフルエンザ薬が用いられ、株式市場でも開発に関わる関連企業への関心は高い。 ここ数年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の影に隠れてその脅威が見過ごされてきたが、2022年12月時点で米国のインフルエンザ患者数は過去10年で同時期としては最多に達し、新型コロナ、RSウイルスによる呼吸器感染症が同時流行する「トリプルデミック」が警戒されている。
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飲料
飲料業界の世界市場は順調に拡大している。世界人口の増加に加え、新興国の経済成長に伴う需要が増加していることに加え、先進国でも景気拡大が追い風となっている。地域的には中国やインド、インドネシアなどを含むアジア太平洋地域は市場規模が大きいうえに成長率も高く、世界市場を牽引している。飲料業界には、収益力が高く業績が安定している企業が多いことも特徴だ。関連銘柄ではコカ コーラはノンアルコール飲料大手で、世界200カ国超で事業を展開。ペプシコは飲料大手でスナック菓子なども手掛けている。コンステレーション ブランズは酒類大手でビールの「コロナ」などで知られるほか、モルソン クアーズ ブリューイングはビールの「クアーズ」などを製造している。
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ESG投資
「ESG」とは環境(Enviroment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、気候変動や人口増加といった地球規模の課題解決に向け、投資の際にこれらの基準を取り入れる動きを指す。国際団体の「世界持続可能投資連合」(GSIA)によると2018年の世界のESG投資額は16年に比べ3割強増加し、30兆6830億ドル(約3360兆円)に拡大している。欧州ではESG投資の比率が5割前後に達している。米国企業もESG投資に前向きで、大手資産運用会社ブラックロックは、ESGを柱とした運用を強化すると宣言。石炭株など化石燃料関連への投資を削減する一方、ESG関連の上場投資信託(ETF)の数を倍増する方針を明らかにした。また、マイクロソフト(MSFT)は、30年までに二酸化炭素の排出削減量を排出量より多くすると宣言している。環境だけではなく、社会的公平性、コーポレートガバナンスなどの視点を取り込んだ「ESG」は今後の投資の主流となることは間違いないとみられている。マイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)といった大手IT企業やコンサルティングのアクセンチュア(ACN)、金融大手のモルガン・スタンレー(MS)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)、コカ・コーラ(KO)、スリーエム(MMM)などが関連銘柄となる。
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eコマース
「Electronic Commerce」の略で電子商取引一般を示す。大きく分けて、企業同士の取引を「BtoB(B2B)」、インターネットショップなど企業と消費者間の取引を「BtoC(B2C)」、インターネットオークションやフリマアプリなどの消費者同士の取引を「CtoC(C2C)」と呼ぶ。米国のEC(電子商取引)市場は中国に次ぐ規模で、この2強が他国を引き離す形で成長を続けている。その米国で他を圧倒する存在感を示しているのがアマゾンであり、“アマゾンエフェクト”と呼ばれる影響力は百貨店など一部の既存小売業に退出を迫るほど圧力が高まっている。これに対しウォルマートなど既存の小売業はネットや店舗、イベントなどあらゆるチャネルを活用する「オムニチャネル」戦略でアマゾンの牙城の切り崩しに動いている。なお、中国のネット通販で最大級の商戦となる「独身の日」(11月11日)、米国の年末商戦の幕開けとなる「ブラックフライデー(感謝祭の翌日の金曜日)」の前後は消費関連への関心が高まりやすく、特に「独身の日」ではeコマースが注目を集める傾向にある。2023年の「独身の日」の流通取引総額は伸びは鈍化したものの、約23兆円強と巨大な規模を誇る。2024年は約1カ月前の10月14日にアリババ集団などがすでに「独身の日」セールを開始しており、2009年の初セールに比べ長期化する傾向にある。また、「Temu(テム)」「SHEIN(シーイン)」など中国発の格安ネット通販の躍進も著しく、eコマースを巡る国際的な競争は激化している。
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eスポーツ
ビデオゲームを競技として行う「eスポーツ」は若者を中心に人気が爆発。複数のプレーヤーが対戦し、それを観戦するeスポーツは、世界で最も急成長しているスポーツと言われている。eスポーツの世界市場規模は、22年には23億ドルと17年に比べ5割増に拡大するとの予想もある。優勝者には高額な賞金を出す大会が開催されているほか、今後、オリンピックの種目となるとの見方も有力だ。ゲーム大手のエレクトロニック アーツやアクティビジョン ブリザードなどはeスポーツ大会を主催するなど積極的な活動を行っている。また、テレビ会社などメディア企業ではeスポーツの中継が新たな人気コンテンツとなることも期待されている。
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eラーニング
eラーニングは「electronic learning」の略称で、オンライン教育と同義で使われる。パソコンやタブレットなどモバイル端末を使い、主にインターネットなどのネットワークを介して遠隔で行う学習形態を指す。インターネットの普及により、場所や時間の制約を軽減して良質なコンテンツを提供できる環境が整ったことで、学業のみならずビジネス研修、資格取得など幅広い分野で活用が進み、関連企業の収益機会が拡大している。特に2019年末に中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、米国においても休校措置が広がり、教育手段としてのeラーニングが見直されている。関連企業としてはオンライン教育サービスを手掛ける2Uやアメリカン・パブリック・エデュケーション、グランド・キャニオン・エデュケーションなどがある。
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ウインタースポーツ
ウインタースポーツは、スキーやスノーボード、スケートなど、雪や氷を利用して冬季に行われるスポーツのこと。このほか、アイスホッケーやバイアスロン、クロスカントリー、ボブスレー、リュージュ、カーリングなど数多くの競技がある。ウインタースポーツの代表格であるスキー・スノーボードの世界における潜在的人口(スキー・スノーボードを経験したことのある人口)はおよそ1億3000万人前後とみられ、国別で世界最大となる米国は2500万人程度で安定的に推移している。世界の潜在的人口のおよそ5割以上を占めるのが米国、ドイツ、日本、フランス、英国、中国の6ヵ国だが、なかでも北米は市場として最も重要な地域となっている。また近年、中国の伸びが著しく、すでに日本を上回る規模となっていると推測される。ウインタースポーツは冬の観光産業の隆盛やスキー場などリゾート地へのアクセス手段を必要とするほか、防寒や安全性能を確保し競技パフォーマンスを高めるための用具(ギア)の開発、さらには一定の可処分所得を持つ中間層の存在などが普及を支える条件となる。自然に恵まれた米国は世界最高峰と称されるスキーリゾートを複数擁しているほか、世界的な知名度を有するアパレルメーカーやスポーツ用品メーカーが数多く存在する。今後、新興国での中間層の台頭に伴う需要増も、関連企業に新たな商機をもたらすことが期待される。
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ウェルスマネジメント
ウェルスマネジメントは、金融機関、専門家が富裕層向けに提供する総合的な資産管理サービスを指す。狭義の資産運用にとどまらず、資金調達や資産・事業承継(相続対策)、節税対策、M&A、不動産の有効活用まで包括的に適切な管理サービスを提供する。米国の富裕層(純金融資産100万ドル超)の人口は2000万人を超え、2位の中国(600万人弱)以下を大きく引き離す。また、調査会社Altratによると、純金融資産3000万ドル超の超富裕層は米国が13万人弱と世界の超富裕層人口の3割超を占める。欧米企業は富裕層の資産管理を担うウェルスマネジメントで先行するが、北米・アジアを中心とする世界的な市場規模の拡大を背景にさらなるビジネスの成長が期待される。各国政府による富裕層向けの課税強化、日本などでの富裕層の高齢化といった環境の変化も追い風になるとみられている。
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ウェアラブル端末
ウェアラブル端末とは、服や腕などに身に着けたまま使える情報端末のこと。腕時計型やリストバンド型、耳掛け型、靴・衣類型など様々な種類が普及している。ランニングやサイクリングなどスポーツやアウトドアで有用な計測機能を有していたり、健康管理のツールとして心拍や脈拍、睡眠データの記録といったヘルスケア機能を持っていたり、あるいは産業用に活用されるなど用途は幅広い。2015年に「アップルウォッチ」が発売され話題を集めたが、その後もウェアラブル端末は着実な人気を呼び普及が進んでいる。また、メタバースにおける没入感を高める機器としてVRヘッドセットやARグラスといった機器の開発も加速しており、2024年2月にはアップルが空間コンピュータと位置づける「Apple Vision Pro」を発売。足もとではサムスンに続き、アップルがスマートリングを開発しているといわれ、新製品登場への期待が高まっている。ウェアラブル端末の活用形態は今後も進化を続けていくことが予想され、高い成長性を秘めている。
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宇宙開発関連
国家を主役に展開されてきた宇宙開発に、民間主導の新たな風が吹き始めている。宇宙産業は衛星打ち上げや宇宙旅行事業、さらに軍事関連などにも絡み、今後の高い成長が期待されている。米テスラを率いるイーロン・マスク氏は、自身が創設したベンチャー企業のスペースXで宇宙開発を進めている。また、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏や英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏といった著名起業家が相次いで「宇宙旅行」を成功させた。米国は2027年半ばに再び宇宙飛行士を月面に送る「アルテミス計画」を推進しているほか、ロシアや中国も宇宙開発に積極的に乗り出しており、宇宙は防衛政策の観点からも重要性が増している。2024年2月には米民間企業インテュイティブ・マシーンズが開発した無人月着陸船「ノバC」が月着陸に成功し、民間企業として初の偉業を成し遂げた。米国としてもアポロ17号以来、52年ぶりの月着陸となった。2025年も世界の宇宙開発の流れは止まらない。米国ではスペースXが1月15日に米ファイアフライ・エアロスペースと日本のispaceの月着陸機を同時搭載して打ち上げた。また、11月13日にはベゾス氏が率いる米宇宙企業ブルーオリジンが無人火星探査機を搭載した大型ロケット「ニューグレン」の打ち上げに成功している。宇宙産業は21世紀の巨大ビジネスに成長するとの期待も強く、関連銘柄の動向が関心を集めている。
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運輸
運輸セクターは、人の移動や荷動きを表すため景気の状況をいち早く把握するのに適している業界といわれる。このため、米国の運輸株指数は株式市場の先行指標として注目されており、ダウ・ジョーンズ運輸株指数などの動向が投資家の関心を集めている。米国の運輸株には、世界最大手の小口貨物輸送会社のユナイテッド パーセル サービス、航空貨物輸送会社のフェデックスなどの大手物流企業がある。また、世界最大の航空会社グループであるアメリカン航空といった航空株、米国最大の鉄道会社であるユニオン パシフィックや東海岸に展開するノーフォーク サザンなどの鉄道株も多く上場している。
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映画
米国のレジャー産業のなかでも映画は大きな地位を占める。米国は世界一の映画大国としても知られ、映画産業の中心地であるカリフォルニア州ハリウッドで作られる映画は世界中に輸出されている。いわゆるハリウッド映画はしばしば巨額な制作費が話題に上るが、この制作費の負担もあって主だった米映画企業は大手通信・メディアや電機会社の傘下にあり、M&Aによる合従連衡も活発に行われている。2019年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、各社は作品の公開延期・中止を余儀なくされ、米映画産業は大きな打撃を受けた。しかし、ワクチンの普及とともに“ウィズコロナ”のライフスタイルが広がるなか、映画興行収入は回復基調にある。2022年の「トップガン マーヴェリック」「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」といった大作のヒットは米映画産業の復活を印象づけた。また、アップル配給の作品が2022年アカデミー作品賞を受賞するなどIT大手の映画参入の動きが注目される一方、映画各社も新たな収益源を求めて動画配信に乗り出している。
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エイズ
後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染で引き起こされる。一般的にエイズ(AIDS)の名前で知られており、世界的に拡大。性行為による感染症のひとつだが、感染の仕方はさまざま。米国研究製薬工業協会が2017年に明らかにした資料によると、米国のバイオ医薬品企業が50種類以上のHIV/AIDS治療薬・ワクチンの開発を進められている。かつては死の病として恐れられたが、早期に治療に取り組めば根治はできぬものの、死に至る恐れはほとんどなくなっている。複数の薬を同時服用する多剤併用療法などが広まった結果、米国では1990年代に比べると死亡率は9割弱も低下したとされる。 かつては複数の薬を頻繁に服用することが必要だったが、現在では1日1錠の服用で足りるようになり患者の負担も軽減している。また、薬剤治療なしで発症を抑え込んでいる稀な感染者(エリートコントローラー)が持つHIV制御の仕組みをバイオ医薬品の開発に応用する取り組みも進んでいる。
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衛星運営
衛星運営を中心とする宇宙産業は今後、急速な成長が見込まれている。なかでも、多数の人工衛星を協調して動作させる運用方式である「衛星コンステレーション」が高い関心を集めている。衛星コンステレーションとは、複数の人工衛星を地球に近い軌道に打ち上げて、協調させたそのネットワークを活用してインターネット接続などの通信サービスの提供や、データの収集・分析などを行うシステム。米起業家イーロン・マスク氏率いる「スペースX」が手掛ける人工衛星経由のインターネットサービス「スターリンク」などがその代表例であり、ロシアによる軍事侵攻を受けたウクライナに対して同サービスを提供したことで話題を集めた。衛星サービスには、衛星の製造から打ち上げ、各種サービスの提供など幅広い分野が関わってくる。すでに、衛星を使った車・機械の自動走行やドローンによる自律飛行などのほか、軍事に絡んだ分野などで次世代技術の開発競争が始まっている。ウクライナ危機に端を発する宇宙開発における「脱ロシア」の動きや、米中対立に伴う影響など不透明要因は残るものの、衛星サービスの市場拡大は確実視されている。