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    2026年4月3日 14時35分

    ナフサ不足とAI半導体関連イノベーション【フィリップ証券】

     イラン情勢は、日本時間3/30現在、トランプ米大統領がイランのエネルギー施設の攻撃停止期限を再延長し、現地時間4/6午後8時までとした。今年4/5の日曜日はキリスト教で最も重要な祝祭の一つであるイースター(復活祭)の日である。その1週間前からイースターに至る特別な1週間を避ける意図が窺われる一方で、国防総省が中東へ最大1万人の地上部隊増派を検討しているとの報道もあり、イースター明けの米軍による大規模攻撃の可能性はむしろ高まっている。

     ホルムズ海峡の事実上の閉鎖に伴い、原油価格の高騰にとどまらず、世界の石油化学供給網を揺るがす「ナフサ不足」も引き起こされている。ナフサは原油から精製される石油製品の一種で、ナフサを原料としてエチレンやプロピレンなどの基礎化学製品が生産され、ポリエチレンやポリプロピレンなどを通じて食品容器やプラスチック、自動車部品などが製造される。米国の大手化学メーカーは、シェールガス田の「エタン」を原料としてエチレンを生産できることから、安定調達とコスト競争力によって相対的に競争優位にあるとみられる。

     足元では、AI(人工知能)の分野で様々なイノベーションが起きている。第1に、自律的にタスクを自動実行する「AIエージェント」のうち、AIが人の代わりにパソコンを動かせるオープンソースのソフトウェア技術「オープンクロ―」の普及である。オープンクロ―をパソコンにインストール・設定・カスタマイズして自分専用のAIエージェントを育成するプロセスのことを、そのロゴマークにちなんで「ロブスターの飼育・養殖」と呼ぶことが広まってきている。AI専用パソコンとして小型コンピューターが脚光を浴びており、アップル<AAPL>の「Mac Mini」が人気を集めている。AI分野において大規模・並列計算が得意なGPU(画像処理半導体)の重要性は変わらないものの、AIエージェントの普及は「司令塔」として制御・統括等の処理を行うCPU(中央演算処理装置)の役割の重要性を高めている。

     第2に、アルファベット<GOOGL>傘下のグーグルが発表したAI関連のアルゴリズム「ターボクアント」が注目を集めている。AIが回答を導き出す「推論」と呼ぶ工程に使うメモリー容量をAIの精度を低下させることなく6分の1に減らす技術であり、AI普及に伴って短期記憶を担う広帯域メモリ(HBM)の需要が急増してきた中、半導体メモリの搭載量が想定よりも少なく済む可能性が出てくる。マイクロン・テクノロジー<MU>など半導体メモリ大手の株価動向に注視が必要である。

     第3に、テスラ<TSLA>CEOのマスク氏がAI半導体量産に向けて「米国版TSMC」ともいえる先端工場である「テラファブ」をテキサス州オースティンに設ける構想を掲げている。半導体ファウンドリ世界最大手である台湾積体電路製造[TSMC]<TSM>の供給力制約の解消に向けた動きが出始めている。


    ■米マグニフィセント・セブンの動向~相対的に下値が堅いアップルに注目

     米国株市場を牽引する巨大ハイテク企業7社の「マグニフィセント・セブン」の年初来株価は軟調に推移している。データセンターなどAI向けインフラ投資への支出拡大とその収益化が遅れることへの懸念のほか、AIエージェントの進化がソフトウェア業界の収益減を侵食するとの懸念がその背景にある。

     そのような中、アップル<AAPL>の株価は昨年末水準を下回るものの、1月安値を下回ることなく横ばい圏で推移している。AIが人の代わりにパソコンを動かせるようになるオープンソースのAIエージェント・ソフトウェア技術「オープンクロー」の普及で、アップルの小型コンピューター「Mac-mini」がAI専用パソコンとして人気が出始めた。同社はMac-miniの一部を米国で生産する方針を打ち出している。

    【タイトル】


    参考銘柄


    アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD> 市場:NASDAQ・・・2026/5/6に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

    ・1969年設立の半導体企業。法人向けエンタープライズ事業のほか、CPU(Ryzen他)、GPU(Radeon他)、両者統合のAPUなど製品も手掛ける。2022年2月に半導体FPGA大手ザイリンクスを買収した。

    ・2/3発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比34.1%増の102.7億USD(会社計画93-99億USD)、非GAAPの調整後粗利益率が同2.9ポイント上昇の57.0%(同54.5%)、調整後EPSが同40.4%増の1.53USD。AI半導体の貢献でデータセンター売上高が39%増の54億USD。

    ・2026/12期1Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比28-36%増の95-101億USD、調整後粗利益率が同1.3ポイント上昇の55.0%。自律的にタスクを実行するAIエージェントでは、ディープラーニングなどの大規模・並列計算を行うGPUと、制御・統括・ロジック処理を行うCPUの役割分担・連携の重要性が増し、CPU分野を得意とする半導体チップ企業を見直す動きが強まっている。


    アムコー・テクノロジー<AMKR> 市場:NASDAQ・・・2026/4/28に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

    ・1968年設立の半導体後工程の受託製造(OSAT)企業。ウェハー製造・精密試験、ICのパッケージング組立てや設計、最終・信頼性・バーンイン(加速)試験、電気的特性評価等のサービスを提供。

    ・2/9発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比15.9%増の18.88億USD(会社計画17.75-18.75億USD)、EPSが同60.5%増の0.69USD(同0.38-0.48USD)。2.5次元実装技術などAI向け後工程先端パッケージといった高付加価値化が奏功し、粗利益率が1.2ポイント改善。

    ・2026/12期1Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比21-29%増の16.0-17.0億USD、EPSが同2.0-3.1倍の0.18-0.28USD。先端的なAI半導体ではチップレットを積層してパッケージ化する後工程の重要性が高まることから利益率は趨勢的な上昇が見込まれる。半導体ファウンドリ世界最大手のTSMC社もキャパシティ不足を補うため、後工程の一部を同社に委託する動きがある。


    ライオンデルバセル・インダストリーズ<LYB> 市場:NYSE・・・2026/4/28に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

    ・オランダのバセルが2007年に米ライオンデルと合併し誕生した石油化学企業。米テキサス州を拠点とする。液体・気体の炭化水素原料をプラスチック樹脂などに変える大規模処理プラントを運営。

    ・1/30発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比9.2%減の70.91億USD、調整後EPSが前年同期の0.77USDから▲0.27USDへ赤字転落。年末需要低迷の季節要因に加え、原料・エネルギーコストの上昇によりマージンが縮小。一方、通期営業キャッシュフローが23億USDと高水準。

    ・2026/12期会社計画は未発表ながら、キャッシュ改善計画について固定費削減、運転資本管理、設備投資最適化により、2025年度は目標6億USDに対して8億USDを達成したうえで、2026年度に追加5億USDを目標とする。同社はポリプロピレン製造の世界最大手かつポリエチレンの主要プレーヤー。プラスチックの国際価格が高騰する中、同社製品のマージンの拡大が当面続くと見込まれる。


    ヴァンエック・アグリビジネスETF<MOO> 市場:NYSE Arca・・・分配金:年1回(12月)

    ・「MVISグローバル・アグリビジネス指数」に連動する投資成果を目指す。大型・中型株を中心に農薬、肥料、農業機械、栽培およびプランテーション、農産物等の取引に携わる企業で構成される。

    ・3/27終値で時価総額が11.0億USD、過去12ヵ月間の実績分配金利回りが2.17%。組入れ上位順8社は、ディア<DE>、独バイエル、コルテバ<CTVA>、ゾエティス<ZTS>、ニュートリエン<NTR>、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド<ADM>、CFインダストリーズ・HD<CF>、タイソン・フーズ<TSN>である。

    ・2025年末終値から3/27終値までの騰落率(分配金を除く)は、同ETFが+13.5%と、ダウ工業株30種平均株価(▲6.0%)、S&P500株価指数(▲7.0%)、ナスダック100(▲8.4%)を上回る。米イラン紛争により中東地域の肥料生産・出荷が停滞し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による輸送混乱が深刻化。肥料価格の上昇に伴う食品インフレは、農業関連企業への追い風になると見込まれる。


    ヴァンエック・レアアースETF<REMX> 市場:NYSE Arca・・・分配金:年1回(12月)

    ・MVIS Rare Earth/Strategic Metals指数 に連動する投資成果を目指す。同指数は浮動株時価総額加重平均型で、レアアースなど戦略的金属分野の高時価総額・高流動性銘柄で構成される。

    ・3/27終値で時価総額が25.5億USD、過去12ヵ月間の実績配当利回りは1.51%。組入れ上位7銘柄は、アルベマール<ALB>、豪ライナス・レア・アース、豪PLSグループ、中国北方稀土集団、中国ガンフォンリチウム、ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ<SQM>、MPマテリアルズ<MP>である。

    ・2025年末終値から3/27終値までの騰落率は、当ETF(インカムゲインを除く)が+16.5%と、ダウ工業株30種平均株価(▲6.0%)、S&P500株価指数(▲7.0%)、ナスダック100(▲8.4%)を上回る。トランプ米政権は2月、米民間企業向けにレアアースを大規模に備蓄するプロジェクト「ボールト(貯蔵庫)」を発足。米国輸出入銀行の融資と民間資本を組み合わせて重要鉱物を保管する内容である。


    台湾積体電路製造[TSMC]<TSM> 市場:NYSE ・・・2026/4/16に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

    ・1987年設立。台湾を本拠とする世界最大の専業ファウンドリ(半導体受託生産)。モバイルデバイス、高性能コンピューター(HPC)、車載半導体、IoT等の多様な半導体市場を対象に製造を行う。

    ・1/15発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比25.5%増の337億USD(会社予想322-334億USD)、粗利益率が同3.3ポイント上昇の62.3%(同59.0-61.0%)、EPSが同35.0%増の3.14USD。iPhoneやAI向け先端半導体を一手に生産する強みを背景に、堅調に推移。

    ・2026/12期1Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比36-40%増の346-358億USD、粗利益率が63-65%(前年同期58.8%)。2026年1月中旬に米国と台湾が合意した包括協定に基づき、同社は米アリゾナ州での事業を大幅に拡張し、最終的に計12拠点の工場(ファブ)を稼働させる計画である。大口顧客が集中する米国での生産を強化し、先端半導体の約3割を米国で生産する見通しとした。


    執筆日:2026年3月30日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


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