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    2023年12月26日 19時30分

    日本勢いざ復権! 半導体製造技術の最前線で光放つ有望株を総点検 <株探トップ特集>

    ―微細化と3次元積層化が一段と進展、エッチング装置ではゲームチェンジの好機到来―

     「日の丸半導体」で世界に圧倒的な存在感を示してきた日本企業の姿も今や昔。グローバルの主要メーカーといえば米国や韓国、台湾勢が占める状況だ。しかし海外企業の先端半導体 の進化には、日本が蓄積した要素技術が活躍する場がなお残されている。今回は市場が注目する半導体製造技術の最新動向に焦点を当て、一段の成長が期待できそうな銘柄を紹介する。

    ●インテルの2ナノ品「24年に量産」

     生成AIや自動運転技術の実用化、ビッグデータの活用などを通じ、データ量は加速度的に増大し、半導体の処理能力の更なる向上が求められている。その方策の一つは回路線幅の微細化である。米インテル<INTC>は2ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当の半導体について、2024年に量産に入ると報じられている。

     韓国のサムスン電子と台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>は2ナノについて25年の量産を計画しているとあって、インテルは一気に巻き返しを図る構えだが、その先には1.8ナノ、1.4ナノなど、更なる微細化に向けた開発競争が待ち構える。

     ちなみに先端半導体の製造には、極端紫外線(EUV)を用いた露光装置が不可欠となり、世界でもこの装置を供給するのは、オランダのASMLホールディング<ASML>1社とされている。EUVを使った露光工程においては、フォトレジストと呼ばれる感光材を塗布したウエハーに、波長13.5ナノのEUVを真空中で幾度か反射させて照射する。光源からウエハーに向かう過程で、回路パターンが描かれたフォトマスクにEUVが当たり、そこで吸収されずに反射されたEUVが感光材に届くことで回路が転写される仕組みとなっている。

     このフォトマスクの素材となるのがマスクブランクスで、EUV用マスクブランクスを手掛けられるのは、AGC <5201> [東証P]とHOYA <7741> [東証P]の2社しかないと言われている。更に、EUV用マスクブランクスの欠陥の有無を検査する装置を手掛けるのが、東京市場の花形株であるレーザーテック <6920> [東証P]だ。こうしたニッチな分野では日本企業はなお存在感を示しているが、露光装置そのものに関しては、日本企業は後れを取る格好となったと言わなければならない。

    ●東エレクの新技術に熱視線

     もう一つ、半導体の能力向上に寄与するのが、3次元積層だ。電子が通る通路幅を狭めて密集させた1階建ての建物を縦に積み重ねて、データ処理能力を高めるという発想だ。微細化は物理的な限界があり、高額なEUV露光装置も必要になるが、こうした課題を乗り越えて半導体を進化させる方策として研究開発が進む。

     数多くの3次元積層に関連する技術のなかで投資家が注目するのが、東京エレクトロン <8035> [東証P]による「チャネルホールエッチング技術」である。同社は6月、400層を超える3次元NAND型フラッシュメモリー向けの新たなエッチング技術を開発したと発表した。平たく言うと、ミクロの世界にある400階建てのビルに、電子が乗るエレベーターが通る穴を素早くきれいに縦に通す技術である。この技術を持つのは東エレク以外にはないとされており、エッチング装置における米ラム・リサーチ<LRCX>のシェアを切り崩し、同装置でトップ企業になるための大きな武器を手に入れた形となる。

     東エレクによると、400層レベルの採用時期は2~3年後を想定し、23年に5億ドルと推測される市場規模は27年に20億ドル規模までに拡大すると予想する。市場では東エレクに数千億円規模の増収インパクトがあるとの見方が出ている。

    ●トリケミカルなど恩恵享受へ

     東エレクの新技術に関する情報の発信はまだ始まったばかりだが、同社以外にも波及効果が期待されている。トリケミカル研究所 <4369> [東証P]は25年に稼働を予定する山梨県南アルプス市での新工場で400層超の3次元NANDのエッチング工程で用いる特殊ガスを生産する方針を明らかにしている。東エレク向けの販売拡大が期待されるなか、株価は21年1月の上場来高値5042円に向けた戻り基調を続けている。

     東エレクの巻き返しは、エッチング工程向け電源装置を手掛けるダイヘン <6622> [東証P]の業績にも浮揚力を与えそうだ。今期は過去最高益を計画する同社の株価は1990年につけた上場来高値6400円に接近しつつある。この分野で競合するアドテック プラズマ テクノロジー <6668> [東証S]の株価も12月に入り反騰指向を鮮明としている。同じく競合の京三製作所 <6742> [東証P]はPBR(株価純資産倍率)1倍割れで400円台での推移と割安感を意識させる。

     有価証券報告書で東エレクやそのグループ企業を主要取引先として挙げるメーカーにも関心が向かいそうだ。具体的には、トーカロ <3433> [東証P]やマルマエ <6264> [東証P]、アバールデータ <6918> [東証S]、テクノクオーツ <5217> [東証S]である。

    ●「東エレク関連銘柄」も注目度上昇

     トーカロはドライエッチング装置の構成部品向けに、セラミック皮膜を表面に形成して電気特性や耐プラズマエロージョン性を付与する溶射加工を手掛けている。来期に神戸工場での新工場棟の建設に着手。北九州工場での新工場棟の建設や、東京工場行田事業所の特定顧客向け増産対応に伴う鈴身事業所での新工場棟の建設を検討する。26年3月期売上高530億円(24年3月期予想は前期比2.4%減の470億円)、経常利益120億円(同20.9%減の87億円)とする中期計画達成へ順調な成長軌道を示すことができれば、一連の投資費用を織り込んだ株価に上昇圧力が掛かりそうだ。

     真空パーツなどを手掛けるマルマエは、半導体分野においてエッチングや洗浄工程などに向けた部品を供給。24年8月期の経常利益は前期比28.8%減の5億6200万円と減益の計画だ。だが株価は10月に底入れし、2000円台の回復が射程圏に入った。PER(株価収益率)は59倍台と高水準だが、米長期金利低下によるグロース系銘柄選好の流れは同社株には追い風となるに違いない。

     アバールは 半導体製造装置向け制御装置の受託製品を手掛け、24年3月期経常利益は前期比8.6%増の27億1000万円と過去最高を計画。株価は11月に上場来高値7000円をつけた。足もとでは6400円近辺で推移しながらも、配当利回りは5%に迫る水準で、相場調整局面では押し目待ちの資金を集める受け皿になるだろう。

     半導体製造工程で幅広く使われる高純度石英ガラスやシリコン製品を主力とするテクノクオツは、分析機器メーカーのジーエルサイエンス <7705> [東証S]の子会社。米半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ(AMAT)<AMAT>も主要取引先とする。売上高と利益が過去最高となった前期から一転、24年3月期は減収減益を予想するものの、9月中間期時点で受注残高は高水準を維持しているという。株価は昨年以降調整を続けたが、4000円を下回る価格帯では押し目買いを集め、今年11月以降は反転機運を高めている。

     半導体商社では、内外テック <3374> [東証S]とスズデン <7480> [東証S]、栄電子 <7567> [東証S]が東エレクを主要取引先に挙げている。いずれも今期は減収減益を予想するが、業界団体の市場予測によれば半導体製造装置市場は2023年を底に来年以降は回復するとみられている。商社ゆえ栄電子と内外テックのPBRは1倍を下回った状況。一方でスズデンは配当利回りが5%の水準にある。

    ●HBMの関連銘柄も要マーク

     チャネルホールエッチング以外にも、今後が期待できる技術領域は多い。ウシオ電機 <6925> [東証P]は12月13日、AMATと次世代露光技術の開発に向けた戦略的パートナーシップの締結を発表。高機能・大型チップのニーズが高まるなか、ウシオ電の露光装置での開発実績と、AMATのデジタルリソグラフィテクノロジー(DLT)を融合し、線幅1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下での配線に向けた技術課題の克服を目指す。

     生成AIの普及により、画像処理半導体(GPU)とともに急成長が見込まれているのが、DRAMを積層した広帯域幅メモリー(HBM)だ。日本マイクロニクス <6871> [東証P]のメモリー向けプローブカードは、23年7~9月期に過去最高の受注を達成。背景にはHBMの需要伸長があるという。メモリー向けモールド装置を手掛けるTOWA <6315> [東証P]もHBMの市場拡大の恩恵を受ける銘柄として知られている。

     耐久性や熱伝導性が高く「究極の半導体」とされるダイヤモンド半導体の研究開発も進んでいる。この分野では人工ダイヤモンドを手掛ける住石ホールディングス <1514> [東証S]とイーディーピー <7794> [東証G]、ダイヤモンド工具の旭ダイヤモンド工業 <6140> [東証P]などが関連銘柄として位置づけられている。実用化に向けた新規のニュースに応じて動意づく場面がみられそうだ。


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