2026年9月29日 23時23分
今年の市場、伝統的な運用手法はむしろ足かせ
今年の市場では、分散投資という「慎重さ」が報われていない。米CNBCが伝えた。株式と債券を一定比率で保有し、定期的にリバランスするという伝統的な運用手法は、むしろ足かせとなっている。
米総合債券市場に連動するiシェアーズ・コア米国総合債券ETF<AGG>は年初来で価格が4.8%下落し、利息収入を含めてもトータルリターンはマイナス2.2%。一方、S&P500のトータルリターンは14%に達している。前四半期末に株式を売って債券を買い増すリバランスを行った投資家にとっても、今四半期はS&P500の約3%の上昇が、金利上昇に伴う債券の下落でほぼ相殺された。
ただ、債券利回りは大幅に上昇し、金利がさらに上昇しても利息収入である程度損失を吸収できる水準になりつつある。投資家の債券に対する警戒感はなお強いが、株式の下落を押し目買いの好機と捉える一方、満期まで保有すれば5%の利回りが確保できる5年債について、利回りが5.25%まで上昇する可能性を理由に購入をためらうという非対称な心理もみられる。
過去10年間では株式と債券のパフォーマンス格差が歴史的な水準まで拡大した。S&P500の10年間の年率トータルリターンは米国債ポートフォリオを約15%ポイント上回る。大型IT・ハイテク株の大幅上昇に加え、債券そのものの低調なパフォーマンスが背景にある。
しかし、現在は10年前とは投資環境が大きく異なる。当時はFRBがゼロ金利からようやく利上げを始めた段階で、インフレも2%目標を慢性的に下回っていた。現在は名目利回りだけでなく、期待インフレ率を差し引いた実質利回りも約20年ぶりの高水準にある。足元でも米長期金利は歴史的な高水準で推移している。
アナリストは、ゼロ金利時代には債券に弱気だったものの、現在は投資環境が改善したと指摘。S&P500の益回りや配当利回りとの比較では、債券は過去20年以上で最もS&P500に対して魅力的になっているとの見方を示した。S&P500の配当利回りが1.4%を下回る一方、高格付け社債では6%程度の利回りを得られることも、債券の相対的な魅力を高めている。
これは「株式60%、債券40%」という伝統的なポートフォリオが最適だという意味ではない。ただ、株式のリスクを値動きの小さい債券などのインカム資産や代替資産、商品で分散するという考え方自体が、長期的に時代遅れになったとは言い切れない。
一方、株式市場の内部でも分散投資は苦戦している。S&P500は最高値から約2%の下落に留まり、ナスダック100も最高値近辺にあるが、均等加重型S&P500は6%、ラッセル2000は8%下落。KBW銀行株指数は12%、均等加重型の一般消費財セクターは13%下落している。原油高や金利上昇、FRBのタカ派姿勢が市場全体を圧迫する一方、資金がマクロ経済の影響を受けやすい銘柄から、AIをけん引する大型IT・ハイテク株へ集中していることが理由。S&P500では上位10銘柄が時価総額の約40%を占め、この極端な集中が指数全体を下支えしている。
焦点は、IT・ハイテク株以外で広がった売られ過ぎと市場の内部悪化が、イラン情勢や債券市場の落ち着きをきっかけに大幅反発へ繋がるのか、それとも指数を支えてきた大型株が先に崩れるのかにある。足元の米国債利回り上昇には、原油高に伴うインフレ懸念や底堅い景気を背景とした追加利上げ観測も影響している。
市場内部の弱さは、金融環境がすでに引き締まっていることも示している。FRBは9月に政策金利を引き上げており、エネルギー価格上昇を背景にインフレ圧力も高まっている。 原油供給やAI設備投資のように政策金利で直接抑えることが難しい要因に対して利上げを行えば、消費者や中小企業への負担が先に強まるとの議論もある。
アナリストは、各国中銀が直面するこうした状況について、本格的な利上げサイクルの始まりというよりも、より高い中立金利を巡る再調整と捉えている。
結局、リバランスや分散投資を行う理由は、米国債利回りのピークを正確に当てられるからではない。「マクロ経済や金融政策、市場価格が今後どう動くかを正確には予測できないからこそ、特定の資産やシナリオへの依存を抑えることに意味がある」というのが今回の市場環境が改めて突きつけている論点となっている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
株探ニュース
米総合債券市場に連動するiシェアーズ・コア米国総合債券ETF<AGG>は年初来で価格が4.8%下落し、利息収入を含めてもトータルリターンはマイナス2.2%。一方、S&P500のトータルリターンは14%に達している。前四半期末に株式を売って債券を買い増すリバランスを行った投資家にとっても、今四半期はS&P500の約3%の上昇が、金利上昇に伴う債券の下落でほぼ相殺された。
ただ、債券利回りは大幅に上昇し、金利がさらに上昇しても利息収入である程度損失を吸収できる水準になりつつある。投資家の債券に対する警戒感はなお強いが、株式の下落を押し目買いの好機と捉える一方、満期まで保有すれば5%の利回りが確保できる5年債について、利回りが5.25%まで上昇する可能性を理由に購入をためらうという非対称な心理もみられる。
過去10年間では株式と債券のパフォーマンス格差が歴史的な水準まで拡大した。S&P500の10年間の年率トータルリターンは米国債ポートフォリオを約15%ポイント上回る。大型IT・ハイテク株の大幅上昇に加え、債券そのものの低調なパフォーマンスが背景にある。
しかし、現在は10年前とは投資環境が大きく異なる。当時はFRBがゼロ金利からようやく利上げを始めた段階で、インフレも2%目標を慢性的に下回っていた。現在は名目利回りだけでなく、期待インフレ率を差し引いた実質利回りも約20年ぶりの高水準にある。足元でも米長期金利は歴史的な高水準で推移している。
アナリストは、ゼロ金利時代には債券に弱気だったものの、現在は投資環境が改善したと指摘。S&P500の益回りや配当利回りとの比較では、債券は過去20年以上で最もS&P500に対して魅力的になっているとの見方を示した。S&P500の配当利回りが1.4%を下回る一方、高格付け社債では6%程度の利回りを得られることも、債券の相対的な魅力を高めている。
これは「株式60%、債券40%」という伝統的なポートフォリオが最適だという意味ではない。ただ、株式のリスクを値動きの小さい債券などのインカム資産や代替資産、商品で分散するという考え方自体が、長期的に時代遅れになったとは言い切れない。
一方、株式市場の内部でも分散投資は苦戦している。S&P500は最高値から約2%の下落に留まり、ナスダック100も最高値近辺にあるが、均等加重型S&P500は6%、ラッセル2000は8%下落。KBW銀行株指数は12%、均等加重型の一般消費財セクターは13%下落している。原油高や金利上昇、FRBのタカ派姿勢が市場全体を圧迫する一方、資金がマクロ経済の影響を受けやすい銘柄から、AIをけん引する大型IT・ハイテク株へ集中していることが理由。S&P500では上位10銘柄が時価総額の約40%を占め、この極端な集中が指数全体を下支えしている。
焦点は、IT・ハイテク株以外で広がった売られ過ぎと市場の内部悪化が、イラン情勢や債券市場の落ち着きをきっかけに大幅反発へ繋がるのか、それとも指数を支えてきた大型株が先に崩れるのかにある。足元の米国債利回り上昇には、原油高に伴うインフレ懸念や底堅い景気を背景とした追加利上げ観測も影響している。
市場内部の弱さは、金融環境がすでに引き締まっていることも示している。FRBは9月に政策金利を引き上げており、エネルギー価格上昇を背景にインフレ圧力も高まっている。 原油供給やAI設備投資のように政策金利で直接抑えることが難しい要因に対して利上げを行えば、消費者や中小企業への負担が先に強まるとの議論もある。
アナリストは、各国中銀が直面するこうした状況について、本格的な利上げサイクルの始まりというよりも、より高い中立金利を巡る再調整と捉えている。
結局、リバランスや分散投資を行う理由は、米国債利回りのピークを正確に当てられるからではない。「マクロ経済や金融政策、市場価格が今後どう動くかを正確には予測できないからこそ、特定の資産やシナリオへの依存を抑えることに意味がある」というのが今回の市場環境が改めて突きつけている論点となっている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
株探ニュース