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    2025年11月28日 17時35分

    AIビジネスは新局面へ~「AIエコシステム」で優位に立つ企業【フィリップ証券】

     AI(人工知能)を巡る競争はGPU(画像処理半導体)で圧倒的シェアを占めるエヌビディア<NVDA>を中心として、トランプ米政権による米国のAIインフラを構築するための大規模な官民連携プロジェクトである「スターゲート計画」への参画企業が優位に進めているような情勢だった。拡大する需要を満たすための資金調達、およびコンピュータを高速に動かすための電力不足などへの懸念からAIインフラへの過剰投資が問題視され、AI関連銘柄の株価が下落に転じていたが、短期的な買われ過ぎに伴う一時的な調整局面とする見方が市場では多数だろう。今年1月に中国のAI企業DeepSeekが低コストで高性能な生成AIモデルを発表したことを受けて米国のAI関連企業の株価が大幅に下落した一連の出来事と同様に、押し目買いの好機という見方も根強い。

     そのような中、米巨大ハイテク企業の一角を占めるアルファベット<GOOGL>傘下のGoogleが11/18に発表した生成AIの最新基盤モデル「Gemini 3」は、性能面で高い評価を受けている。アルファベットは、11月中旬に著名投資家バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが新規に投資したことが明らかになったことでも話題を呼んでいた。

     Googleは、「Gemini 3」というAIの頭脳を押さえているだけでなく、検索からYouTube、Maps、Gmail、Chrome、Android端末に至るまで、世界最大級の量と質のありとあらゆるデータを管理下に置いている。そして、自社開発のAI半導体である「TPU」を持ち、クラウド・コンピューティングのGoogle Cloudを通じて顧客から継続課金収入を安定的に確保できる。また、世界規模でデータセンターを建設し、長期PPA(Power Purchase Agreement)の活用により再生可能エネルギーの調達でも長期・固定の安定供給を確保している。AIエコシステムの囲い込みを単独でここまで実現している企業グループは他に例がなく、時価総額でエヌビディア超えが射程に入ってきた可能性がある。見方を変えれば、このようなエコシステムを実現しない限り、AIインフラに関連する投資が収益を継続的に生んでいくまでに至らず、早晩、過剰投資に陥る懸念が残る。

     AIビジネスのエコシステムでGoogleに匹敵し得るのはテスラ<TSLA>だろう。同社CEOイーロン・マスク氏は、AI開発企業で世界最大級SNS「X(旧ツイッター)を今年3月に買収した「xAI」、および宇宙開発の「スペースX」を率いる。xAIの生成AI基盤モデル「Grok」とテスラが自社開発中のAI半導体が加わり、テスラの自動運転やヒト型ロボット「Optimus」から得られるデータの他、衛星インターネット「スターリンク」からのデータを「Muskonomy」(マスク氏率いる企業群のエコシステム)の下で活用する垂直統合事業モデルを構築することは可能だろう。


    ■米バークシャー保有銘柄の動向~アルファベット買い・アップル売りが鮮明

     著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる投資会社の米バークシャー・ハサウェイが11/14に2025年9月末時点の保有銘柄リストを米証券取引委員会(SEC)に提出。バークシャー保有上場株において最大の投資銘柄であるアップル<AAPL>は保有株式数を約15%減らした。バフェット氏はアップル製品のブランド価値を高く評価していたが、クックCEOの来年退任を巡る報道が取り沙汰され、トップ交代に備えて投資に慎重となっている可能性もある。

     他方、グーグル親会社のアルファベット<GOOGL>のAクラス株を新たに取得した。アルファベットはAI(人工知能)半導体を内製化できるほか、傘下のディープマインド社が深層学習を主導する先駆者でもあることなど、AIに関する潜在的価値が評価されていると考えられる。


    【タイトル】


    参考銘柄


    コンステレーション・エナジー<CEG> 市場:NASDAQ・・・2026/2/18に2025/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

    ・2022年2月にエクセロンから分離独立したクリーンエネルギー企業。発電容量のうち約9割がカーボンニュートラル。米国最大のカーボンフリーエネルギー(原子力、風力、水力、太陽光)生産者。

    ・11/7発表の2025/12期3Q(7-9月)は、営業収益が前年同期比0.3%増の65.70億USD、非GAAPの調整後営業利益ベースEPSが同10.9%増の3.04USD。原子力発電量が2%増と堅調に推移した一方、補助金関連収益が減少。主要原発の稼働率上昇と安定供給、マージン拡大が利益面に貢献した。

    ・通期会社計画は、調整後営業利益ベースEPSを前期比4-9%増の9.05-9.45USD(従来計画8.90-9.60USD)とレンジを縮小した。スリーマイル島原発1号機の商業運転再開は当初の2028年から約1年前倒しされる見通し。また、米最大級の独立系発電事業者であるCalpine社の買収は4Q(10-12月)に完了予定であり、業績への早期の貢献およびクリーンエネルギー供給力強化が見込まれる。


    アルファベット<GOOGL>  市場:NASDAQ・・・2026/2/4に2025/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

    ・2015年にGoogleの持株会社として設立。検索、YouTube等に関連する広告収入やAndroid等を含む「Google Services」、クラウド基盤の「Google Cloud」、新規事業の「Other Bets」の3部門を展開。

    ・10/29発表の2025/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比16.0%増の1023億USD、営業利益が同9.5%増の312億USD。検索連動型広告(売上比率55%)が15%増収、YouTube(同10%)が15%増収、Google Cloud(同15%)が34%増収。Google Cloudの営業利益は85%増の35.94億USD。

    ・傘下のGoogleは11/18、生成AI(人工知能)の最新の基盤モデル「Gemini 3」を発表。複雑な質問に順序立てて回答する「推論」の性能を高め、OpenAIに対抗する構えだ。また、Geminiシリーズに適した自社開発半導体「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」の外部提供を強化し、汎用型の画像処理半導体(GPU)で圧倒的な地位を占めるエヌビディア<NVDA>の牙城を崩す余地もある。


    メドトロニック<MDT> 市場:NYSE・・・2026/2/17に2026/4期3Q)11-1月)の決算発表を予定

    ・1949年設立の世界最大の医療機器メーカー。本社はアイルランドのダブリンで、150ヵ国に展開。心臓血管疾患、最小侵襲療法・手術支援、神経科学、糖尿病などの分野で製品を提供する。

    ・11/18発表の2026/4期2Q(8-10月)は、売上高が前年同期比6.6%増の89.61億USD、非GAAPの調整後EPSが同7.9%増の1.36USD。主な事業別の既存事業ベース増収率は、心臓血管(売上比率38%)が9.3%、神経科学(同29%)が3.9%、手術支援(同24%)が1.3%、糖尿病(同8%)が7.1%。

    ・通期会社計画を上方修正。既存事業売上高を前期比5.5%(従来計画5.0%)、調整後EPSを同2-3%増の5.62-5.66USD(同5.60-5.66USD)とレンジ下限を引き上げた。同社は、2Qの調整後粗利益率が前年同期比0.7ポイント上昇の中、1-6月期営業キャッシュフローが3.5%増の20億USD。将来の成長に向けた研究開発投資や戦略的販売・マーケティング投資に資金を回す好循環サイクルにある。


    ナスダック<NDAQ> 市場:NASDAQ・・・2026/1/29に2025/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

    ・1971年設立の電子株式市場運営会社。取引・クリアリング関連の「市場サービス」、市場データ・上場関連の「資本アクセスプラットフォーム」、市場監視システム関連の「金融技術」の3部門を展開。

    ・10/21発表の2025/12期3Q(7-9月)は、取引費用を除く純収益が前年同期比14.7%増の13.15億USD、非GAAPの調整後EPSが同18.9%増の0.88USD。年換算経常収益(ARR)が10%増の30億USD。資本アクセスプラットフォームと金融技術を含む「ソリューション事業」(売上比率76%)は15%増収。

    ・通期会社計画は、調整後営業費用を前期比7-8%増の23.05-23.35億USD(従来計画22.95-23.35億USD)へレンジ下限を引き上げた。3Qのソリューション事業のうち資本アクセスプラットフォームが前年同期比9%増収、金融技術が13%増収。11/20、ウォルマート<WMT>が普通株式上場先をニューヨーク証券取引所からナスダックに移すと発表。テクノロジー重視のアピール効果が見込まれる。


    クオンタム・コンピューティング<QUBT> 市場:NASDAQ・・・2026/3/20に2025/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

    ・2001年設立の統合フォトニクス企業。手頃な価格の量子マシンを提供する。非線形量子光学を使用したアクセスしやすいフォトニックハードウェアは、室温・低電力で動作するように設計されている。

    ・11/14発表の2025/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比3.8倍の38万USD、営業損失は投資拡大を受けて1040万USDへ約1.9倍に拡大。純利益は、ワラント関連デリバティブ負債の時価評価益および保有現金の利益収入増を受けて、前年同期の▲567万USDから238万USDの黒字へ転換。

    ・同社は主に量子AI・サーバーセキュリティ関連ソリューションについて、大手商業銀行向けに米国で初の商業販売に成功。製品需要の高まりを実証したことを受けて、2025年9月と10月で合計12.5億USDの大規模な私募株式発行により資金を調達した。今年10月、トランプ米政権が量子コンピュータ企業数社と資本参加について協議中と報道された。量子AIは暗号解読に深くかかわっている。


    テスラ<TSLA> 市場:NASDAQ・・・2026/1/29に2025/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

    ・2003年設立。電気自動車(EV)の設計・製造・販売、EV用パワートレイン部品の他の自動車メーカーへの販売、および充電式リチウムイオン電池システムなどのエネルギー貯蔵製品の販売を行う。

    ・10/22発表の2025/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比11.6%増の280.95億USD、非GAAPの調整後EPSが同30.6%減の0.27USD。粗利益率が1.85ポイント悪化。自動車収入(売上比率75%)が6%増、エネルギー生成・貯蔵収入(同12%)が44%増、サービスその他収入(同12%)が25%増。

    ・マスクCEOは11/23、AI(人工知能)半導体チップの「AI5」の設計工程が最終段階に近づき、次世代チップ「AI6」の開発に着手とSNS上に投稿。既に韓国サムスン電子とテスラ向けAI半導体を製造するため165億USD規模の契約を締結。マスク氏率いるAI開発企業の「xAI」は生成AI基盤モデル「Grok」を開発し、SNSの「X」で活用。マスク氏の下、今後、xAIとテスラが経営統合する可能性も考えられる。


    執筆日:2025年11月25日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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