2025年4月22日 21時33分
スタグフレーション、上昇が期待される3つのセクター=米国株
米国市場ではスタグフレーションの懸念が再び注目を集めているが、その場合、IT・ハイテク、生活必需品、医療が市場を牽引する可能性があるとの見方が出ている。
スタグフレーションは最悪のシナリオの1つだが、直近の米経済は高インフレと高金利にもかかわらず、この状況を回避できていた。ただ、現在は消費財の価格上昇を招く可能性があるトランプ関税に加え、消費者と企業の景気後退への不安感が強まる中、市場は再びスタグフレーションの現実味が増していると懸念を強めている。パウエルFRB議長も先週の講演で「困難なシナリオに直面する可能性がある」と警告していた。
スタグフレーションの定義は様々あるが、「トレンドを下回るGDPと、トレンドを1ポイント以上上回るインフレ」との定義が一般的。1950年代以降、約10%の確率で発生しており、その場合、株式市場は低迷し、平均の年間リターンはマイナス4.3%となる。
経済成長が鈍化する時期には、投資家はポートフォリオを公益や生活必需品などディフェンシブに傾け、景気拡大期にはエネルギーや金融など循環セクターに焦点を当てる傾向があるとされる。
しかし、実際は必ずしそうではないという。過去50年間でスタグフレーションの期間中に最もパフォーマンスが良かったのはIT・ハイテクで、市場を4.9ポイント上回った。その後に、通信サービス、医療、生活必需品と続く。
生活必需品と医療はあらゆる経済環境下でディフェンシブに位置づけられているが、IT・ハイテクはむしろ、循環セクターの部類に位置づけられている。景気後退時には、企業はソフトウェアや新しいデータセンターへの投資を控え、消費者も新しいスマホやPCの購入を控える傾向があるからだ。しかし、ストレスが高まった時期でも投資家がIT・ハイテクに惹かれるのには理由がある。力強い利益と健全なバランスシートを誇っているからだという。アナリストは今年のIT・ハイテクセクターの利益の伸びを約17%と予測しており、これは全体の9.7%を上回っている。
◆IT・ハイテクへの懸念材料
歴史的なスタグフレーション時期にIT・ハイテクがアウトパフォームしていたとしても、最近の急騰が複雑にする可能性はあるという。IT・ハイテクがS&P500で約30%を占める現在、ポートフォリオをさらに同セクターに傾けるのはリスクが高い。これらの株式は過大評価されているとの見方から、今年に入ってからのパフォーマンスは鈍化している。ただ、IT・ハイテクのスタグフレーションへの強い耐性を考慮すれば、検討する価値はあるかもしれないという。
◆過去のスタグフレーションの敗者
過去のスタグフレーションの敗者も現在は、典型的な循環およびディフェンシブの枠組みに当てはまらないという点は留意される。スタグフレーション時に最もパフォーマンスの悪かった3つのセクターは、金融、公益、エネルギーとなっている。
金融と原油などのエネルギーは通常であれば、循環セクターに位置付けられる。公益は規制を受けており、経済状況に関わらず家庭の暖房や電力供給を必要とする人々を対象としているため、伝統的なディフェンシブとみなされている。
では、なぜスタグフレーションの場合、公益はだめなのか。スタグフレーションが公益を進退窮まった状況に追い込む可能性があるという。インフレがコストを押し上げる一方、弱い経済により当局が料金引き上げを許可しない方向に導くためだとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
株探ニュース
スタグフレーションは最悪のシナリオの1つだが、直近の米経済は高インフレと高金利にもかかわらず、この状況を回避できていた。ただ、現在は消費財の価格上昇を招く可能性があるトランプ関税に加え、消費者と企業の景気後退への不安感が強まる中、市場は再びスタグフレーションの現実味が増していると懸念を強めている。パウエルFRB議長も先週の講演で「困難なシナリオに直面する可能性がある」と警告していた。
スタグフレーションの定義は様々あるが、「トレンドを下回るGDPと、トレンドを1ポイント以上上回るインフレ」との定義が一般的。1950年代以降、約10%の確率で発生しており、その場合、株式市場は低迷し、平均の年間リターンはマイナス4.3%となる。
経済成長が鈍化する時期には、投資家はポートフォリオを公益や生活必需品などディフェンシブに傾け、景気拡大期にはエネルギーや金融など循環セクターに焦点を当てる傾向があるとされる。
しかし、実際は必ずしそうではないという。過去50年間でスタグフレーションの期間中に最もパフォーマンスが良かったのはIT・ハイテクで、市場を4.9ポイント上回った。その後に、通信サービス、医療、生活必需品と続く。
生活必需品と医療はあらゆる経済環境下でディフェンシブに位置づけられているが、IT・ハイテクはむしろ、循環セクターの部類に位置づけられている。景気後退時には、企業はソフトウェアや新しいデータセンターへの投資を控え、消費者も新しいスマホやPCの購入を控える傾向があるからだ。しかし、ストレスが高まった時期でも投資家がIT・ハイテクに惹かれるのには理由がある。力強い利益と健全なバランスシートを誇っているからだという。アナリストは今年のIT・ハイテクセクターの利益の伸びを約17%と予測しており、これは全体の9.7%を上回っている。
◆IT・ハイテクへの懸念材料
歴史的なスタグフレーション時期にIT・ハイテクがアウトパフォームしていたとしても、最近の急騰が複雑にする可能性はあるという。IT・ハイテクがS&P500で約30%を占める現在、ポートフォリオをさらに同セクターに傾けるのはリスクが高い。これらの株式は過大評価されているとの見方から、今年に入ってからのパフォーマンスは鈍化している。ただ、IT・ハイテクのスタグフレーションへの強い耐性を考慮すれば、検討する価値はあるかもしれないという。
◆過去のスタグフレーションの敗者
過去のスタグフレーションの敗者も現在は、典型的な循環およびディフェンシブの枠組みに当てはまらないという点は留意される。スタグフレーション時に最もパフォーマンスの悪かった3つのセクターは、金融、公益、エネルギーとなっている。
金融と原油などのエネルギーは通常であれば、循環セクターに位置付けられる。公益は規制を受けており、経済状況に関わらず家庭の暖房や電力供給を必要とする人々を対象としているため、伝統的なディフェンシブとみなされている。
では、なぜスタグフレーションの場合、公益はだめなのか。スタグフレーションが公益を進退窮まった状況に追い込む可能性があるという。インフレがコストを押し上げる一方、弱い経済により当局が料金引き上げを許可しない方向に導くためだとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
株探ニュース