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    2024年7月25日 17時40分

    米大統領選が本線~ドリル・ベイビー・ドリルと製造業大国【フィリップ証券】

     米大統領選の動向が米国株式相場への影響力を強めつつある。日本時間22日の朝、バイデン大統領が再選を断念し選挙戦からの撤退を表明。後継候補としてハリス副大統領が選出され、来月の19-22日開催の民主党全国大会を迎える見通しだ。他方、共和党サイドは、大統領候補の指名受託演説でトランプ前大統領が不法移民の流入抑制とあわせ、「ドリル・ベイビー・ドリル(石油の大量生産)」と呼ばれる、石油・ガス採掘の規制緩和を再重要課題の一つに挙げた。民主党サイドも勢いを回復しており、当面は「トランプ・トレード」の勢いが萎む可能性があるものの、トランプ・トレードで浮上しそうな銘柄はバリュー銘柄として割安株投資に向いている面もある。シンプルに「バリュー投資の押し目買い」と見なして投資しても通用するのではないだろうか。

     共和党の政策綱領が党全国委員会で承認され、「速やかに達成する20の約束」と「10の政策方針」が公表された。その「20の約束」の中には、「インフレを終わらせ、米国に再び手頃な価格をもたらす」、「米国を世界有数のエネルギー生産国にする」、「アウトソーシングをやめ、米国を製造大国にする」、「電気自動車(EV)の義務化を中止し、高コストで負担の大きい規制を削減する」といった公約が盛り込まれている。

     石油・ガス採掘の規制緩和ではエクソン・モービル<XOM>やシェブロン<CVX>など大手石油・エネルギー企業だけでなく、ハリバートン<HAL>やベイカー・ヒューズ<BKR>、アスペン・テクノロジー<AZPN>ほか、大手エネルギー企業を顧客としたサービスを提供する企業が注目される。他方、再生可能エネルギー普及促進は補助金の削減など、バイデン政権から180度転換する可能性がある点は要注意だろう。

     「アウトソーシングをやめ、米国を製造大国にする」という公約からは、工場生産の国内回帰を進めることから工場建設のための建設機械ほかインフラ関連銘柄が引き続き注目されよう。反面、トランプ氏が、生成AI(人工知能)に関連する先端半導体の受託製造を一手に担う台湾積体電路製造・TSMC<TSM>について「米国から半導体ビジネスを奪う」存在とみなし、米国による台湾への防衛義務と天秤に掛けるスタンスを示したことは軽視できないだろう。エヌビディア<NVDA>やアップル<AAPL>をはじめ、TSMCに半導体製造をアウトソースする大型ハイテク・半導体銘柄を巻き込んだ株価調整・下落は、「ドリル・ベイビー・ドリル」と「製造業の国内回帰」といった政策とトレード・オフの関係にならざるを得ない副作用として容認を余儀なくされる懸念も残る。

     「グレート・ローテーション」は、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げがラッセル2000指数を構成するような中小型銘柄へのシフトを伴うこと、および、共和党の政策綱領に沿った「トランプ・トレード」に伴う物色対象銘柄群の入れ替えの二点を大きな柱とすることになりそうな模様だ。


    ■米共和党の政策綱領発表~2020年の選挙時には政策綱領発表せず

     米共和党のトランプ前大統領の選挙陣営は7/8、同党の2024年政策綱領が党全国委員会で承認されたと発表。厳しい国境措置や減税、中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)の撤回などこれまでトランプ氏が公言していた内容が反映されている。関税による輸入物価上昇と移民規制に伴う人手不足、および減税による財政拡大がインフレに繋がるとの見方が強いなか、エネルギーコスト低下とウクライナ情勢解決に伴う穀物価格低下があればインフレを抑制する面もありそうだ。また、「アウトソーシングをやめて米国を製造大国にする」項目は工場建設に伴う工事や設備投資に係る様々な需要増が期待される。他方、「米ドルを基軸通貨として維持」の項目はトランプ氏が暗号資産に前向きだとする市場の見方と矛盾する面もあろう。

    【タイトル】


    参考銘柄


    ボール<BALL> 市場:NYSE・・・2024/8/1に2024/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・飲料、パーソナルケア・家庭用品(エアロゾル製品など)向けアルミニウム缶の世界大手サプライヤー。グローバル企業を顧客とし、多くの長期供給契約を締結。航空宇宙事業は24年2月に売却。

    ・4/26発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比3.3%減の28.74億USD、2/16完了の航空宇宙事業売却等の影響を除く非GAAPの調整後EPSが同1.4%減の0.68USD。主力の飲料パッケージの内、北中米が同6.7%減収、欧州・中東・アフリカが同2.9%減収に対し南米が同7.1%増収。

    ・2024/12会社計画は、15億USDを超える株主還元(自社株買いと配当)を実施。航空宇宙事業を英BAEシステムズに55.5億USDで売却で得た資金は債務償還と複数年に及ぶ自社株買いプログラムに使われる方針。リサイクルが容易な中長期持続見通しに加え、米大統領選挙におけるトランプ前大統領再選見通しの下、米国内製造業強化政策が推進される可能性が高いとみられる。


    ファスナル<FAST>  市場:NASDAQ・・・2024/10/11に2024/12期3Q(7-9月期)の決算発表を予定

    ・1967年創業の工業・建設資材の卸売大手。ファスナー、ボルト、ナット、ねじなどを業者向けに販売する。世界で1599支店を展開(2024年6月末)。顧客内店舗や資材の自動販売機の設置も行う。

    ・7/12発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比1.8%増の19.16億USD、EPSが同1.9%減の0.51USD。6月末の現場内店舗数が同12%増(1934拠点)へ拡大したことを受け、1日当たり売上高が1桁台前半の伸び率に。他方、粗利益率が0.4ポイントおよび販管費率が0.3ポイントそれぞれ悪化。

    ・2024/12期の会社業績予想非開示。今年6月単月の1日当たり売上高伸び率は前年同月比3.3%増。同社は顧客の工場や建設現場への距離短縮のため店舗開設を増やすなか現場内店舗数増に対し支店数は6月末で前年同期比2.2%減少。米大統領選挙でトランプ前大統領再選見通しが高まるなか、製造業中心に工場生産の米国内回帰の動きが高まれば同社の業績へ追い風となろう。


    DirexionデイリーS&P石油・ガス探鉱・生産ブル2倍ETF<GUSH> 市場:NYSEArca

    ・S&P Oil & Gas Exploration & production Select Industry Indexの変動率の2倍に連動する投資成果を目指す。投資目的達成は日次ベースでのみ評価。分配金の権利落ちは3・6・9・12月の年4回。

    ・19日終値時価総額が4.06億USD、過去12か月間の分配金単価(ネット)合計が0.90812USD。連動指数の組入れ上位6社はオキシデンタル・ペトロリアム<OXY>、シェブロン<CVX>、コノコフィリップス<COP>、エクソンモービル<XOM>、バレロ・エナジー<VLO>、クレセント・エナジー<CRGY>の順。

    ・昨年末終値から7/19終値までの騰落率(除くインカムゲイン)は同ETFが+9.0%に対し、WTI原油先物(期近)は+12.3%、S&P500株価指数が+15.4%。18日、共和党大統領候補の指名受託演説でトランプ前大統領は「大統領就任初日は2つのことをする。ドリル・ベイビー・ドリル(石油の大量生産)と国境の閉鎖だ」と宣言。石油・ガス採掘の規制緩和は最重要課題の一つに挙げられている。


    SLB<SLB> 市場:NYSE・・・2024/10/21に2024/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

    ・1926年設立の油田サービス会社。22年にシュルンベルジェから社名変更。原油・天然ガス開発会社を顧客とし技術サポートを提供。権益を持たず生産量・利益に応じた報酬体系。

    ・7/19発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比12.8%増の91.39億USD、排出権取引課徴金・クレジットの影響を除く非GAAPの調整後EPSが同18.1%増の0.85USD。売上比率33%の生産システムが同31%増収、同20%貯留パフォーマンスが11%増収、同11%デジタル関連が11%増収。

    ・2024/12通期会社計画は、調整後EBITDAが前期比14-15%増、調整後EBITDAマージンを25%以上と、従来見通しから引き上げた。更に、3Q(7-9月)の前四半期比増収率を1桁台前半(2Qは前四半期比5.0%増収)とし、4Q(10-12月)に向けて伸び率加速見通しとした。原油・天然ガス開発はAI活用で効率化が進むほか、「トランプ・トレード」で業績改善期待の代表的分野だろう。


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


    株探ニュース