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    2024年3月5日 17時00分

    明日の株式相場に向けて=躍動の「AI関連」百花繚乱へ

     きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比11円安の4万97円と3日ぶり小反落。恐るべき強さである。前日の米株安を受けて朝方は安く始まった日経平均だが、下値では海外筋とみられる買い注文が押し寄せる格好で容易に下がらない。後場に入るとひと足先に上昇に転じていたTOPIXに引っ張られる形でプラス圏に浮上する場面も。大引けはわずかに安く引けたものの、値上がり銘柄数が値下がりを大きく上回った。

     今の相場は完全に「スイッチが入ってしまった状態」にある。さすがに行き過ぎと思って売りから入っても、実は需給相場(上昇トレンド)の入り口だった、などということにもなりかねない。というより、個別株においては既にその状況に陥ってしまっている空売り筋も少なくないのではないか。さくらインターネット<3778>のPER不問の峻烈な上昇波動が、普段はなかなか見えない相場の本質を物語っている。

     さくらネットは生成AI関連の“政府御用達銘柄”で株高のお墨付きがついた、という簡単な話でもないのであろうが、「需給はすべての材料に優先する」という格言を地で行く展開となっている。ここで見るべきは400倍超のPERではなく、1倍近辺で拮抗する東証信用倍率、そして0.12倍の貸借倍率、更に貸株市場で調達した空売り残の方で、これらが株高のメカニズムを暗示している。このほか、AI関連株の買われ方は半端がない。バブルの色彩は否定できないとして、この流れに乗るかどうかは投資家の判断による。

     前週末2日のトップ特集掲載のAI関連7銘柄ではクロスキャット<2307>、サイオス<3744>、AVILEN<5591>、日本ラッド<4736>、テックファームホールディングス<3625>の5銘柄が揃って2日連続ストップ高。しかもサイオスとテックファムは2日にわたってザラ場で商いが成立しなかった。米エヌビディア<NVDA>を象徴株とするAI関連人気が東京市場にも本格的に波及してきた形で、それにしても想定を超える資金の勢いには驚く。AI関連の中小型株が草刈り場となっているが、実態面で買えない思惑だけの銘柄にはやはり手は出さない方が賢明ではある。そのなか、ヘルステックへのAI導入で共同研究を進捗させるフォーカスシステムズ<4662>に目を向けてみたい。トップライン、利益ともに安定した拡大基調で最高益が続いており、実態面も評価できるいわゆる“優等生銘柄”である。また、HEROZ<4382>にも着目。「AIが威力を発揮するのはビッグデータを活用した推論や市場予測の分野」(ネット証券アナリスト)という。HEROZが培った技術はまさにそこをフィールドとしており、改めてスポットが当たりそうだ。

     また今、一部の市場筋関係者の間で「AI関連のド本命はどこか」という議論が巻き起こっている。米国と比較するとどうしても日本のAI関連企業は線が細いが、そのなかで1等星の輝きで存在感を示す銘柄がソフトバンクグループ<9984>だ。傘下に置く英半導体設計アーム<ARM>の時価総額は日本円で約21兆円だが、親会社のソフトバンクGは13兆2400億円に過ぎない。このアームに対する評価が、生成AI市場の拡大とともに足もとで急速に高まってきた。AIの推論・予測能力の高さを商機に生かすとすれば、それは人間の行動心理学の範疇。人間のもう一つの頭脳と化しているスマートフォンがターゲットとなるが、そこでアームの存在価値ががぜん高まるという。アーム株式の9割を保有するソフトバンクGがアームの時価総額を早晩上回ることに何ら違和感はないという見方である。

     AI関連以外では、きょうは建設セクターの強調が際立った。大林組<1802>がストップ高に買われマーケットの耳目を驚かせたが、これは大幅増配が評価されたもので、3月期末を控え株主還元強化の思惑が他の銘柄にも波及しそうだ。ここでマークしたいのが配当利回り4.5%の東洋建設<1890>。海洋土木の大手だが時価総額1300億円強に過ぎず、配当性向100%は特筆に値する。業績面でも回復色が鮮明である。

     あすのスケジュールでは、2月の輸入車販売のほか、2月の車名別新車販売、2月の軽自動車販売など。海外では10~12月期の豪国内総生産(GDP)、1月のユーロ圏小売売上高が注目されるほか、米国でも重要経済指標の発表が相次ぐ。2月のADP全米雇用リポート、1月の米雇用動態調査(JOLTS)、1月の米卸売在庫・売上高、米地区連銀経済報告(ベージュブック)などに関心が高い。また、パウエルFRB議長が米下院金融サービス委員会で議会証言を行う。なお、この日はカナダ中銀が政策金利を発表する。(銀)

    出所:MINKABU PRESS

    最終更新日:2024年03月05日 17時22分