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    2026年6月26日 16時30分

    AI開発で需要が高まる「計算資源」、当面の留意点【フィリップ証券】

     CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループは、AI(人工知能)の学習やデータ処理に不可欠なGPUなどの「計算資源」の先物市場を創設する計画を進めている。AI開発競争による計算力不足やコスト変動リスクをヘッジできる新しい金融商品として注目されている。対象となる原資産は、エヌビディア<NVDA>などの高性能GPU(画像処理半導体)をクラウド経由で時間単位でレンタルする際のリース料であり、将来の計算資源の価格上昇リスクを抑えたいAI開発企業などが将来の価格変動リスクを回避するために事前に価格を固定(ヘッジ)できるとして期待が大きい。計算資源が「21世紀の新しい原油」とも呼ばれ、AI開発において莫大な需要とコスト高騰を引き起こしていることが同市場創設の背景にある。

     計算資源を構成する4つの要素として、①GPUおよびCPU(中央処理演算装置)、②メモリ、③ストレージ、④ネットワークが挙げられる。GPUはAIの機械学習で必須となる「並列計算」に特化するのに対し、CPUは複雑な制御や論理演算をこなすコンピュータの頭脳である。メモリは処理中のデータを一時的に保持する領域であるのに対し、ストレージはデータやソフトウェアを永続的に保存するHDD(ハード・ディスク・ドライブ)やSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)である。ネットワークは複数のコンピュータ(サーバ)間でデータを転送する通信帯域であり、分散処理やクラウド環境の効率を左右する。

     宇宙開発・AI関連事業のスペースX<SPCX>の株価水準について、2025年12月期通期売上高をベースとしたPSR(株価売上高倍率)が130倍超に上ることから高過ぎるという見方が根強い。これに対し、スペースXの主幹事を務めたゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは、AI事業において世界最大級のAI学習用スーパーコンピュータ「Colossus(コロッサス)」のリース提供拡大によって2028年度売上高が2025年度の約8.6倍に達するという強気の見方を提示している。計算資源の需要拡大の勢いがそれだけ強いと見込んでいることの表れだろう。

     当面の米国株市場を見ていく上での留意点として以下の2点が挙げられる。第1に、スペースXの指数組み入れの最短タイミングとして、FTSEラッセルの上場5営業日後、MSCIの上場10営業日後、ナスダック100の上場15営業日後とされていることである。同銘柄のポートフォリオへの組み入れが他の指数採用銘柄への売り圧力となる可能性がある。第2に、中間決算期に当たる6月末には、機関投資家によるポートフォリオの大規模リバランスに伴って機械的に株式を売却することで主要銘柄の株価変動性が高まりやすい一方、米国多国籍企業が海外子会社に蓄積した現金を米国内親会社へ還流させることに伴ってその一部が米国株市場へ流れることで追い風になることも考えられる。



    ■超大型IPOの指数採用を前倒し~上場5営業日後、10営業日後、15営業日後

     イーロン・マスク氏率いる宇宙開発・AI企業のスペースX<SPCX>の株価が、新規上場後も堅調に推移している。6/17終値の時価総額が2025年通期売上高の130倍超に上ることから割高であるとの見方が根強い。一方で、FTSEラッセルの主要米国株式指数やナスダック100が大型IPO銘柄の指数採用前倒しに関するルール変更を実施したことから機関投資家やETFによる指数連動資金の買い需要が発生している。

     米S&P500指数はルール変更を見送った一方、FTSEラッセルが上場5営業日後、ナスダック100が上場15営業日後の指数採用が可能となった。MSCIは既存ルールでも10営業日終了後に早期追加採用が可能だ。指数への採用に伴う買い需要一服後の動向に要注意だろう。

    【タイトル】


    参考銘柄


    グローバルXロボット&AI ETF<BOTZ> 市場:NASDAQ・・・分配金:年2回(権利落ち月:6・12月)

    ・「Indxxグローバル・ロボティクス&AI・セマティック指数」に連動する投資成果を目指し、産業用ロボット・自動化、自動運転を含め、ロボットやAI活用の恩恵を受ける企業への投資を目指す。

    ・6/18終値で時価総額が35.5億USD、過去12ヵ月間の実績分配金利回りが0.62%。組入れ上位8銘柄は、ABB(スイス)、キーエンス <6861> (日本)、ファナック <6954> (日本)、エヌビディア、インテュイティブサージカル<ISRG>、SMC <6273> (日本)、深セン市匯川技術(中国・深セン)、ダイフク <6383> (日本)である。

    ・2025年末終値から6/18終値までの騰落率(分配金を除く)は、同ETFが+5.9%に対し、ダウ工業株30種平均株価が+7.3%、S&P500株価指数が+9.6%、ナスダック100が+20.4%。日本政府が成長戦略に盛り込む戦略17分野への官民投資の全容が6/19、判明した。AIを用いてロボットを自律的に動かす「フィジカルAI」は目玉事業として、官民で2040年度までに10.5兆円を投資する。


    コアウィーブ<CRWV> 市場:NASDAQ・・・2026/8/12に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2017年設立。独自ソフトウェアとクラウドサービスで構成されるAI向けプラットフォームを提供。最先端かつ複雑なインフラストラクチャーを大規模に設計・構築・運用・管理する。

    ・5/7発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比2.1倍の20.7億USD(会社予想19-20億USD)、非GAAPの調整後営業利益が同90.9%増の11.5億USD、調整後純利益が▲0.36億USDから▲2.84億USDへ赤字幅が拡大、3月末受注残は昨年末比で50%増の約1000億USDへ拡大した。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比2.3-2.5倍の120-130億USD、調整後営業利益が同35-65%増の9-11億USDと従来計画を据え置いたのに対し、設備投資額を310-350億USD(従来計画300-350億USD)と部品価格の上昇などを受けて下限を引き上げた。CMEグループ<CME>が6/12、生成AI開発に必要不可欠な計算資源の価格に連動する先物市場を2026年内に立ち上げると発表した。


    エマソン・エレクトリック<EMR> 市場:NYSE・・・2026/8/6に2026/9期3Q)4-6月)の決算発表を予定

    ・1890年設立の複合企業。世界中の産業・商業・消費者市場向けに電子・電気機器、ソフトウェア、システム、サービスの設計・製造を通じて自動化ソリューションや住宅向けの製品・サービスを提供。

    ・5/5発表の2026/9期2Q(1-3月)は、売上高が前年同期比2.9%増の45.6億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.1%増の1.54USD。調整後EBITAマージンも0.4ポイント改善した。セグメント別調整後EBITDAは、インテリジェント・デバイス(売上比率55%)が5%増、ソフトウエア&システム(同33%)が5%減。

    ・通期会社計画は、売上高を前期比4.5%増(従来計画5.5%増)へ下方修正の一方、調整後EPSを同8-9%増の6.45-6.55USD(同6.40-6.55USD)と下限を引き上げた。同社はエネルギー関連プラント領域で中東地域に事業基盤があることから、米国とイランの戦闘終結に向けた覚書締結が追い風になると見込まれる。1H(10-3月)の営業キャッシュフローが前年同期比45%増。2025年度で69期連続増配。


    GEベルノバ<GEV> 市場:NYSE・・・2026/7/23に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2024年に複合企業GEからエネルギー事業がスピンオフ。陸上・洋上風力や水力を含む高信頼性の持続可能な電力システムを構築し、発電・送電・制御・変換・貯蔵を行う製品とサービスを提供。

    ・4/22発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比16.3%増の93.9億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同96.1%増の8.96億USD。データセンター関連電力需要増を受けてガスタービン製品受注が拡大し、新規受注高が71%増の183億USD。調整後フリーキャッシュフローが4.9倍。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比17-19%増の445-455億USD(従来計画440-450億USD)、調整後フリーキャッシュフローを同76-103%増の65-75億USD(同50-55億USD)、調整後EBITDAマージンを12-14%(同11-13%)とした。同社によれば、主にタービンや発電設備など設置済み電力システムを通じて世界全体の電力生成量の約30%に寄与。電力需要増の追い風を受けやすい。


    ニュースケール・パワー<SMR> 市場:NYSE・・・2026/8/7に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2007年設立。フルアー<FLR>傘下でオレゴン州立大学発の新興企業。同社が開発した「VOYGR12」はSMR (小型モジュール式原子炉)標準プラントで初めて、2020年に当局の設計認証審査を完了。

    ・5/7発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比95.8%減の0.56百万USD、営業損失が前年同期の▲35.3百万USDから▲57.5百万USDへ赤字幅拡大。前年同期に完了したルーマニアのRoPower技術ライセンス契約による収益計上の反動減が出たほか、研究開発費用の増加が響いた。

    ・同社は3月末時点で約10億USDの流動性を維持し、商業化に向けた投資を継続中。同社は米国原子力規制委員会(NRC)からSMRとして設計認証や標準設計承認(SDA)を取得した唯一の企業。日本から日揮ホールディングス <1963> やIHI <7013> が出資し、建設・プラントエンジニアリングの面で協業。昨年10月に締結された日米枠組協定の一環として同社関連案件(ENTRA1 Energy)が投資を受ける可能性がある。


    バーティブ・ホールディングス<VRT> 市場:NYSE・・・2026/7/30に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2016年設立。データセンター、通信ネットワーク、商業・産業環境向けに、データ処理・保存・送信用の電子機器に電力を供給・冷却するデジタルインフラの設計・製造、ライフサイクル管理を行う。

    ・4/22発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比30.1%増の26.5億USD(会社予想25.0-27.0億USD)、非GAAPの調整後EPSが同82.8%増の1.17USD(同0.95-1.01USD)。昨年12月末受注残が2024年末比109%増の150億USD。データセンターの電力消費増に伴って熱管理需要が拡大。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比32-37%増の135.0-140.0億USD(従来計画132.5-137.5億USD)、調整後EPSを50-52%増の6.30-6.40USD(同5.97-6.07USD)。CMEグループ<CME>が6/12、生成AI開発に必要不可欠な計算資源の価格に連動する先物市場を2026年内に立ち上げると発表。計算資源プラットフォームの価値を維持・改善するソリューション需要が高まることが見込まれる。


    執筆日:2026年6月22日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


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