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    2025年10月8日 16時10分

    アルトマン効果、iPhone部品サプライヤー、自民党総裁選【フィリップ証券】

     AI(人工知能)半導体・インフラ関連銘柄の株価上昇が続いている。米国の雇用関連指標が軟調なことに加え、米連邦政府機関の一部閉鎖など経済活動にマイナスとみられる材料も、追加利下げ見通しを強化するものとして市場でポジティブに捉えられている。そのような中で、米国における大規模AIインフラ・プラットフォームの「スターゲート」プロジェクトの大きな波が10/2、いよいよ日本にも上陸したかのようだ。ソフトバンクグループ<9984>とともに「スターゲート」の中心的役割を果たす新興AI開発企業OpenAIのアルトマンCEOは、10/1に韓国を訪問してサムスン電子やSKハイニックスからAI向けデータセンターで使う半導体メモリーDRAMを調達すると発表。10/2、日本のデジタル庁と連携して生成AIを安全かつ効果的に活用し、行政サービスの高度化を図る戦略的協力に向けた取り組みを開始すると発表。同日に日立製作所<6501>と、AI向けデータセンターの電力関連技術などで戦略的パートナーシップに関する基本合意書(MOU)を東京都内で締結。日立が送配電設備や空調技術を提供する予定だ。

     9/19にiPhone17を発売したアップル<AAPL>のティム・クックCEOは9/25、アップル横浜テクノロジーセンターで日本の主要サプライヤー幹部と面会し、共同プレゼンテーションの場を設けた。その場に集まったサプライヤーは、イメージセンサーでソニーグループ<6758>、積層セラミック基板で京セラ<6971>、赤外線カットフィルターでAGC<5201>、磁場を検出するTMRセンサーでTDK<6762>の4社である。いずれも他社では代替不可能な独占供給部品であり、世界最高峰のカメラシステムを支えている。iPhone17の初期注文台数が好調なことを受けて、アップルはサプライヤーに対し1日当たり製造台数をこれまでより3割増やすように指示したと報道されている。

     自民党総裁選の投開票が10/4午後に実施される。自民党は衆参ともに少数与党となっており、次期総裁は政権運営安定化に向け、野党との協力や連立の枠組みを拡大するとみられる。その中で連立政権入りに前向きとみられているのが日本維新の会だ。連立入りの条件として同党が掲げる看板政策の「副首都構想」が焦点となる可能性が高い。東京一極集中の是正を図り、大阪を副首都として位置づける計画であり、首都機能の一部を大阪へ移転、IR(統合リゾート)開発の加速、インフラ整備などが想定されている。主な恩恵を受けそうな企業として、夢洲開発でスマートシティ技術提供が可能とみられるパナソニックHD<6752>、エネルギー需要増で関西電力<9503>、IR運営でオリックス<8591>、大阪を拠点とする鉄道ほか交通網やホテル、百貨店で近鉄グループHD<9041>や阪急阪神HD<9042>などが挙げられる。いずれも予想PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標面で割安水準にあることも注目される。


    ■景気サイクルと国債利回り曲線~日本株はマクロ重視、米国株は個別重視

     景気サイクルとは、経済活動が「好況」と「不況」を繰り返す現象であり、景気の山から谷、次の山までが一つの周期とされる。経済が景気サイクルのどこにあるのかを見極めるには、国債の利回り曲線の形状に着目することが有効だ。

     日銀が低金利・金融緩和を維持する中で将来の経済成長・インフレが期待され、日本国債の利回り曲線は長期が短期よりも高い「順イールド」かつ右肩上がりの「スティープ化」の形をしている。一方、米国債の利回り曲線は短期と長期の差が小さい「フラット化」の形だ。景気サイクル上は日本経済が「回復期」、米国経済が「拡大~山」近辺と考えられる。日本株はマクロ経済重視、米国株は景気に左右されにくい個別株の成長力重視スタンスでの投資が有効とみられる。


    【タイトル】


    参考銘柄


    杏林製薬<4569>

    ・荻原廣が関東大震災を機に独立し、1923年に現・東京都大田区に東洋新薬社を創立。1931年に杏林科学研究所を設立。医薬品の製造・販売に仕入も行う。ぜんそく薬や去痰剤等を主力とする。

    ・7/31発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比6.4%増の302億円、営業利益が同106.1%増の23億円。国内向け新医薬品等(売上比率71%)が8%増収。後発医薬品(同28%)は薬価改定によるマイナスの影響を受けたものの、長期収載品の選定療養の導入もあり2%増収。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比2.4%減の1270億円、営業利益が同51.5%減の61億円、年間配当が同横ばいの57円。前期に自社創製化合物の導出一時金収入を計上した反動減による一時的な減益を見込んでいる。過活動膀胱治療剤や喘息治療配合剤、アレルギー性疾患治療剤など新薬の主力製品の安定的成長が見込まれる一方、PBR(株価純資産倍率)は0.6倍台にとどまる。


    住友重機械工業<6302>

    ・住友機械工業と浦賀船渠が1969年に合併。メカトロニクス、インダストリアルマシナリー、ロジスティックス&コンストラクション、エネルギー&ライフラインの4事業を展開。変減速機、射出成形機に強み。

    ・8/5発表の2025/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比4.9%減の4946億円、営業利益が同35.0%減の216億円。受注高が18%増の5355億円。事業別営業利益では、メカトロニクスが30%増の一方、インダストリアルマシナリーが赤字、ロジスティックス&コンストラクションが56%減となった。

    ・通期会社計画を下方修正。売上高を前期比2.0%減の1兆500億円(従来計画1兆900億円)、営業利益を同9.3%減の500億円(同600億円)とした。年間配当は同横ばいの125円。9/26、船体建造で国内造船最大手の今治造船と協業すると報道された。商船建造を終える予定だった傘下の横須賀造船所を活用する見通し。変減速機へのヒト型ロボット需要が見込まれる中、PBRは0.6倍にとどまる。


    京セラ<6971>

    ・1959年に京都セラミックを創業。ファインセラミック技術を軸に事業展開。コアコンポーネント(産業・車載用、半導体関連用)、電子部品、ソリューション(機械工具、ドキュメント、通信)の3事業を営む。

    ・7/30発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比4.2%減の4780億円、営業利益が同11.5%減の185億円。セグメント利益は、コアコンポーネント(売上比率30%)が10%増の141億円に対し、ソリューション(同53%)が4%減の188億円、電子部品(同17%)が事業譲渡もあり赤字転落。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比5.7%減の1兆9000億円、営業利益が同101.5%増の550億円、年間配当が同横ばいの50円。同社の先端セラミック技術はデータセンターなどデジタルインフラに果たす役割が大きい。同社の積層セラミック基板はセンサーの熱やノイズを極限まで抑えることができ、9/19に発売されたアップル<AAPL>のiPhone17のカメラシステムに不可欠な役割を果たしている。


    オリックス<8591>

    ・1964年に日綿実業や三和銀行、日本興業銀行他が参加してオリエント・リースとして発足。リースのほか不動産、事業投資(空港運営など)、環境エネルギー、生保、銀行・クレジットなどへ多角化。

    ・8/7発表の2026/3期1Q(4-6月)は、営業収益が前年同期比8.5%増の7686億円、税引き前利益が同29.4%増の1554億円。セグメント利益では、法人営業・メンテナンスが19%増、不動産が157%増、環境エネルギーが黒字転換、生保が10%増、銀行・クレジットが55%増と業績拡大を牽引した。

    ・通期会社計画は、当期利益が前期比8.1%増の3800億円、年間配当は120.01円または配当性向39%に基づく金額(当期利益3800億円の場合は132.13円)のいずれか高い方とする方針。同社と米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナル<MGM>が中核の「大阪IR(統合リゾート)株式会社」が夢洲IR開発を担う。自民党総裁選後、連立政権の枠組みを巡って「副首都構想」が焦点となる可能性がある。


    ※執筆日 2025年10月3日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


    株探ニュース