2024年3月13日 17時00分
明日の株式相場に向けて=春闘「賃上げ」で日銀タカ派豹変か
きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比101円安の3万8695円と3日続落。日経平均株価は朝方買い先行で始まり、寄り後20分あまりで350円高の3万9100円台まで駆け上がったが、そこがきょうの天井となりその後は失速、ほどなくしてマイナス圏に沈む展開に。今度は後場寄り早々に350円近い下げをみせるなど目まぐるしい地合いで、方向感が容易に定まらなかった。下値では着実に押し目買いが入るものの、一方で上値を買い進む主体も見当たらず、後場は概(おおむ)ね3万8000円台後半のゾーンを彷徨した。
前日の欧州株市場では主要国の株価指数が総じて強い動きで、独DAXと仏CAC40は揃って過去最高値を更新。このリスクオンを引き継いだ米国株市場ではNYダウ、ナスダック総合株価指数、S&P500指数いずれも上昇、良い流れで東京市場に順番が回ってきた。米株市場ではハイテク株比率の高いナスダック指数の上昇率が高かったが、この日は全体相場を俯瞰するというよりはマーケットの視線は一点に集中、米画像処理半導体大手のエヌビディア<NVDA>に注がれていた。そうしたなか、エヌビディアは久々に咆哮し7%高という高パフォーマンスで株価を切り上げている。
最近の東京市場ではエヌビディアの値動きに日経平均がリンクしているといわれるほど株価の相関性が高かった。とすれば、きょうは半導体セクターの主力株を中心に鮮烈な戻り足がイメージされるところだったが、 半導体や AI関連は前日に先食いで良いところを見せてしまっていた銘柄も多く、きょうは買い一巡後に値を消すものも少なくなかった。相場の波紋は時々刻々と変化して、なかなかリアルタイムで波動を捉えるのは難しい。
もちろん、エヌビディア効果で気を吐いた銘柄もある。とりわけエヌビディアに追随する形で気勢を上げたのは、前日にも取り上げたさくらインターネット<3778>だ。前日はストップ安ウリ気配のまま引けたが、打って変わってきょうは朝方から買い注文が殺到、カイ気配でのスタートとなった。ネット証券大手の話では「前日に追い証に絡む投げ売りが出切った状態で、きょうは機械的な売り注文は鳴りを潜めた。米株市場で半導体やAI関連株が出直ったのもグッドタイミングで素直に切り返す形となった」という。前場は売り買いが交錯し上下に不安定な値動きを続けたが、後場中盤以降はストップ高カイ気配で張り付いた。
あとは、さくらネットと同じ需給的な構図で波乱となっている住石ホールディングス<1514>にも、トレーダーの視線は向いているはずだ。元来、理屈では語れない銘柄ではあるが、あえてファンダメンタルズに触れれば、直近の急落で時価予想PERは18倍台まで低下し、加えて24年3月期は一段の増額修正含みである。累積売買の多い2000円近辺はひとつの攻防ラインとなっており、きょうはそれを反映する動きとなっていた。
前日の欧米株高にもかかわらず東京市場の上値が重かったのは、きょうが春季労使交渉(春闘)の集中回答日だったことが背景にある。リスク選好で高く始まった日経平均だったが変調をきたし、国内製造業の盟主トヨタ自動車<7203>が組合の要求に対し4年連続での満額回答と伝わった午前10時あたりから、一気にマイナス圏に突っ込んだ。この他にも満額回答が相次いだが、刮目すべきは鉄鋼業界で、代表格の日本製鉄<5401>は組合の要求を上回る一律14%超の賃上げを提示した。政府要請があったとはいえ、企業の想定以上の賃上げへの取り組みは、市場関係者に半ば驚きをもって受け止められ、これは同時に来週18~19日に行われる日銀金融政策決定会合で、マイナス金利解除の可能性が高いという思惑が改めて強まることになった。「デフレ脱却という言葉はもはや過去の遺物と化し、既に賃金インフレの引き金を引いた可能性がある」(中堅証券ストラテジスト)という声すら聞かれた。この期に及んでマイナス金利継続など不条理の極みという認識が広がっても不思議はなく、「来週の決定会合は、むしろ解除後の日銀の政策方針(利上げ時期)に焦点が当たる」(同)というやや先走った見方も出ている。
あすのスケジュールでは、国内で特に目立ったイベントは見当たらないが、午前中に20年物国債の入札が予定されている。海外では、2月の米生産者物価指数(PPI)、2月の米小売売上高にマーケットの関心が高く、このほか、週間の米新規失業保険申請件数、1月の企業在庫なども発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日の欧州株市場では主要国の株価指数が総じて強い動きで、独DAXと仏CAC40は揃って過去最高値を更新。このリスクオンを引き継いだ米国株市場ではNYダウ、ナスダック総合株価指数、S&P500指数いずれも上昇、良い流れで東京市場に順番が回ってきた。米株市場ではハイテク株比率の高いナスダック指数の上昇率が高かったが、この日は全体相場を俯瞰するというよりはマーケットの視線は一点に集中、米画像処理半導体大手のエヌビディア<NVDA>に注がれていた。そうしたなか、エヌビディアは久々に咆哮し7%高という高パフォーマンスで株価を切り上げている。
最近の東京市場ではエヌビディアの値動きに日経平均がリンクしているといわれるほど株価の相関性が高かった。とすれば、きょうは半導体セクターの主力株を中心に鮮烈な戻り足がイメージされるところだったが、 半導体や AI関連は前日に先食いで良いところを見せてしまっていた銘柄も多く、きょうは買い一巡後に値を消すものも少なくなかった。相場の波紋は時々刻々と変化して、なかなかリアルタイムで波動を捉えるのは難しい。
もちろん、エヌビディア効果で気を吐いた銘柄もある。とりわけエヌビディアに追随する形で気勢を上げたのは、前日にも取り上げたさくらインターネット<3778>だ。前日はストップ安ウリ気配のまま引けたが、打って変わってきょうは朝方から買い注文が殺到、カイ気配でのスタートとなった。ネット証券大手の話では「前日に追い証に絡む投げ売りが出切った状態で、きょうは機械的な売り注文は鳴りを潜めた。米株市場で半導体やAI関連株が出直ったのもグッドタイミングで素直に切り返す形となった」という。前場は売り買いが交錯し上下に不安定な値動きを続けたが、後場中盤以降はストップ高カイ気配で張り付いた。
あとは、さくらネットと同じ需給的な構図で波乱となっている住石ホールディングス<1514>にも、トレーダーの視線は向いているはずだ。元来、理屈では語れない銘柄ではあるが、あえてファンダメンタルズに触れれば、直近の急落で時価予想PERは18倍台まで低下し、加えて24年3月期は一段の増額修正含みである。累積売買の多い2000円近辺はひとつの攻防ラインとなっており、きょうはそれを反映する動きとなっていた。
前日の欧米株高にもかかわらず東京市場の上値が重かったのは、きょうが春季労使交渉(春闘)の集中回答日だったことが背景にある。リスク選好で高く始まった日経平均だったが変調をきたし、国内製造業の盟主トヨタ自動車<7203>が組合の要求に対し4年連続での満額回答と伝わった午前10時あたりから、一気にマイナス圏に突っ込んだ。この他にも満額回答が相次いだが、刮目すべきは鉄鋼業界で、代表格の日本製鉄<5401>は組合の要求を上回る一律14%超の賃上げを提示した。政府要請があったとはいえ、企業の想定以上の賃上げへの取り組みは、市場関係者に半ば驚きをもって受け止められ、これは同時に来週18~19日に行われる日銀金融政策決定会合で、マイナス金利解除の可能性が高いという思惑が改めて強まることになった。「デフレ脱却という言葉はもはや過去の遺物と化し、既に賃金インフレの引き金を引いた可能性がある」(中堅証券ストラテジスト)という声すら聞かれた。この期に及んでマイナス金利継続など不条理の極みという認識が広がっても不思議はなく、「来週の決定会合は、むしろ解除後の日銀の政策方針(利上げ時期)に焦点が当たる」(同)というやや先走った見方も出ている。
あすのスケジュールでは、国内で特に目立ったイベントは見当たらないが、午前中に20年物国債の入札が予定されている。海外では、2月の米生産者物価指数(PPI)、2月の米小売売上高にマーケットの関心が高く、このほか、週間の米新規失業保険申請件数、1月の企業在庫なども発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS