2023年6月21日 11時41分
S&P500 月例レポート ― 利上げ停止の支持広がるなかレンジを上放れ (3) ―
●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○FRBは5月2-3日のFOMCで金利を0.25%引き上げました。予想通りの発表内容に市場は反応せず、声明が発表された現地時間午後2時の時点でS&P500指数は前日比0.37%高、パウエル議長が記者会見を開始した同午後2時半の時点では同0.33%高の水準でした。パウエル議長は記者会見の冒頭で最近の銀行問題に言及した上で、これ以上の追加利上げは予定していないものの、データと経済状況に基づいて会合ごとに決定していくと説明しました。同議長は、FRBとして年内の利下げを見込んでおらず、目標とする2%のインフレ率への道のりははるかに遠いとの見解を示しました。しかし、先物市場の見方は異なり、年内に2回の利下げを予想しています。
○欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を0.25%引き上げて3.25%とし、追加利上げの可能性もあると示唆しました。
○イングランド銀行は予想されていた通り、政策金利を0.25%引き上げて4.50%としました。これは2008年以後で最も高い水準であり、利上げを継続する可能性が高いとの見方が示されました。
○ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、FRBが足元の雇用統計よりも短期的な信用状況に注目しているとの見方を明らかにしました。
○5月2-3日のFOMC(0.25%の利上げを決定)の議事録からは、経済成長が鈍化する中、追加利上げの必要性について議論されたことが明らかになりました。
○ニューヨーク連銀は、2023年第1四半期末時点の米国の家計債務残高が0.9%増加して17兆500億ドルとなり、2019年末と比較すると2兆9000億ドル増加したことを明らかにしました。
○元エコノミストで、2022年からFRB理事を務めるフィリップ・ジェファーソン氏は、国家経済会議(NEC)委員長に就任したラエル・ブレイナード氏の後任として、FRB副議長に指名されました。
○ジェファーソン氏は5月31日の記者会見で、6月のFOMCで利上げに賛成しない意向であることを示唆しました。
○FRBのベージュブック(地区連銀経済報告)では、景気が減速していることが示されましたが、予想されていたほどの落ち込みではなく、インフレ率は依然として高水準が続いています。
●企業業績
○488社(時価総額で97.9%)が2023年第1四半期の決算発表を終え、そのうち375銘柄(76.8%)で営業利益が予想を上回り、486銘柄中361銘柄(74.4%)で売上高が予想を上回りました。
○2023年第1四半期の営業利益は前期比4.8%増、前年同期比7.0%増が見込まれていますが、2022年末時点での予想と比較すると1.0%低下しています。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から2.2%の減少が見込まれています。消費者が買い控えの姿勢を強め、企業がコストの増加分の全てを消費者に転嫁できていない状況にあります。
○2023年第1四半期の営業利益率は、2022年第4四半期の10.92%から上昇して11.70%となる見通しです(1993年以降の平均は8.29%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
○2023年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、これまでのところ、2022年第4四半期の19.4%に対して18.4%となりました。この割合は、2022年第1四半期は17.6%、コロナ禍に見舞われた2020年第1四半期は19.6%でした。
○2023年通年の利益は前年比10.9%増となる見通しで、2023年予想株価収益率(PER)は 19.1倍となっています(2023年第4四半期は過去最高益が見込まれています)。
○2024年の利益は同11.6%増が見込まれており、2024年予想PERは17.1倍となっています。
●個別銘柄
○航空機メーカーのボーイング<BA>は、アイルランドの航空会社ライアンエア・ホールディングス<RYAAY>から最大150機の737MAXを400億ドルで受注しました。
○娯楽大手のウォルト・ディズニー<DIS>が、フロリダ州に計画していた10億ドル規模の新社屋(カリフォルニア州から2000人の従業員を移動させる予定でした)の建設中止を発表したことで、ディズニーとフロリダ州知事(デサンティス氏)の争いは新たな局面を迎えたようです。
○スイスの銀行のUBSグループ<UBS>は、クレディ・スイスの買収に伴い発生が見込まれる法規制関連のコストをカバーするため、40億ドルを確保したことを明らかにしました。
○半導体メーカーのエヌビディア<NVDA>の業績は利益予想を大幅に上回り、AI関連の現在の売上高と今後の見通しを理由として、業績予想を上方修正しました。これを受けて、同社の株価は24.4%上昇しました(年初来では159%上昇)。
●注目点
○オンライン学習と勉強ツールを提供するチェグ<CHGG>は、学生の関心がAI(ChatGPT)に集中しているもようで、同社のサブスクリプション率が低下していると警告しました。これを受けて、同社の株価は一日で48.4%下落し(年初来では64.5%下落)、AIに対する一般投資家の最初の株価反応の一つとなりました。
○フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズ<META>は、ユーザー情報を米国に送信したとして、欧州連合(EU)の規制当局から13億ドルの罰金を科されました。
○2023年第1四半期の米国住宅価格(全米不動産協会による算出)は、一戸建て住宅価格の中央値が0.2%下落して37万1200ドルとなり、2012年以降で初めて前年比での下落となりました。
○モンタナ州では、2024年から動画共有アプリTikTokの使用を禁止する法案が制定され、それを受けて法的な異議申し立てが行われました(米国政府はこれまでに、政府機関での使用を禁止しています)。
○米国内国歳入庁(IRS)は、IRSのシステムを利用してIRSに直接税金を申告できるパイロットプログラムを開始すると発表しました。
○動画配信大手ネットフリックス<NFLX>は、アカウント共有を減らすために、1世帯1アカウント制の導入を開始しました。ストリーミングサービスを提供している他の企業も後に続くことが予想されるため、この方針は業界全体に広がると思われます。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、地方銀行のファースト・リパブリック・バンクをS&P500指数から除外し、資本財・サービス企業のアクソン・エンタープライズ<AXON>をS&P中型株400指数からS&P500指数に移行しました。
○私は2023年5月17日にS&Pでの勤務が47年目に入り、最も在籍年数が長いスタッフとなっています。
※「利上げ停止の支持広がるなかレンジを上放れ (4)」へ続く
株探ニュース
○FRBは5月2-3日のFOMCで金利を0.25%引き上げました。予想通りの発表内容に市場は反応せず、声明が発表された現地時間午後2時の時点でS&P500指数は前日比0.37%高、パウエル議長が記者会見を開始した同午後2時半の時点では同0.33%高の水準でした。パウエル議長は記者会見の冒頭で最近の銀行問題に言及した上で、これ以上の追加利上げは予定していないものの、データと経済状況に基づいて会合ごとに決定していくと説明しました。同議長は、FRBとして年内の利下げを見込んでおらず、目標とする2%のインフレ率への道のりははるかに遠いとの見解を示しました。しかし、先物市場の見方は異なり、年内に2回の利下げを予想しています。
○欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を0.25%引き上げて3.25%とし、追加利上げの可能性もあると示唆しました。
○イングランド銀行は予想されていた通り、政策金利を0.25%引き上げて4.50%としました。これは2008年以後で最も高い水準であり、利上げを継続する可能性が高いとの見方が示されました。
○ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、FRBが足元の雇用統計よりも短期的な信用状況に注目しているとの見方を明らかにしました。
○5月2-3日のFOMC(0.25%の利上げを決定)の議事録からは、経済成長が鈍化する中、追加利上げの必要性について議論されたことが明らかになりました。
○ニューヨーク連銀は、2023年第1四半期末時点の米国の家計債務残高が0.9%増加して17兆500億ドルとなり、2019年末と比較すると2兆9000億ドル増加したことを明らかにしました。
○元エコノミストで、2022年からFRB理事を務めるフィリップ・ジェファーソン氏は、国家経済会議(NEC)委員長に就任したラエル・ブレイナード氏の後任として、FRB副議長に指名されました。
○ジェファーソン氏は5月31日の記者会見で、6月のFOMCで利上げに賛成しない意向であることを示唆しました。
○FRBのベージュブック(地区連銀経済報告)では、景気が減速していることが示されましたが、予想されていたほどの落ち込みではなく、インフレ率は依然として高水準が続いています。
●企業業績
○488社(時価総額で97.9%)が2023年第1四半期の決算発表を終え、そのうち375銘柄(76.8%)で営業利益が予想を上回り、486銘柄中361銘柄(74.4%)で売上高が予想を上回りました。
○2023年第1四半期の営業利益は前期比4.8%増、前年同期比7.0%増が見込まれていますが、2022年末時点での予想と比較すると1.0%低下しています。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から2.2%の減少が見込まれています。消費者が買い控えの姿勢を強め、企業がコストの増加分の全てを消費者に転嫁できていない状況にあります。
○2023年第1四半期の営業利益率は、2022年第4四半期の10.92%から上昇して11.70%となる見通しです(1993年以降の平均は8.29%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
○2023年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、これまでのところ、2022年第4四半期の19.4%に対して18.4%となりました。この割合は、2022年第1四半期は17.6%、コロナ禍に見舞われた2020年第1四半期は19.6%でした。
○2023年通年の利益は前年比10.9%増となる見通しで、2023年予想株価収益率(PER)は 19.1倍となっています(2023年第4四半期は過去最高益が見込まれています)。
○2024年の利益は同11.6%増が見込まれており、2024年予想PERは17.1倍となっています。
●個別銘柄
○航空機メーカーのボーイング<BA>は、アイルランドの航空会社ライアンエア・ホールディングス<RYAAY>から最大150機の737MAXを400億ドルで受注しました。
○娯楽大手のウォルト・ディズニー<DIS>が、フロリダ州に計画していた10億ドル規模の新社屋(カリフォルニア州から2000人の従業員を移動させる予定でした)の建設中止を発表したことで、ディズニーとフロリダ州知事(デサンティス氏)の争いは新たな局面を迎えたようです。
○スイスの銀行のUBSグループ<UBS>は、クレディ・スイスの買収に伴い発生が見込まれる法規制関連のコストをカバーするため、40億ドルを確保したことを明らかにしました。
○半導体メーカーのエヌビディア<NVDA>の業績は利益予想を大幅に上回り、AI関連の現在の売上高と今後の見通しを理由として、業績予想を上方修正しました。これを受けて、同社の株価は24.4%上昇しました(年初来では159%上昇)。
●注目点
○オンライン学習と勉強ツールを提供するチェグ<CHGG>は、学生の関心がAI(ChatGPT)に集中しているもようで、同社のサブスクリプション率が低下していると警告しました。これを受けて、同社の株価は一日で48.4%下落し(年初来では64.5%下落)、AIに対する一般投資家の最初の株価反応の一つとなりました。
○フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズ<META>は、ユーザー情報を米国に送信したとして、欧州連合(EU)の規制当局から13億ドルの罰金を科されました。
○2023年第1四半期の米国住宅価格(全米不動産協会による算出)は、一戸建て住宅価格の中央値が0.2%下落して37万1200ドルとなり、2012年以降で初めて前年比での下落となりました。
○モンタナ州では、2024年から動画共有アプリTikTokの使用を禁止する法案が制定され、それを受けて法的な異議申し立てが行われました(米国政府はこれまでに、政府機関での使用を禁止しています)。
○米国内国歳入庁(IRS)は、IRSのシステムを利用してIRSに直接税金を申告できるパイロットプログラムを開始すると発表しました。
○動画配信大手ネットフリックス<NFLX>は、アカウント共有を減らすために、1世帯1アカウント制の導入を開始しました。ストリーミングサービスを提供している他の企業も後に続くことが予想されるため、この方針は業界全体に広がると思われます。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、地方銀行のファースト・リパブリック・バンクをS&P500指数から除外し、資本財・サービス企業のアクソン・エンタープライズ<AXON>をS&P中型株400指数からS&P500指数に移行しました。
○私は2023年5月17日にS&Pでの勤務が47年目に入り、最も在籍年数が長いスタッフとなっています。
※「利上げ停止の支持広がるなかレンジを上放れ (4)」へ続く
株探ニュース