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    2026年8月19日 10時00分

    再点火間近のエヌビディアと絶好の買い場迎えたスペースX<小川浩一郎・米国株"上昇のナラティブ">

    ◆AI投資への警戒感を払拭した"マグニフィセント3"の決算

     米主要企業の2026年4-6月期決算発表とその後の株価の反応を見て感じるのは、株式市場からAI(人工知能)データセンター投資への過剰な警戒感が薄らいだということだ。今回の決算シーズンにおける最大の注目ポイントは、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>などのハイパースケーラーが、巨額投資に見合う収益性を示すことができるのかということだった。

     ふたを開けてみれば、各社とも前四半期(26年1-3月期)から売上高成長率が加速するとともに、営業利益率も向上している。AI投資が着実に収益を生み出していることを証明したのだ。相変わらず設備投資意欲は旺盛だが、これまでの推移を見ると、投資実行からおおむね2四半期後に収益貢献が実現している。このサイクルが続くとするならば、今後も各社の収益拡大の勢いは増すと考えていいだろう。

     特に株式市場への影響が大きかったのは、7月29日に発表されたマイクロソフトの好決算だ。年初来、ハイパースケーラーの中で株価が最も大きく調整していた同社だが、26年4-6月期決算では、売上高、営業利益、そして営業利益率ともに市場予想を大きく上回り、翌日の株価が16%上昇した。7月30日に決算を発表したアマゾンも同様で、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の売上高が予想以上に拡大し、全社の営業利益も予想を大きく上回った。7月22日に発表されたアルファベットの決算こそ、市場の反応は良くなかったが、それでもAI投資の収益化は着実に進んでいることが示されている。この3社がAI投資の収益貢献を明示したことによって、マーケット全体のAI関連企業に対するセンチメントが劇的に改善、その余波は周辺企業にまで広がっている。

     最たる例は、AIサービスをクラウド上で提供するネオクラウド企業だ。代表的な企業のコアウィーブ<CRWV>、ネビウス・グループ<NBIS>がともに、26年4-6月期決算でAIクラウド事業の成長性が評価され、コアウィーブは決算翌日の株価が19%、ネビウスは発表当日に34%の急騰となった。

     さらに今年前半に大きく売られていたソフトウエア企業も、ここにきてようやく光が当たってきた。パランティア・テクノロジーズ<PLTR>の株価が、8月3日の決算発表翌日に29%急騰したのをはじめ、アトラシアン<TEAM>、トゥイリオ<TWLO>、ユニティ・ソフトウェア<U>といった企業がいずれも決算発表後に株価が大きく上昇。6月以降、最高値を更新し続けるクラウドフレア<NET>なども含め、「SaaSの死」を乗り越えて上昇基調が鮮明になっている。

     これらの動きは何を意味しているのか。半導体というAIの川上から、中流に位置するハイパースケーラー、そして下流のソフトウエア企業へと資金が循環し始めたということだ。6月までのフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)ひとり勝ちの局面から、S&P500種指数が高値を更新し、ナスダック総合指数も高値更新が目前に迫るなど、相場の流れが完全に変わってきている。マーケット全体にAI銘柄への買い安心感が広がっている。

    ◆次の注目はエヌビディアとオラクルの決算

     今後の注目決算は、8月26日(現地時間)のエヌビディア<NVDA>、そして9月前半予定のオラクル<ORCL>となる。エヌビディアの26年2-4月決算は、市場予想を上振れることはあっても下振れることはないだろう。となると、気になるのは決算発表後の株価の反応だ。同社はこの1年、いくら好決算を発表しても、株価が素直に反応しなかった。すでに多くの投資家が買いポジションを取っているため、上値が重くなるのはやむを得ないのかもしれない。

     だが、マーケット全体に買い安心感が広がるなか、そろそろ爆発してもいい頃だ。AIの中流企業と下流企業の業績は順当に推移している。いずれも同社にとっては顧客となる立ち位置だ。7月にメモリー各社やインテル<INTC>など、半導体株が軒並み総崩れとなる中で、ほとんど値を崩していないことも驚きだ。マーケットの期待が依然として高いことの表れで、同社の長期的な成長性を考慮すれば、バリュエーションも激安水準にあるといっていい。

     オラクルは「SaaSの死」で売られた銘柄の代表格だが、春以降は株価が反転していた。ところが、その後に発表された新株発行計画により財務悪化の懸念が高まり、受注残高の過半をオープンAIに依存していることも不安視され、7月28日には114ドルまで大きく売られた。足もとでは150ドル水準まで回復しているが、どうやらオープンAIの業績も堅調に推移しており、サプライズまではいかないだろうが、今回もある程度の好決算が見込まれる。現在の株価水準は、十分な「買い場」となっていると見ていいだろう。

    ◆サプライズの利下げもあり得るウォーシュFRB

     次に米国市場で注視されているFRB(米連邦準備制度理事会)の今後の金融政策についても触れておきたい。前回も述べたが、大方の市場予測とは異なり、9月に何らかのハト派メッセージを打ち出す可能性は高く、サプライズの利下げもあり得ると考えている。

     実際、先日発表された7月の米雇用統計やCPI(米消費者物価指数)、PPI(米生産者物価指数)などの指標は、いずれも利上げ観測を後退させる結果となり、着々と外堀が埋まりつつある。トランプ米大統領も、中間選挙対策として株高持続はマストの課題になるはずだし、大型リストラの進展など、デフレの兆候を示す事象も表れ始めている。

     とはいっても、一部のメディアが喧伝するような、ウォーシュ議長がトランプ政権の傀儡であるという見方に賛同しているわけではない。より大きな国際金融の枠組みにおいて、FRBが動かざるを得なくなるのではないかと思うのだ。いま、日米政府による為替市場への協調介入が話題になっているが、仮に米国が利下げをし、日本が利上げをすればこの問題は一気に解消される。改めて述べるまでもないかもしれないが、米国は巨額の債務を抱える赤字財政国家でもある。おそらく、目先のインフレ動向などより、こうした根源的な財政問題の解消のためにも、現時点での利上げは有益ではないはずなのだ。

    ◆AIリスクの矛先はオープンAIからメタに移行

     FRBが利下げへと舵を切れば、もちろん株式市場にとっては追い風だが、だからといって「ショック」の火種が消えたわけではない。どう考えても米国の正義がないイラン戦争の幕引きに手こずれば、地政学リスクは拡大するだろう。AI企業の中でもメタ・プラットフォームズ<META>のように大きなリスクが指摘されている企業もある。メタについては、マイクロソフトの復権と反比例するかのように、市場の懐疑の目が集まりつつある。その見方はこうだ。

     AI開発にしのぎを削る各社の中で、生き残るのはどこかと問われれば、まず、「ジェミニ」のアルファベットと、「クロード」のアンソロピックが双璧として挙げられる。収益化が見え始めたオープンAIと、イーロン・マスク帝国の総合力が期待されるスペースX<SPCX>陣営への期待も高い。では、メタはどうか。AI開発の覇権を巡って巨額の投資合戦を展開する同社だが、AIモデルの収益化では何ら道筋を示すことができていない。そもそもAIプレーヤーは3社から4社程度に収れんされるはずで、その中にはメタは含まれないのではないかという見方が広がっているのだ。

     もし、投資負担に耐えられずメタの業績が悪化し、株価が暴落するようなことになったら、株式市場に一定のショックを与えることになる。こうした状況を受け、市場関係者の中にはメタが他陣営に買収されるのではないかという見方さえあり、さらにそれを期待する声すらある。少し前は、そうした懐疑の視線がオープンAIに向けられていたのだが、マイクロソフトの好決算により、今ではメタがそのターゲットとなっている。もし、オープンAIが破綻すればその影響はマイクロソフトだけではなく、オラクルやエヌビディア、ソフトバンクグループ <9984> など広範に及ぶが、他社とのスキームを持たないメタなら影響は比較的軽微で済む。市場の見方には、そうした皮算用も働いているようだ。

    ◆"第2のエヌビディア"の本命、セレブラスとは?
     
     では今後、具体的にどのような銘柄に投資をすべきなのか。これまで挙げたAI中流、下流の主力銘柄はすでに株価が上昇しているので、ここでは小型株の中で投資妙味を感じる銘柄をいくつかピックアップしてみたい。

     筆頭は「第2のパランティア」とでも言うべき、軍事・宇宙関連のスタートアップ3社だ。ボイジャー・テクノロジーズ<VOYG>とカーマン・ホールディングス<KRMN>は、いずれも25年に上場したばかりで、AIを活用した技術開発力が高い評価を受け、その製品・サービスは米国防総省やNASA(米航空宇宙局)などの政府機関や大手民間企業に採用されている。時価総額は100億ドル以下だが、今後、世界の防衛産業が、宇宙を舞台に映画「スター・ウォーズ」さながらの世界を目指して技術開発競争を繰り広げることが予想される中で、注目度はさらに高まっていくだろう。

     今年の3月に上場したばかりのスウォーマー<SWMR>は、イラン戦争でも注目された自律型ドローンのシステム開発を手掛けている。時価総額は5億ドル前後とさらに小型だが、軍事のAI活用という点では本命とも言える領域を主事業にしていることもあり、成長余地は高い。

     防衛関連では、知る人ぞ知る優良企業のIPO(新規株式公開)も具体化してきた。11月の上場が噂されているアンドゥリル・インダストリーズだ。自律型防衛システムや指揮系統ソフトウエアを手掛ける同社については、防衛テック関連では近年最大級のIPO案件として注目されてきたが、マーケットの過熱感を嫌う同社CEO(最高経営責任者)のスタンスもあって、なかなか実現しなかった。噂どおりに年内上場が実現すれば、パランティア以来の注目を集めることが予想される。

     データセンター向けのストレージをサブスクリプションで提供するビジネスモデルで業績を拡大し、一躍、株式市場の注目を集めているのがネットアップ<NTAP>とエバ―ピュア<P>だ。両社ともすでに足もとの株価上昇は凄まじく、ここから買うとなるとリスクも高いが、今後の決算内容次第ではさらなる飛躍もあり得る。

     そして、数年前のエヌビディアのような熱狂を生むのではないかと期待されているのが、今年の5月に上場したAI特化型半導体メーカー、セレブラス・システムズ<CBRS>だ。同社は "エヌビディア・キラー"との異名を持ち、市場関係者の間では、"大化け株"の最有力候補と目されている。上場以来の株価は、公募価格185ドルから一時386ドルまで値を上げるも、その後は下落。8月13日に発表された26年4-6月期決算でも粗利益率が市場の期待を下回ったとして売られ、現在は250ドル前後の水準で推移している。

     だが、同社事業の成長力の高さは特筆すべきものがある。上場以前の5年間で売上高は約50倍へと膨れ上がっているが、これは大手ハイテク企業としては、アマゾン以来の成長率の高さだという。そしてここまでの株価チャートを見れば、23年にADR上場したアーム・ホールディングス<ARM>の上場直後の株価推移に瓜二つ。アームの株価は上場後の調整を経て、50ドル前後の安値から現在では5倍超の270ドル水準となっている。事業のポテンシャルを考えれば、同様の株価推移が期待できるのではないかと感じている。

    ◆シリコンバレーNo.1の熱量を持つスペースX

     期待が先行するIPO銘柄が一定期間の調整を経るのは、株式市場のセオリーと言っていい。だが、真の実力がある企業はこうした局面を経て、株価が何倍にも上昇していく。その意味で最後に伝えたいのは、スペースXの投資対象としてのポテンシャルだ。ご存じのとおり、同社の株価は上場直後の急騰を経て、現在は公募価格(135ドル)に近い水準まで調整している。高値の200ドル超の水準で同社株を買った投資家は、かなりの含み損を抱えている状況だ。

     とはいえ、案ずるには及ばないだろう。ロックアップ解除による売り出しを消化すれば、同社株は再び上昇軌道を描くはずだからだ。もちろん、同社への投資判断は、イーロン・マスク氏の掲げるビジョンを評価することが前提条件となる。だが、次代の最大のイノベーションである「AI」と「宇宙」の両分野に軸足を置く同社に、情熱にあふれた若者たちが集まっていることは容易に想像がつく。IT勃興期にシリコンバレーに集った若者たちが、その後、ビッグテックとして世界経済をけん引する立場になっていったような熱量を、現在のスペースXには感じるのだ。

     同社は現時点では赤字決算が続いているが、長期的な視点で投資をするなら、黒字化を待つ必要はない。「ハイテク界の女王」こと、アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッドが同社株の調整局面で買い増したと伝えられているが、さすがだと思う。少なくとも同社がこれまでのビッグテック同様に、将来にわたってイノベーションをけん引する存在になると考えるならば、株式投資のリターンは計り知れないほどの規模になるはずだからだ。


    【著者】
    小川浩一郎(おがわ・こういちろう)
    岩井コスモ証券投資調査部長/チーフアナリスト

    1967年生まれ。外資系コンサルティング会社で戦略立案、M&Aアドバイザリー等に従事した後、投資ファンドで投資実務や資産運用に携わり、2006年、岩井コスモ証券に入社。現在は米国株式を中心に外国株式に関する業務全般を担当。テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」、インターネット配信「ストックボイス」等に随時、出演。長年の市場分析経験を生かしたストーリー性のある銘柄・セクター分析に定評がある。社団法人・日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士・米国証券アナリスト・有資格者。

    株探ニュース