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    2026年5月29日 16時07分

    超大型IPOと「AIバブル」生成のリスク【フィリップ証券】

     米国株市場は6月以降、超大型IPOが相次ぐことになりそうだ。第1弾は6/12を目標にナスダック市場への上場が予定されている宇宙ベンチャーのスペースX<SPCX>だ。想定される時価総額は最大2兆USDとみられている。テスラ<TSLA>CEOのイーロン・マスク氏が率いる同社の収益を支えるのは衛星通信サービス「スターリンク」であり、低軌道に多数の衛星を打ち上げ、世界中に高速インターネット通信を提供している。同社は今年2月、同様にマスク氏傘下のAI(人工知能)開発企業「xAI」を完全子会社化した。xAIは膨大な数のエヌビディア<NVDA>製GPUで動作する巨大な計算インフラである「コロッサス1」を運営している。これは当初、対話型AI「グロック」の開発用だったが、現在は外部企業向けのAI計算インフラ事業へも拡大中だ。そしてスペースXは5/22、世界最大のロケット「スターシップ」の次世代型の打ち上げ試験に成功。実用化すれば現在の主力ロケットと比べて宇宙への輸送能力が4倍となり、成長戦略の加速につながると見られる。さらに市場では、テスラの蓄電技術やロボティクス事業とスペースXの宇宙開発やデータセンターの組み合わせによる巨大な相乗効果が期待されており、近い将来にスペースXとテスラの合併の可能性も取り沙汰されている。

     第2弾候補は、AI開発企業のオープンAIである。同社は最短で2026年9月の上場を目指し、非公開でのIPO申請準備を進めていると報道されている。このIPOにより、最大1兆USD規模の時価総額となることが見込まれている。マイクロソフト<MSFT>やソフトバンクグループ、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、エヌビディアといった大株主や主な出資企業の業績にも影響を与えることが考えられる。ただ、オープンAIの生成AIである「ChatGPT」はAI開発企業のアンソロピックの「Claude」やグーグルの「Gemini」との競争激化に見舞われ、構造的な赤字と慢性的な資金不足という課題を抱えており、その解消の目処が立っていない。

     第3弾候補はアンソロピックである。具体的な日程は未定ながら年内のIPOに向けて準備を進めているとされ、評価額が最大で9000億USDに達する可能性があると見られている。関係者によれば、同社の業績は対話型AIのClaudeやプログラミング向けの「Claude Code」の販売拡大を受けて2026年4-6月期に非GAAPの調整後営業黒字が見込まれており、堅調な推移がうかがわれる。

     このような超大型IPOが相次ぐことは、AIの進化に対する期待が過度に高まり、収益見通しよりも「夢」や「願望」が優先され、市場が浮かれやすくなる可能性がある。また、代表的な指数に採用されれば、機関投資家が超大型IPO銘柄を買い付ける資金を確保するために手持ちの銘柄を売却せざるを得なくなることで市場が不安定になりやすい面もあり、要警戒だろう。


    ■バークシャー保有銘柄の変化~今後の投資見通しへの強いメッセージも

     米投資会社バークシャー・ハサウェイが5/15に提出した規制当局への開示資料で、同社が2026年1-3月期にデルタ航空<DAL>の6.1%(26億5000万ドル)、百貨店メ―シーズ<M>の1.1%(5500万ドル)でそれぞれ取得したことが判明。アルファベット<GOOGL>の保有比率は3倍超、ニューヨーク・タイムズ<NYT>への出資比率は2倍超の9.4%となった。一方、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>、クレジットカードのビザ<V>とマスターカード<MA>は手放した。1-3月期合計では159億4000万ドル相当の株式を購入し、240億9000万ドル相当を売却。特にデルタ航空の買いとシェブロン<CVX>の売りの組み合わせはエネルギー価格の中長期的な見通しを示唆している可能性がある。

    【タイトル】


    参考銘柄


    グローバルファウンドリーズ<GFS> 市場:NASDAQ・・・2026/8/5に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2009年に半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>から分離独立した半導体受託製造(ファウンドリ)企業。ファウンドリ業界世界3位。アブダビ首長国政府系の投資機関が80%超を保有。

    ・5/5発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比3.1%増の16.34億USD(会社予想16.0-16.5億USD)、非IFRSの調整後EPSが同17.6%増の0.40USD(同0.30-0.40USD)。在庫調整からの回復を受けてウェハ出荷量(300mm相当)が6.7%増、調整後粗利益率が5.1ポイント上昇の29.0%。

    ・2026/12期2Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比3-6%増の17.35-17.85億USD、調整後EPSが同10%減-14%増の0.38-0.48USD。同社は様々な業界の電子機器で使用される複雑で不可欠なICを製造。稼働率改善に伴う粗利益率向上が見込まれる。また、IBMが設立を予定する量子チップ・ファウンドリの建設に際し、超電導量子ビット、関連電子回路向けウェハの製造を支援する方針である。


    IBM<IBM> 市場:NYSE・・・2026/7/22に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・1911年設立。多様なコンピューターソリューションを提供。ストレージ製品やサーバー製品のほか、AIの「Watson」やクラウドサービス、IoT、アナリティクス、コンサルティング等も提供する。

    ・4/22発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.4%増の159億USD、継続事業関連の非GAAPの調整後EPSが同14.3%増の1.28USD。AI普及を背景にソフトウェア(売上比率44%)が11%増収、コンサルティング(同33%)が4%増収、インフラ(同21%)が15%増収となった。

    ・2026/12通期会社計画は、為替変動の影響を除く売上高が前期比5%増、フリーキャッシュフローが同7%増の157億USDと従来計画を据え置いた。1Q粗利益率は、ソフトウエアが前年同期比0.8ポイント低下も全体では1.0ポイント上昇している。米政府は5/21、量子コンピューティング関連企業に対し、出資を含む総額20億USDの助成金を出すと発表。そのうちIBMに対して10億USDを提供するとした。


    メーシーズ<M> 市場:NYSE・・・2026/6/3に2027/1期1Q(2-4月)の決算発表を予定

    ・1858年にニューヨークで開業した乾物店を前身とする。「メ―シーズ」や「ブルーミングデールズ」などの百貨店やアウトレット店を米国43州で運営するほか、百貨店業界で最大規模のEC事業を展開。

    ・3/18発表の2026/1期4Q(11-1月)は、売上高が前年同期比1.1%減の79.16億USD、非GAAPの調整後EPSが同7.2%減の1.67USD。中間層から高所得者層の消費が引き続き堅調であることを背景に、通期で売上高(218億USD)と調整後EPS(2.15USD)のそれぞれが会社予想を上回って着地した。

    ・2027/1通期会社計画は、売上高が前期比1-2%減の214.0-216.5億USD、直営店とライセンス店舗を含む既存店売上高を同0.5%減~0.5%増、調整後EPSを同2-12%減の1.90-2.10USD。消費抑制の可能性を織り込む一方、高級百貨店ブルーミングデールズの既存店売上高は4Qが前年同期比10%増と好調。米投資会社バークシャー・ハサウェイは26年1Qにメーシーズの1.1%(5500万USD)を取得。


    クアルコム<QCOM> 市場:NASDAQ・・・2026/7/30に2026/9期3Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・1985年設立。ワイヤレス機器で使用する半導体製品の設計・開発・基盤技術商業化を行う。半導体チップ販売のQCT、ライセンス販売のQTLの主要2事業のほか新興企業への投資等のQSIを展開。

    ・4/29発表の2026/9期2Q(1-3月)は、売上高が前年同期比3.5%減の105.9億USD(会社予想102-110億USD)、非GAAPの調整後EPSが同7.0%減の2.65USD(同2.45-2.65USD)。QCT(売上比率86%)は車載向けが38%増収、IoT向けが9%増収の一方、主力のスマホ向けが13%減収だった。

    ・2026/9期3Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比4-11%減の92-100億USD、調整後EPSが同17-24%減の2.10-2.30USD。成長源であるデータセンター市場での取り組みが前進し主要なハイパースケーラーが年後半にも同社製チップの採用を開始する見通し。それに加えて、中国のスマートフォン分野についても4-6月期の底打ちに続き、翌四半期で前期比プラスに転じる見通しを示した。


    ロス・ストアーズ<ROST> 市場:NASDAQ・・・2026/8/21に2027/1期2Q(5-7月)の決算発表を予定

    ・1958年設立。中所得世帯をターゲットとし、アパレルやアクセサリー、フットウェア、家庭用品等のブランド品やデザイナー品を独自ブランドで、通常価格の20-60%のディスカウント価格で販売する。

    ・5/21発表の2027/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比20.6%増の60.1億USD、EPSが同37.8%増の2.02USD(会社予想1.60-1.67USD)。客単価上昇に加え、若年層を中心とした来店客数の増加もあり、既存店売上高の伸び率が過去最高の17%増(同7-8%増)。粗利益率が1.5ポイント改善した。

    ・通期会社計画を上方修正。EPSを前期比13-17%増の7.50-7.74USD(従来計画7.02-7.36USD)とした。同社は「Ross Dress for Less」(オフプライスチェーン)と「dd's DISCOUNTS」(ショッピングセンター内)のブランドで展開。オフプライスストアでの買い物は高品質ブランド商品を大幅な低価格で探し出す喜びが得られる「宝探しショッピング」として、実店舗での買い物に新たな価値を付加している。


    ズーム・コミュニケーションズ<ZM> 市場:NASDAQ・・・2026/8/21に2027/1期2Q(5-7月)の決算発表を予定

    ・2011年設立。クラウドを使用したWeb会議サービスを提供。ビデオ・オンライン会議、チャット、レコーディングなどを組み合わせ、主にWeb上でのコミュニケーション・ソフトウェアを提供する。

    ・5/21発表の2027/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比5.5%増の12.39億USD(会社予想12.20-12.25億USD)、非GAAPの調整後EPSが同8.4%増の1.55USD(同1.40-1.42USD)。直近12ヵ月間で10万USD超を支出した大口顧客数が8.2%増加。調整後営業利益率が1.3ポイント上昇の41.1%へ改善。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比4-5%増の50.8-50.9億USD(従来計画50.65-50.75億USD)、調整後EPSを同0.7-1.4%増の5.96-6.00USD(同5.77-5.81USD)とした。AIアシスタントの「Zoom AI Companion」の新バージョンの成功が法人向けで新顧客獲得と既存顧客のアップセルに貢献している。「Zoom AI Companion」の1Qにおける利用者数は前年同期比約3倍に達した。


    執筆日:2026年5月25日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


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