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    2024年12月8日 9時15分

    【杉村富生の短期相場観測】 ─トランプ政権は日本企業の追い風に!

    「トランプ政権は日本企業の追い風に!」

    ●ネガティブにとらえては“損”をする

     トランプ次期政権が2025年1月20日の正式発足を前に、本格的に動き始めている。閣僚人事に加え、高関税を打ち出し、世界の金融マーケットは彼の言動に一喜一憂する日々である。まあ、“喜”は少ない。移民、通商、貿易、環境政策は徹底した「アメリカ・ファースト」だ。他国が身構え、脅えるのは当然だろう。

     ただ、トランプ大統領の再登板は日本にとって、決して悪い話ではない。教条主義のハリス女史よりも“良”だ、もちろん、対中貿易摩擦は激化するだろう。いわゆる、新東西冷戦構造の継続だ。さらに、EV(電気自動車)の補助金(最大1台当たり7500ドル)の廃止により、EVの普及は計画比「4~5年先送りになる」といわれている。

     これはそもそもEVに出遅れた日本勢にとって、挽回のチャンスになろう。今後、数年間に充電器の設置を加速させ、生産面ではアイシン <7259> [東証P]、リョービ <5851> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]の技術力を総動員、ギガキャスト、eアクスル、全固体電池を導入し、劣勢奪回を狙う。

     すなわち、トランプ次期政権の政策は日本の自動車メーカーに時間的な余裕を与えてくれることになる。そして、4年後には再び環境にやさしい民主党政権が登場しよう。そう、常に波乱はチャンスである。移民規制は人手不足につながる。ボーイング<BA>はストライキに加え、4年間で38%の賃上げに「耐えられない」と、決断を余儀なくされている。

     すなわち、 ロボットの導入だ。ファナック <6954> [東証P]、安川電機 <6506> [東証P]の対米ロボット輸出が急増している。すでに、北米向けの輸出額は中国向けを上回っている、という。ロボットを動かすにはソフトが必要だ。豆蔵デジタルホールディングス <202A> [東証G] のソフトはAI(人工知能)を軸とする。

    ●自動運転、研究開発投資が加速する!

     閣僚人事ではSEC(米証券取引委員会)の次期委員長にポール・アトキンス氏を指名した。暗号資産(仮想通貨)推進論者だ。コインベース・グローバル<COIN>が人気を集め、日本市場ではマネックスグループ <8698> [東証P]が大商いとなっている。NASA(米航空宇宙局)の長官にはジャレッド・アイザックマン氏が就任する。

     彼はイーロン・マスク氏率いるスペースXの宇宙船に搭乗、民間人だけの地球周回飛行を行った経験がある。2人は親友だ。イーロン・マスク氏がトランプ陣営に参加したのは宇宙開発、そしてテスラ<TSLA>による 自動運転、無人タクシーの推進に大統領の支援を得たい、というのが狙いだろう。無人タクシー、自動運転はアメリカが先行することになろう。

     これこそが「偉大なアメリカ再構築」の基盤となるデファクト・スタンダード(事実上の国際標準)の獲得である。暗号資産もそうだ。トランプ次期政権は自動運転分野の規制緩和を断行するだろう。日本企業ではトヨタ自動車 <7203> [東証P]とNTT <9432> [東証P]が車載ソフトウェアの開発で提携している。

     このプロジェクトには売上高の3割をトヨタグループが占めるシステムリサーチ <3771> [東証P]が参加すると思う。車載ソフトウェアの更新時に発生する不具合の検知では、日立製作所 <6501> [東証P]がAIにより事前に不具合を発見する自動制御システムを開発中だ。日本企業は先行するのは不得手だが、後を追うのは強い。政府もそうじゃないか。

     トランプ次期政権はR&D(研究開発投資)減税を行う。アメリカ市場では研究開発費が売上高の3分の1を占めるエレクトロニック・アーツ<EA>、同じく研究究開発費のウェイトが高いリフト<LYFT>が話題になっている。日本企業では振動試験機のIMV <7760> [東証S]に注目できる。

     いずれにせよ、アメリカは成長戦略を明確に打ち出すはずだ。これは日本企業にメリットを与えるだろう。ドナルド・トランプ氏と石破茂首相の関係はネガティブだが、来年の参院選後、日本の政治は大きく動くだろう。日米関係が軸である。それをないがしろにする政権(中国シフト)の行く末は知れている。2025年は新たな上昇相場のスタートになろう。

    2024年12月6日 記

    株探ニュース