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    2026年6月24日 10時00分

    スペースXとFRB、2大イベント通過後に狙う特選「掘り出し銘柄」<小川浩一郎・米国株"上昇のナラティブ">

    ◆未来の業績予想をもとに株価が形成されるスペースX

     今回は市場の注目を集めた2つのイベント、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)<SPCX>の上場とケビン・ウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)新議長による初会合となったFOMC(米連邦公開市場委員会)について述べていきたい。

     まず、6月12日(現地時間、以下同)に ナスダックに上場したスペースXについて。史上最大規模のIPO(新規株式公開)と騒がれた同社の上場劇だが、公開価格135ドルに対して初値は150ドルを記録。その後はハイ・ボラティリティ(株価変動率)な展開ながらも150ドル以上の水準を維持している。実績PSR(株価売上高倍率)は125倍超と、とんでもない数値となっていて、早くもメディアなどでは、いくらなんでも割高ではないかという声が上がっている。

     果たしてスペースX株は本当に割高なのだろうか。結論から言えば、決してそんなことはない。むしろ理論的には割安とさえ言える。なぜなら、同社のような成長企業の場合、今期や来期といった近い将来ではなく、一定期間を置いた未来の業績予想をもとに株価が形成されるものだからだ。

     分かりやすい例で言えば、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに移籍した時の大谷翔平選手の評価を思い出して欲しい。おそらく、エンゼルスは北海道日本ハムファイターズでの大谷選手の実績を評価していたわけではない。2年半前のロサンゼルス・ドジャースも同じだ。球団は様々なデータを精査して、真価が未来に発揮されることを見越して相応だと考える年俸を算出しているはずだ。

     スペースXが株式市場から高い評価を受けているのも同様の理屈だ。大谷選手の場合、年俸算出の理論は不明だが、同社の株価については、現在公表されている情報から、現時点での適正株価をある程度、算出することができる。

    ◆スペースXの適正株価は240ドル超、時価総額は3兆ドル超

     算出の根拠はこうだ。同社のIPOの主幹事を務めたゴールドマン・サックス・グループ<GS>とモルガン・スタンレー<MS>はそれぞれスペースXの2030年の売上高予想を算出している。それによるとゴールドマンは4700億ドルの売上高、モルガン・スタンレーは3300億ドルの売上高、平均で4000億ドルの売上高となる。ここに、スペースXが発表している2030年のTAM(到達市場規模)の構成比を当てはめると宇宙開発事業は338億ドル、通信事業は1470億ドル、AI(人工知能)事業は2192億ドルとなる。

     ここから事業ごとの類似企業の数値を当てはめ、最終利益率を算出してみる。宇宙開発ではスペースXに次ぐ小型ロケット打ち上げ実績を持つロケット・ラブ<RKLB>、通信事業では衛星ブロードバンド大手のASTスペースモバイル<ASTS>、AIでは上場企業で同分野の最大手のアルファベット<GOOG>。各社の2030年のアナリスト予想値を参考にすると、2030年のスペースXは3部門合わせて最終利益が約1600億ドルと算出される。ここに、ビッグテック各社の2030年の平均予想PER(株価収益率)、20倍弱を適用すると、スペースXの時価総額は3兆2000億ドル弱に到達する。これらを株式数から逆算すると株価は240ドル前後の水準になるはずだ。

     もっともこの試算は、大手2行が現在の事業をもとに算出した2030年の業績予測に基づいたもので、控えめな数字でもある。同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は、2030年の売上高目標を1兆ドルと公言しており、今後、積極的にM&A(企業合併・統合)を行っていくはずだ。したがって、適正株価算出の根拠として、最終利益ではなく、フリーキャッシュフローやEBITDA(利払い前・税引前・減価償却前利益)を適用したほうがいいかもしれない。その場合には、適正株価がさらに上昇する。

     もちろん、足もとの同社の株価急騰は需給の要因も大きい。浮動株比率が低い中で、個人投資家の人気が爆発。ナスダック100 などインデックスへの早期採用に伴う機械的な買いや、世界中で人気化している宇宙関連ETF(上場投資信託)への組み込みも確実視されていて、結果として品薄状態が続いている。

     今後、段階的なロックアップ解除によって既存株主が株式を売却し、需給のバランスが崩れる可能性がないとは言い切れない。だが、下値は限定的だろう。何と言っても、トランプ政権下で宇宙関連事業は国策として推進されていて、米国ではかつてのアポロ計画やニューフロンティア計画と同列に捉えられている。その中心である同社は、あらゆる点で政策の後押しを受けることが予想されるからだ。

    ◆ウォーシュFRB新議長の狙いは中間選挙前の利下げ?

     続いてFRBのケビン・ウォーシュ新議長についてだ。6月17日に開催されたFOMCでは、参加者の政策金利見通し(ドットチャート)が年内利下げ1回から利上げ1回に修正され、FRBがタカ派的なスタンスに転向したと伝えられている。だが筆者が思うにこれは、既存のFRB高官の"ガス抜き"のようなもので、彼の真意は別のところにあるのではないかと感じている。

     例えは乱暴かもしれないが、今回のFOMCは猿芝居のようなもの。ウォーシュ氏の本質は、ホワイトハウスという親会社からFRBという子会社に天下った若社長のようなものだ。同氏はFRBの情報発信方法の見直しを表明し、ドットチャートへの自身の予想の提示も見送っている。臨機応変に金融政策を実行するためとのことだが、今後のFRBの金融政策は、市場との対話を重視していたこれまでとは異なり、サプライズの連続になる気がする。

     メインシナリオは米中間選挙までの利下げの実施だ。今後は7月のFOMC、8月下旬に開催されるジャクソンホール会議、さらに9月と10月のFOMCと続くが、インフレ鎮静化の兆候が表れれば、即・利下げという可能性も十分あり得る。つまり、ウォーシュ氏は、株式市場にとってはフレンドリーな議長になるわけだ。

    ◆半導体製造装置の周辺企業にも注目

     2つの大きなイベントを終えた今、年央へ向けての個別銘柄の投資戦略をどのように考えるべきだろうか。まず言えるのは、当面はAI相場の勢いは継続するのではないかということだ。なぜなら、アンソロピック、オープンAIと続く、メガIPOラッシュは、米大手投資銀行にとっては、今後、二度と訪れないかもしれない史上最大の勝負の機会だ。彼らはそれこそ、「死ぬ気」でこれらの銘柄の株価を上げにいく。FRBの動き次第では、中間選挙前の9月前後に大きな調整があるかもしれないが、それも一時的なものだろう。

     そんな中、どのようなセクターや銘柄に資金を振り向けるべきなのか。キーワードになるのは、AI産業内での系列化だ。例えば、かつて大型上場で資金を手にしたメタ・プラットフォームズ<META>が、インスタグラムやワッツアップといった、異なる技術で強みを持つ同業者を買収し、系列化することでグループとしての成長に弾みをつけた。スペースX、アンソロピック、オープンAIもこうした動きに出るのではないか。

     今回、買収のターゲットになるのは、AI開発や半導体、データセンターなど、AIの川上分野ではなく、ソフトウエアやインターネットサービスを展開しているAIの川下分野となるだろう。現在、AIが人々により身近になっていく過程で、3つの潮流の変化があると言われる。対話型から自律型へ、クラウドからエッジへ、学習から推論へという流れだ。メガIPOで獲得した資金で、彼らがこうした領域を押さえにいく。

     とはいえ、目先の話になると、現在のAI・半導体への一極集中の流れはまだしばらくは持続しそうだ。川上中の川上でもある半導体製造装置セクターは、ASMLホールディング<ASML>、アプライド・マテリアルズ<AMAT>やラム・リサーチ<LRCX>、KLA<KLAC>など各社とも、業績が好調で株価も上昇基調にある。これらの企業は改めて説明するまでもないかもしれないが、このセクターには、広くは知られていないが注目したい企業がある。MKS<MKSI>という企業だ。半導体製造装置本体を製造しているわけではないが、大手半導体製造装置メーカーに計測・制御機器、特殊化学品、レーザーシステムなどの部材を製造・販売している。言ってみれば半導体製造装置の周辺企業だ。

     半導体関連では、AI半導体と比べて出遅れ気味のアナログ半導体メーカーにも再注目したい。テキサス・インスツルメンツ<TXN>、オン・セミコンダクター<ON>、アナログ・デバイセズ<ADI>といった企業だが、中でもアナログ・デバイセズは、株価は足もとで伸び悩んでいるが、光半導体の技術に強みを持ち、22期連続増配を続けるなど、地味ながらも投資妙味を感じる。

    ◆大穴を狙うなら、ひと相場が終わった小型原子炉に焦点

     大穴狙いなら、昨年秋に小型原子炉がテーマ物色されたオクロ<OKLO>やニュースケール・パワー<SMR>などの電力関連企業を挙げたい。このセクターの代表格はGEベルノバ<GEV>が真っ先に思い浮かぶが、株価が上昇基調を取り戻した同社は別として、セクターとしてはひと相場終わった感がある。だが期待買いの局面が終わって株価の低迷が続いている両社には、だからこそ、そろそろ注目していいのではないかと感じる。小型原子炉はAIの次のイノベーション分野として、トランプ政権が力を入れる重点領域でもあり、こうした銘柄は何かしらのカタリスト(株価変動のきっかけ)があれば簡単に3倍、4倍に急騰してもおかしくないからだ。

     AIに続くテーマと言えば、量子コンピューターにも同じことが当てはまる。スペースX上場の陰に隠れて、日本ではそれほど大きな話題にはならなかったが、このセクターでは6月4日に上場したクオンティニューム<QNT>に注目したい。米国を代表するコングロマリット企業、ハネウェル・インターナショナル<HON>の量子コンピューティング部門からスピンオフ(企業分離・独立)した企業で、赤字経営ながらも米国での技術的な評価は高く、いつ人気化してもおかしくない。さらにIPO企業では、5月14日に上場したセレブラス・システムズ<CBRS>への期待が高い。同社は一部で"エヌビディア・キラー"とさえ言われているAI半導体メーカーで、同社の半導体は推論性能の高さに定評があり、すでにアマゾン・ドット・コム<AMZN>やオープンAIが採用している。潜在力の高さという点では、今から目を付けておくべき企業だろう。

     他にAI関連では、欧州最大のクラウド・サービス企業、オランダのネビウス・グループ<NBIS>も挙げたい。もとはロシアのIT大手企業からスピンオフした企業で、マイクロソフト<MSFT>やエヌビディア<NVDA>などと提携し、欧州でAIに特化したデータセンター網を構築している。ソフトウエア業界で例えれば独SAP<SAP>のようなもので、クラウド・サービスでは欧州で圧倒的なシェアを持ち、唯一、米国企業に対抗できる存在だ。近年、メディアで時たま報じられる「欧州で大規模なAIデータセンターを整備」といった話題には、この企業がほぼ、絡んでいると考えていい。

     何と言っても2026年12月期のガイダンスで売上高が前年比540%増という急成長を示していて、業績の伸びが際立っている。6月にナスダック100インデックスに採用されたこともあり、足もとで株価が上昇しているが、その独占的な市場シェアを考えてもまだまだ成長余地は高い。

    ◆23時間取引の金融セクター、予測市場ビジネスにも大きな可能性が

     さらにセクターでは金融セクターにも目を向けてみたい。米金融大手各社は、空前のAI投資ブームを受けて業績が絶好調だが、今後のポテンシャルはそこだけではない。今年中にもスタートすると言われている米国株の23時間取引だ。日本ではいまだに大きく報道されていないが、関係者に話を聞くと、彼らは本気で世界中の投資マネーを獲得しようとしている。潜在市場の大きさを考えれば、このセクターの業績拡大は既定路線と言っていい。

     最後にAIを離れて、非常に面白いと感じている企業がある。暗号資産大手として知名度が高いロビンフッド・マーケッツ<HOOD>だ。と言っても同社の注目ポイントは暗号資産ではなく、足もとで業績が急拡大している事業、予測市場ビジネスだ。

     日本では予測市場ビジネスというと、スポーツ賭博のイメージもあって、ネガティブな印象を抱く人も少なくない。だが米国では、近年急成長しているビジネス分野で、市場規模は600億ドルに達し、一説によると2030年には1兆ドル規模にまで拡大する見込みだという。

     そんな中、ロビンフッドは2025年1-3月期に全社の1%だった事業シェアが、2026年1-3月期には10%にまで急成長している。今後は取引所を含めた自前のプラットフォーム整備に乗り出すとのことで、同社の重点分野となるという。予測市場ビジネスがこのまま順調に成長し、市民権を得ていくと考えるならポテンシャルは非常に高い。しかも今年は、サッカーワールドカップに米中間選挙と、このビジネスが注目される機会が増えていく。テーマとしてはまさに、"旬"ではないかと思うのだ。


    【著者】
    小川浩一郎(おがわ・こういちろう)
    岩井コスモ証券投資調査部長/チーフアナリスト

    1967年生まれ。外資系コンサルティング会社で戦略立案、M&Aアドバイザリー等に従事した後、投資ファンドで投資実務や資産運用に携わり、2006年、岩井コスモ証券に入社。現在は米国株式を中心に外国株式に関する業務全般を担当。テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」、インターネット配信「ストックボイス」等に随時、出演。長年の市場分析経験を生かしたストーリー性のある銘柄・セクター分析に定評がある。社団法人・日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士・米国証券アナリスト・有資格者。

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