2025年2月11日 13時00分
【エヌビディア⑥】自動運転、暗号資産…AI革命の本命登場に株式市場が刮目<Buy&Hold STORIES-5->

エヌビディア<NVDA>
第2章Part6
- 第1章 ジェンスン・フアンとは何者か? 海を越えた異才が目指したもの
- 第2章 GPUが最強半導体に変貌した日
- 第3章 生成AIブーム到来! 世界のハイテク産業の盟主に躍進
第2章 GPUが最強半導体に変貌した日
6.自動運転、暗号資産…AI革命の本命登場に株式市場が刮目

※株価単位はドル。株式分割を反映後の修正値
新たに出現した巨大市場、モバイル向け半導体で競争が激化
最先端研究者の間で、GPU(画像処理半導体)の汎用能力の高さが認められ、来るべきAI(人工知能)時代に向けての研究が加速し始めた2010年代。この時期のエヌビディア<NVDA>の足跡を伝えるためには二つの視点が必要かもしれない。まず一つは、ノーベル賞受賞者、ジェフリー・ヒントン達のチームが先導したAI革命の進展と同社をはじめとしたハイテク各社の取り組みについて。もう一つは、パソコンからスマートフォンの時代へと移行するなかで、新たな市場を巡って激しい競争を繰り広げる半導体産業の中での同社事業の推移だ。
二つの視点は、やがて重なっていくのだが、この時期、同社を見ていた多くの株式マーケット参加者やコンシューマーにとって、最先端のAIムーブメントの姿は、まだおぼろげながらにしか現れていない。目に映っていたのは後者の方だろう。
2007年にアップル<AAPL>が「iPhone(アイフォーン)」を発表して以来、ハイテク産業のイノベーションの中心は、それまでのパソコンからスマートフォンなどのモバイル端末へとシフトしていった。半導体にGPUという新たなカテゴリーを築き、この分野でトップシェアを独走していたエヌビディアにも、この大きな時代の変化が押し寄せていた。
まず同社の祖業でもあるGPUを取り巻く環境変化がある。マイクロソフト<MSFT>とともにパソコン時代を生んだ半導体最大手企業インテル<INTC>と、GPUでエヌビディアに次ぐ存在だったATIテクノロジーズを傘下に入れ、自らGPU開発に参入したアドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>が、CPU(中央演算装置)とGPUを統合したチップセットの開発に力を入れ始めたのだ。
この頃、パソコンゲーム市場は拡大を続けていた。エヌビディアも「Xbox」開発などを経て、パソコン向けGPUの開発に力を入れ、当初はインテルやAMDとも協業し、互いのチップをパソコンメーカー向けに供給してきた。だが、両社がGPUの開発にも参入すると、エヌビディアとは競合関係が生じるようになってきた。
インテルとは一時期、お互いの権利を巡り訴訟合戦となったが、2011年に和解し、互いの特許技術を供与し合うことになった。だが、AMDはGPU市場で完全な競合となり、AMDのCPUを搭載するパソコンにエヌビディアのGPUが搭載されることはなくなった。事業への影響は小さくない。
こうした状況もあって、同社はこの時期のハイテク各社がそうであったように、新たに誕生した巨大市場、モバイル向けの製品開発に力を入れていった。09年に発売した「Tegra(テグラ)」は、同社のGPUとアーム(現アーム・ホールディングス<ARM>)のアーキテクチャーで設計されたモバイル端末向けチップセットで、「GeForce(ジーフォース)」に次ぐ主力商品として、特に力を入れた製品だった。
とは言えモバイル端末向けチップ市場は、クアルコム<QCOM>の牙城であり、シェアを拡大するのは至難の業だった。だが「Tegra」の用途はスマートフォンなどの携帯端末に限らず、11年に発売された改良版の「Tegra2」からは、車載のグラフィックボード用としても活用されるようになった。さらに13年に発売された「Tegra4」は、同社が開発した唯一の携帯型ゲーム機、「SHIELD(シールド)」にも搭載され、ゲームユーザー達の話題を呼んだ。ほぼAI企業に変貌したいまの姿からすれば意外な気がするかもしれないが、実は10年前のこの時期、同社はゲーム機にも進出しようとしていたのだ。
ゲーム機への挑戦が大きな成功を収めることはなかったが、改良を重ね性能が進化していく「Tegra」は、2007年に提供を開始したデータセンター向けの「Tesla(テスラ)」とともに、ゲーム用GPU「GeForce」一本足だった同社の製品ラインアップを充実させる効果はあった。これらの製品展開が、AMD製チップとの競合によってパソコン向けGPUの売り上げが伸び悩む中で、業績を安定させたことは確かだ。
この時期の同社の業績は、2014年1月期の売上高41億3000万ドルが16年1月期には50億1000万ドルへと21%増、営業利益は同じく4億9600万ドルから7億4700万ドルへと51%増となった。こうした業績を受け、株価も13年年初の0.31ドル(その後の株式分割反映値、以下同)から15年末には0.82ドルまで上昇。2000年代前半の創業期、そして2010年代後半以降と比べると見劣りするかもしれないが、この時期の同社は、GPUを巡る競争が激化する中でも確実に安定成長は続けていたと言えるだろう。
エヌビディア2014年~2016年の業績推移(単位:1000ドル)
売上高 | (前年比) | 営業 利益 | (前年比) | 営業 利益率 | 最終 利益 | (前年比) | 最終 利益率 | |
2014年1月期 | 4,130,162 | -4% | 496,227 | -23% | 12.0% | 439,990 | -22% | 10.7% |
2015年1月期 | 4,681,507 | 13% | 758,989 | 53% | 16.2% | 630,587 | 43% | 13.5% |
2016年1月期 | 5,010,000 | 7% | 747,000 | -2% | 14.9% | 614,000 | -3% | 12.3% |
先行するグーグルを追い、ハイテク大手のAI開発競争が勃発
もう一つの視点、最先端AI研究の進展と、エヌビディアをはじめとしたハイテク各社の動きを追ってみよう。2012年のAIコンテストにより、ディープラーニングの手法が有効であることが分かり、それまで停滞していた最先端AI研究への注目が一気に高
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