2026年6月19日 13時00分
【米著名投資家⑥】「市場が最も恐れる男」が磨き続ける“逆張り”の極意 デビッド・テッパー(アパルーサ・マネジメント創設者)
<13Fで読み解く米著名投資家の売買戦略>
◆ゴールドマン・サックス「不採用」から始まった、伝説への道
「市場が最も恐れる男」。デビッド・テッパーはウォール街でそう呼ばれる。彼が大規模な買いに動けば株式市場全体が反応し、その発言一つでセクター全体が動く。これほどの影響力を持つ投資家は、現代のヘッジファンド業界においてもそうはいない。
1957年、ペンシルベニア州ピッツバーグの中産階級の家庭に生まれたテッパーは、ピッツバーグ大学で経済学を修め、さらにカーネギーメロン大学でMBA(経営学修士)を取得した。若き日のテッパーは、証券会社でアナリストとして経験を積んだ後、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>の門を叩いた。しかし、最初の応募は「不採用」という屈辱的な結果に終わる。くじけることなく再挑戦したテッパーは見事採用を勝ち取り、同社のジャンクボンド(高利回り債券)部門で頭角を現した。
ゴールドマン時代のテッパーは「不良債権のスペシャリスト」として名を馳せた。倒産寸前の企業の債権を二束三文で買い集め、企業再生後に莫大な利益を得るという手法だ。しかし、昇進を何度も見送られたことに業を煮やし、1993年に5700万ドルの資本金でアパルーサ・マネジメントを創業。この決断がウォール街の歴史を変えることになる。
◆リーマン危機で「年収40億ドル超」、恐怖が生む空前の利益
テッパーの名を不滅にしたのは、2009年の運用成績だ。リーマン・ショック後の金融危機でほぼすべての投資家が市場から逃げ去る中、テッパーは逆に動いた。バンク・オブ・アメリカ<BAC>、シティグループ<C>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>など経営危機に瀕した大手銀行株を、底値に近い水準で大量に買い集めたのだ。
賭けは見事に的中した。米政府による銀行救済が功を奏し、銀行株は急騰。アパルーサは2009年単年で約70億ドルという空前の利益を上げ、テッパー個人の取り分だけで約40億ドルに達した。これはヘッジファンド・マネージャーの年間報酬として史上最高額の一つとして記録されている。
「皆が恐怖で売っているとき、私は貪欲に買う。それだけだ」。テッパーはこの時の一連の取引についてこう語っている。単純に聞こえるが、誰もが「銀行が潰れるかもしれない」と震え上がる局面で、数十億ドルを一気に投じる胆力は並大抵のものではない。この「恐怖を利益に変える能力」こそが、テッパー最大の武器だ。
2012年にも同様の展開が繰り返された。欧州債務危機でユーロ圏崩壊を懸念する声が支配的だった時期に、テッパーは危機の震源となったギリシャやスペインなどの国債や欧州金融株を大量購入。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁の「ユーロを守るためにできることは何でもする」という発言を受けた相場急回復で、再び莫大な利益を手にした。
◆マクロと個別株を縦横無尽に行き来する「全方位型投資家」
それでは、デビッド・テッパー率いるアパルーサの2025年ポートフォリオを「13F」で追ってみよう。2025年を通じて最も目を引くのは、テッパーの「恐れを知らぬ逆張り精神」と「マクロへの鋭い感覚」が同時に現れた第1四半期の布陣だ。ポートフォリオの実に30%というポジションサイズで、ステート・ストリート・スパイダー S&P500 ETF<SPY>のプットオプションを新規で取得し、単独トップに据えた。米国株全体の大規模な下落ヘッジとも読み取れるこの動きは、「市場全体の過熱感」と「政策リスク」への強烈な警戒シグナルだ。2025年初頭の市場環境、すなわちトランプ政権復帰と関税政策への不確実性、そして歴史的な高値圏にある株価などを踏まえれば、テッパーの慎重姿勢はきわめて合理的な判断だったと言えるだろう。
第1四半期の特徴はもう一点ある。2位以下の銘柄が、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)<BABA>、PDDホールディングス<PDD>、JDドット・コム<JD>と、中国テック株で埋め尽くされている点だ。米国株全体をヘッジしながら、中国株には継続して強気姿勢を維持する。米中対立の構図が鮮明になる中で、「米国には慎重、中国には強気」という独自のスタンスを取っていたことがここに浮かび上がる。
第2四半期には大きな変化が起きた。S&P500 ETFのプットが姿を消し、ポートフォリオの顔つきが一変した。ヘッジを外してリスクオンに転じると同時に、ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>への大規模な買い増しに動いたのだ。米国最大の医療保険会社であるユナイテッドヘルスは、CEO(最高経営責任者)の射殺事件と独占禁止法調査という二重の逆風で株価が急落していた局面だった。誰もが敬遠する「問題株」を底値圏で拾うというテッパーのDNAが、ここでも発揮された格好だ。また、4位と5位にビストラ<VST>とNRGエナジー<NRG>という電力株が並んでいる点も見逃せない。AI(人工知能)データセンターの爆発的な電力需要増というカタリスト(株価変動のきっかけ)を見据えたポジションと読むことができる。
第3四半期の最大のサプライズは、ワールプール<WHR>の電撃的な大量取得だ。白物家電の老舗として競争激化や原材料費上昇に苦しみ、株価が数年来の安値圏に沈んでいた同社は、いかにも「問題児」的な銘柄だ。しかしテッパーの目には、ブランド資産と世界的な販売網を持ちながら不当に安く放置された「不良債権的割安株」として映ったのだろう。不良債権投資で鍛えた眼力が、ここでも生きている。
第4四半期では、ワールプールとユナイテッドヘルスがトップ5から姿を消し、マイクロン・テクノロジー<MU>とメタ・プラットフォームズ<META>が新たにランクインした。マイクロンへの大規模な買い増しは、AI半導体需要、とりわけHBM(広帯域メモリ)の需要急増を見据えた動きと解釈できる。エヌビディア<NVDA>のGPU(画像処理半導体)と並ぶAIインフラの「もう一つの主役」として、テッパーがマイクロンに白羽の矢を立てたのは、まさに「割安なAI関連銘柄」という彼好みの条件を満たしていたからだろう。メタへの大幅買い増しも同様に、広告収益とAIインフラ投資の両輪を持つプラットフォーム企業への傾倒を示している。
そして何より、1年を通してアリババが個別銘柄として首位の座を守り続けた事実は重い。米中貿易摩擦、規制リスク、地政学的緊張など数々の逆風にさらされながら、テッパーは中国最大のテック企業への信念を曲げなかった。株数こそ四半期ごとに減少しているが、それはリスク管理上の段階的な調整であり、保有そのものへの姿勢は「強気継続」と読むべきだろう。
2025年のアパルーサの株式の総評価額は83億ドルから69億ドルへと減少した。しかし、これはS&P500 ETFのプットという大型ヘッジポジションの解消と、市場全体の調整局面を反映したものであり、テッパーの運用哲学そのものが揺らいでいるわけではない。米国市場への慎重姿勢と中国・AI関連銘柄への強気姿勢を同時に体現した2025年のポートフォリオは、テッパーらしい「マクロと個別を縦横無尽に操る」スタイルの真骨頂を見せてくれた1年だったと言えよう。
◆「恐怖を利益に変える男」の次なる標的はどこか
ここまで、デビッド・テッパーの投資哲学と2025年のポートフォリオの変遷を追ってきた。ゴールドマン時代の不良債権投資で磨かれた「誰もが嫌う割安株を買う」という原点は、30年以上を経た今も、そのDNAとして脈々と生き続けている。
ユナイテッドヘルスへの急落局面での参入、ワールプールへの逆張り、マイクロンへのAI関連の割安株投資。いずれも「市場の恐怖と誤解が生み出した歪み」を狙い撃ちにしたものだ。加えてS&P500種指数へのプットという大胆なマクロヘッジを使いこなし、中国テック株への強い信念を維持する。こうした複眼的なアプローチは、テッパーが「全方位型投資家」として完成の域にあることを示している。
米中対立が続き、AIが産業構造を塗り替え、金融政策の転換点が近づく2026年。「市場が最も恐れる男」の鋭い嗅覚は、今この瞬間も、次なる「恐怖の中の機会」を静かに嗅ぎ分けているに違いない。本連載では引き続き、アパルーサの「13F」の変化を読み解いていく。
株探ニュース
辣腕ヘッジファンド・マネージャーにしてNFL人気チームオーナーでもあるデビッド・テッパー(©AP/アフロ)
◆ゴールドマン・サックス「不採用」から始まった、伝説への道
「市場が最も恐れる男」。デビッド・テッパーはウォール街でそう呼ばれる。彼が大規模な買いに動けば株式市場全体が反応し、その発言一つでセクター全体が動く。これほどの影響力を持つ投資家は、現代のヘッジファンド業界においてもそうはいない。
1957年、ペンシルベニア州ピッツバーグの中産階級の家庭に生まれたテッパーは、ピッツバーグ大学で経済学を修め、さらにカーネギーメロン大学でMBA(経営学修士)を取得した。若き日のテッパーは、証券会社でアナリストとして経験を積んだ後、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>の門を叩いた。しかし、最初の応募は「不採用」という屈辱的な結果に終わる。くじけることなく再挑戦したテッパーは見事採用を勝ち取り、同社のジャンクボンド(高利回り債券)部門で頭角を現した。
ゴールドマン時代のテッパーは「不良債権のスペシャリスト」として名を馳せた。倒産寸前の企業の債権を二束三文で買い集め、企業再生後に莫大な利益を得るという手法だ。しかし、昇進を何度も見送られたことに業を煮やし、1993年に5700万ドルの資本金でアパルーサ・マネジメントを創業。この決断がウォール街の歴史を変えることになる。
◆リーマン危機で「年収40億ドル超」、恐怖が生む空前の利益
テッパーの名を不滅にしたのは、2009年の運用成績だ。リーマン・ショック後の金融危機でほぼすべての投資家が市場から逃げ去る中、テッパーは逆に動いた。バンク・オブ・アメリカ<BAC>、シティグループ<C>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>など経営危機に瀕した大手銀行株を、底値に近い水準で大量に買い集めたのだ。
賭けは見事に的中した。米政府による銀行救済が功を奏し、銀行株は急騰。アパルーサは2009年単年で約70億ドルという空前の利益を上げ、テッパー個人の取り分だけで約40億ドルに達した。これはヘッジファンド・マネージャーの年間報酬として史上最高額の一つとして記録されている。
「皆が恐怖で売っているとき、私は貪欲に買う。それだけだ」。テッパーはこの時の一連の取引についてこう語っている。単純に聞こえるが、誰もが「銀行が潰れるかもしれない」と震え上がる局面で、数十億ドルを一気に投じる胆力は並大抵のものではない。この「恐怖を利益に変える能力」こそが、テッパー最大の武器だ。
2012年にも同様の展開が繰り返された。欧州債務危機でユーロ圏崩壊を懸念する声が支配的だった時期に、テッパーは危機の震源となったギリシャやスペインなどの国債や欧州金融株を大量購入。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁の「ユーロを守るためにできることは何でもする」という発言を受けた相場急回復で、再び莫大な利益を手にした。
◆マクロと個別株を縦横無尽に行き来する「全方位型投資家」
それでは、デビッド・テッパー率いるアパルーサの2025年ポートフォリオを「13F」で追ってみよう。2025年を通じて最も目を引くのは、テッパーの「恐れを知らぬ逆張り精神」と「マクロへの鋭い感覚」が同時に現れた第1四半期の布陣だ。ポートフォリオの実に30%というポジションサイズで、ステート・ストリート・スパイダー S&P500 ETF<SPY>のプットオプションを新規で取得し、単独トップに据えた。米国株全体の大規模な下落ヘッジとも読み取れるこの動きは、「市場全体の過熱感」と「政策リスク」への強烈な警戒シグナルだ。2025年初頭の市場環境、すなわちトランプ政権復帰と関税政策への不確実性、そして歴史的な高値圏にある株価などを踏まえれば、テッパーの慎重姿勢はきわめて合理的な判断だったと言えるだろう。
| 【2025年 1Q】総評価額:83億8276万ドル | ||||
| 順位 | 社名<ティッカー> | 評価額 | 保有比率 | 保有株式数(前期比) |
| 1 | S&P500 ETF (Put)<SPY> | 25億1725万ドル | 30% | 450万株(新規) |
| 2 | アリババ・グループ<BABA> | 12億2048万ドル | 15% | 923万株 (↓) |
| 3 | PDDホールディングス<PDD> | 5億1718万ドル | 6.2% | 437万株 (↓) |
| 4 | アマゾン・ドット・コム<AMZN> | 4億7755万ドル | 5.7% | 251万株 (→) |
| 5 | JDドット・コム<JD> | 3億3101万ドル | 3.9% | 805万株 (↓) |
| 【2025年 2Q】総評価額:64億4896万ドル | ||||
| 順位 | 社名<ティッカー> | 評価額 | 保有比率 | 保有株式数(前期比) |
| 1 | アリババ・グループ<BABA> | 8億0149万ドル | 12% | 706万株 (↓) |
| 2 | ユナイテッドヘルス・グループ<UNH> | 7億6432万ドル | 12% | 245万株(↑↑) |
| 3 | アマゾン・ドット・コム<AMZN> | 5億9235万ドル | 9.2% | 270万株 (↑) |
| 4 | ビストラ<VST> | 3億4885万ドル | 5.4% | 180万株 (↓) |
| 5 | NRGエナジー<NRG> | 3億1794万ドル | 4.9% | 198万株 (→) |
| 【2025年 3Q】総評価額:73億8358万ドル | ||||
| 順位 | 社名<ティッカー> | 評価額 | 保有比率 | 保有株式数(前期比) |
| 1 | アリババ・グループ<BABA> | 11億5280万ドル | 16% | 645万株 (↓) |
| 2 | アマゾン・ドット・コム<AMZN> | 5億4892万ドル | 7.4% | 250万株 (↓) |
| 3 | ワールプール<WHR> | 4億3230万ドル | 5.9% | 550万株(↑↑) |
| 4 | エヌビディア<NVDA> | 3億5450万ドル | 4.8% | 190万株 (↑) |
| 5 | アルファベット Class C<GOOG> | 3億3792万ドル | 4.6% | 138万株 (↓) |
| 【2025年 4Q】総評価額:69億2502万ドル | ||||
| 順位 | 社名<ティッカー> | 評価額 | 保有比率 | 保有株式数(前期比) |
| 1 | アリババ・グループ<BABA> | 7億5311万ドル | 11% | 513万株 (↓) |
| 2 | アルファベット Class C<GOOG> | 5億6073万ドル | 8.1% | 178万株 (↑) |
| 3 | アマゾン・ドット・コム<AMZN> | 5億0304万ドル | 7.3% | 217万株 (↓) |
| 4 | マイクロン・テクノロジー<MU> | 4億2811万ドル | 6.2% | 150万株(↑↑) |
| 5 | メタ・プラットフォームズ<META> | 3億9605万ドル | 5.7% | 60万株(↑↑) |
※保有株式数の前期比は5%未満の増減は→、5%~50%の増減は↑↓、50%以上の増減は↑↑・↓↓で表現。
第1四半期の特徴はもう一点ある。2位以下の銘柄が、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)<BABA>、PDDホールディングス<PDD>、JDドット・コム<JD>と、中国テック株で埋め尽くされている点だ。米国株全体をヘッジしながら、中国株には継続して強気姿勢を維持する。米中対立の構図が鮮明になる中で、「米国には慎重、中国には強気」という独自のスタンスを取っていたことがここに浮かび上がる。
第2四半期には大きな変化が起きた。S&P500 ETFのプットが姿を消し、ポートフォリオの顔つきが一変した。ヘッジを外してリスクオンに転じると同時に、ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>への大規模な買い増しに動いたのだ。米国最大の医療保険会社であるユナイテッドヘルスは、CEO(最高経営責任者)の射殺事件と独占禁止法調査という二重の逆風で株価が急落していた局面だった。誰もが敬遠する「問題株」を底値圏で拾うというテッパーのDNAが、ここでも発揮された格好だ。また、4位と5位にビストラ<VST>とNRGエナジー<NRG>という電力株が並んでいる点も見逃せない。AI(人工知能)データセンターの爆発的な電力需要増というカタリスト(株価変動のきっかけ)を見据えたポジションと読むことができる。
第3四半期の最大のサプライズは、ワールプール<WHR>の電撃的な大量取得だ。白物家電の老舗として競争激化や原材料費上昇に苦しみ、株価が数年来の安値圏に沈んでいた同社は、いかにも「問題児」的な銘柄だ。しかしテッパーの目には、ブランド資産と世界的な販売網を持ちながら不当に安く放置された「不良債権的割安株」として映ったのだろう。不良債権投資で鍛えた眼力が、ここでも生きている。
第4四半期では、ワールプールとユナイテッドヘルスがトップ5から姿を消し、マイクロン・テクノロジー<MU>とメタ・プラットフォームズ<META>が新たにランクインした。マイクロンへの大規模な買い増しは、AI半導体需要、とりわけHBM(広帯域メモリ)の需要急増を見据えた動きと解釈できる。エヌビディア<NVDA>のGPU(画像処理半導体)と並ぶAIインフラの「もう一つの主役」として、テッパーがマイクロンに白羽の矢を立てたのは、まさに「割安なAI関連銘柄」という彼好みの条件を満たしていたからだろう。メタへの大幅買い増しも同様に、広告収益とAIインフラ投資の両輪を持つプラットフォーム企業への傾倒を示している。
そして何より、1年を通してアリババが個別銘柄として首位の座を守り続けた事実は重い。米中貿易摩擦、規制リスク、地政学的緊張など数々の逆風にさらされながら、テッパーは中国最大のテック企業への信念を曲げなかった。株数こそ四半期ごとに減少しているが、それはリスク管理上の段階的な調整であり、保有そのものへの姿勢は「強気継続」と読むべきだろう。
2025年のアパルーサの株式の総評価額は83億ドルから69億ドルへと減少した。しかし、これはS&P500 ETFのプットという大型ヘッジポジションの解消と、市場全体の調整局面を反映したものであり、テッパーの運用哲学そのものが揺らいでいるわけではない。米国市場への慎重姿勢と中国・AI関連銘柄への強気姿勢を同時に体現した2025年のポートフォリオは、テッパーらしい「マクロと個別を縦横無尽に操る」スタイルの真骨頂を見せてくれた1年だったと言えよう。
◆「恐怖を利益に変える男」の次なる標的はどこか
ここまで、デビッド・テッパーの投資哲学と2025年のポートフォリオの変遷を追ってきた。ゴールドマン時代の不良債権投資で磨かれた「誰もが嫌う割安株を買う」という原点は、30年以上を経た今も、そのDNAとして脈々と生き続けている。
ユナイテッドヘルスへの急落局面での参入、ワールプールへの逆張り、マイクロンへのAI関連の割安株投資。いずれも「市場の恐怖と誤解が生み出した歪み」を狙い撃ちにしたものだ。加えてS&P500種指数へのプットという大胆なマクロヘッジを使いこなし、中国テック株への強い信念を維持する。こうした複眼的なアプローチは、テッパーが「全方位型投資家」として完成の域にあることを示している。
米中対立が続き、AIが産業構造を塗り替え、金融政策の転換点が近づく2026年。「市場が最も恐れる男」の鋭い嗅覚は、今この瞬間も、次なる「恐怖の中の機会」を静かに嗅ぎ分けているに違いない。本連載では引き続き、アパルーサの「13F」の変化を読み解いていく。
◆デビッド・テッパーの投資スタイルとこれまでの足跡については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ、ご参照ください。
アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(前編)―デリバティブを奏でる男たち【14】
アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(後編)―デリバティブを奏でる男たち【14】
アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(前編)―デリバティブを奏でる男たち【14】
アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(後編)―デリバティブを奏でる男たち【14】
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