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    2024年3月21日 19時30分

    進化するメタバース・ビジネス、第2幕の関連有望株を徹底追跡 <株探トップ特集>

    ―官民挙げて取り組みが加速、テーマ性抜群で株式市場でも再注目場面が近づく―

     パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]が運営するディスカウントストア「ドン・キホーテ」に入ったことがない人はどれだけいるだろうか。もちろん近隣に店舗がなく、訪れたことのない人もいるだろうが、その知名度の高さは言うまでもない。そんなドン・キホーテだが、インターネット上の仮想空間である「メタバース 」に実は「METAドンキ」が公開されているのだ。メタバースは気付かぬうちに我々の日常に浸透しつつある。今や地方公共団体から超老舗企業まで、取り組みが加速しているメタバース関連に焦点を当ててみたい。

    ●テック系一大テーマ「メタバース」は現在進行形

     米アップル<AAPL>のMR(複合現実)ヘッドマウントディスプレー「Apple Vision Pro」が2月に米国で発売されてから、既に1カ月以上が経過した。我々が昔から夢想していたようなデジタル体験を提供する「未来のデバイス」がついに現実のものとなったが、SNS、ユーチューブ、ネット記事などのさまざまな媒体を通じて、その魅力を目にした投資家も少なくないだろう。やや材料不足で投資熱も一服していた各種テック系のテーマにおいても、「Apple Vision Pro」の登場は技術の進展を明確に肌で感じる良い契機となった。

     さて、テック系分野で「メタバース」は一大テーマと言ってもよい。以前と比べると最近はそれほど頻繁には取り沙汰されていないが、実は投資家の目が離れている間にいろいろな動きが出ている。世間一般では先進的な動きを採り入れるのが苦手とされる地方公共団体においても、「メタバース役所」の実証実験が東京都江戸川区、三重県桑名市で行われている。実際に足を運ぶ必要がある各種手続きがメタバースを活用することで簡略化できれば、社会の在り方も大きく変化する。また、観光用での地方公共団体におけるメタバースへの取り組みは更に多い。

    ●「お茶+メタバース」に福寿園が挑戦

     当然ながら頑張っているのは地方公共団体だけではない。お茶の老舗として多くの人々に知られる福寿園(京都府木津川市)。創業230年超というとてつもない歴史をもつ同社が、お茶をテーマとした「metaCHA 京・山城ワールド」を開発し、今月13日から公開した。メタバース空間でお茶を楽しむことを「metaCHA(メタチャ)」と名付けている。コロナ禍において「Zoom飲み」といった先例も生まれたように、コミュニケーションの一形態として、非常に興味深い動向といえる。

     また、歌舞伎や映画で知られ、長い伝統を紡ぎ続けている松竹 <9601> [東証P]もゲームメタバース事業に参入することを発表した。もちろん事業化という意味で、メタバースにおいては明確に成功を収めているとみなされている企業は現時点ではそれほど多くないかもしれない。しかし、各社が手探りながら新しい未来、新しいサービスに向けて資本を投下する、そうした動きが広がっていることは紛れもない事実である。

    ●動き出した大手企業2社に耳目が集まる

     地方公共団体から民間の老舗企業までメタバースに対する取り組みが加速するなか、気になる2社の動向として住友商事 <8053> [東証P]とKDDI <9433> [東証P]の存在が挙げられる。両社に共通するのはメタバース関連のコンテンツ制作だ。住友商は、米メタバースプラットフォーム「ROBLOX(ロブロックス)」を活用し、メタバースにおけるコンテンツ提供を開始すると発表したばかりだ。日本のクリエイター・制作会社と連携してコンテンツを制作し、そのコンテンツ体験を通じたメタバースならではの消費創出を目指すほか、製品・ブランドなどを世界に向けて発信したい日本企業(主にリテイル分野)などのメタバースコンテンツのプロデュースも行う。

     KDDIは足もとで、monoAI technology <5240> [東証G]、REALITY XR cloud(東京都港区)などと、複数のメタバースプラットフォームが連携した日本最大級のメタバースアライアンス「オープンメタバースネットワーク」を立ち上げた。企業・自治体がメタバースの事業活用を検討する際に、単独メタバース利用に加え、複数のメタバースをつなぐことや、リアル空間を取り入れた立体的な施策立案が可能で、コンサルティングからイベント企画や空間コンテンツ制作まで一気通貫で提供するという。

     メタバースに関心を高める企業が増えるなかで、それを支援する制作側のビジネスにも広がりが出ている。両社以外にも新たなビジネステリトリーへの挑戦の動きが相次いでいる。改めて「メタバース」分野に舵を切る企業群にスポットライトを当てたい。プラットフォームやメタバース空間の制作に関わっている企業を中心に、これらを活用したサービスを提供している企業を取り上げた。

    ●ここから要注目のメタバース関連企業

    ◆NEC <6701> [東証P]~2023年11月、米マイクロソフト<MSFT>のセキュアな環境で利用できるメタバースソリューション「Microsoft Mesh」を利用し、バーチャルエクスペリエンスセンターを開発。没入体験型のXRコンテンツを実装していく予定にある。同センターを活用することで国内外や時間を問わず企業は顧客を案内できるほか、物理的に展示が困難な製品の内部構造や大型設備の再現も可能となる。

    ◆サイバーエージェント <4751> [東証P]~23年11月、AI事業本部において3DCGを活用し、企業の販促活動を支援するバーチャルストアの開設・運営サービスを開始した。企業は自社のWebサイトやECプラットフォーム内に設置するメタバース商空間の企画・制作をはじめ、集客コンテンツやデータに基づいた運用まで一気通貫で実施が可能となる。今後はAIと有人によるハイブリッドなバーチャル接客や、ボディスキャンデータを活用したバーチャル試着などの新しい購買体験ができるバーチャルストアの運営を行う予定。

    ◆TOPPANホールディングス <7911> [東証P]~傘下のTOPPANが21年12月から提供している複数のバーチャル店舗を集約した「メタパ」をベースに、企業独自のメタバースとして利用できるOEM版「Powered by Metapa」を今月14日から提供を開始した。これまでは定型の機能のみだったが、同サービスは企業の要望する機能を実装することができる。

    ◆monoAI technology <5240> [東証G]~ゲーム開発などで培った大規模通信技術とAI技術をコアとして、メタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を提供する。23年9月には5億人以上のユーザー数を誇る人気オンラインゲーム「フォートナイト」上に、同社独自のメタバース空間「MONOAI TECHDEMO WORLDS」を公開。また前述のように今月には、KDDIなどと連携し、企業・自治体の課題に応じた最適なメタバースを提供する「オープンメタバースネットワーク」を発足。同社はウェブメタバースの空間制作を担う。

    ●このほかマークしたい有望銘柄が目白押し

     このほかにも意外な企業がメタバース分野に注力の構えをみせている。商業施設などの空間設計を手掛けている船場 <6540> [東証S]は、富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]が2月に公開した、写真愛好家向けWebメタバース「House of Photography in Metaverse」において、空間デザイン、アバター及びプロモーション動画の制作を行った。

     テックファームホールディングス <3625> [東証G]のグループ会社で、VRやAIなどの研究開発を行っているギャラクシーズは、現実とバーチャルを一体化させた仮想空間を構築する技術を開発。また、CRI・ミドルウェア <3698> [東証G]は、メタバース空間で数千人規模のボイスチャットを実現する「CRI TeleXus」を手掛ける。ソリューションを取り入れてサービスを提供しているところでは、野村不動産ホールディングス <3231> [東証P]が、住まい相談が可能な「PROUD METAVERSE SALON」を提供。JR東日本 <9020> [東証P]は、バーチャル空間「Virtual AKIBA World」にてTVアニメ「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」とのタイアップ企画を実施。バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]も、「ガンダムメタバースプロジェクト」を期間限定で行い話題を提供している。

    株探ニュース