2023年12月31日 13時00分
―Buy&Hold STORIES―広島証券取引所発、“100倍高” ファーストリテイリング①
ファーストリテイリング<9983>
第1章Part1
ユニクロ1号店 (c)FIRST RETAILING
バイ・アンド・ホールド (Buy and hold) こそ投資の王道と人は言う。
しかし、数年先、数十年先まで保有する価値がある企業を、いまこの時に知るにはどうすればいい?
結果が出るまでに長い歳月のかかる長期投資の成功に向かって出発するには、歴史から学ぶしかない。
Buy and hold STORIESは、株式市場にあまたある長期成長企業の物語から、これから長期投資に乗り出す投資家のためのケーススタディを読み取っていく。
第1回は、広島証券取引所への上場から出発し、日本の失われた30年の時代に世界企業への道を歩み、上場初値からの株価上昇率が100倍を超えたファーストリテイリング<9983>を取り上げる。
- 第1章 地方紳士服店がフリースブームを巻き起こすまで
- 第2章 「しょせんブームに過ぎなかったのか?」~迷走と試練の日々
- 第3章 「私たちが売るのはLife Wear」 世界企業への道
Part1:広証上場、初値は公募価格の2倍に
「100倍株は一日にして成らず」株価チャートの裏にある企業ドラマ
2023年5月23日、ファーストリテイリング<9983>株は前日比230円高となり、終値ベースの上場来高値を3万4300円まで切り上げた。最高値を更新し続けているファーストリテイリングだが、この日の終値には象徴的な意味があった。上場初値からの上昇率が100倍を超えたのだ。
同社のIPOは1994年7月24日。上場市場は今はなき広島証券取引所。公募価格は7200円で、上場初日は注文殺到で値つかず。2日目に1万4900円の初値をつけた。その後の株式分割を反映した公募価格は165円、初値は342円。2023年5月23日の終値は、公募価格からは208倍、初値からは100倍にあたる。
地方証券取引所への、全国的にはまだ無名の存在だった一アパレル企業の上場にもかかわらず、公募価格の倍で初値をつけた事実は、同社がこのころ既に、その存在を知る投資家からは未来を期待される企業だったことを意味している。そして、その期待に対し、ファーストリテイリングは遥かに大きく上回るものをもたらし続けてきた。
この日、1994年に公募でファーストリテイリング株を入手した投資家、あるいは上場2日目にファーストリテイリング株を購入した投資家のなかに、バイ・アンド・ホールドを貫いて来た者はいただろうか? いたとすれば、彼らは何を目撃してきたのか、何が彼らにホールドの信念を与えたのか。
時計の針を1972年まで戻し、創業者の柳井正が郷里で父が経営する小さな会社を継ぎ、世界的アパレル企業へ歩み始めた原風景をたどる。
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