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    2025年2月21日 10時30分

    デリバティブを奏でる男たち【98】 臆病者には不向きなハイダー・キャピタル(前編)


     前回は2024年にプラス52%もの驚異的なパフォーマンスを記録したヘッジファンド、ディスカバリー・キャピタル・マネジメントを紹介ました。ディスカバリーは、第2回で取り上げたジュリアン・ハート・ロバートソン・ジュニア(Julian Hart Robertson Jr. 1932-2022)が率いたタイガー・マネジメントの出身者、タイガーカブであるロバート・ケネス・シトロン(Robert Kenneth Citrone)が共同創設者です。ディスカバリーは、年間パフォーマンスの変動が大きく、機関投資家からは敬遠されがちです。しかし、長期的に見れば非常に高いリターンを上げており、「年間のブレを気にしないファミリー・オフィスや超富裕層の個人投資家にとっては、むしろ魅力的な投資先と言える」と述べました。

     今回は、このディスカバリーと並び称されるほど年間パフォーマンスの変動が激しいハイダー・キャピタル・マネジメントを取り上げます。

    ◆クオンツを絡めたグローバル・マクロ系のヘッジファンド

     ハイダー・キャピタルを創設したのは、サイド・ナジム・ハイダー(Said Nazem Haidar)です。彼は1961年生まれとされ、1979年にハーバード大学に入学し、経済学の学士・修士号を取得しました。その後、シカゴ大学の博士課程に進み、1986年に卒業しています。卒業後は、当時の米名門投資銀行ドレクセル・バーナム・ランバート(1990年に経営破綻) に就職し、先物・オプション部門でクオンツ調査ディレクターを務めました。1989年には、米名門投資銀行だったリーマン・ブラザーズ(2008年に経営破綻) に転職し、クオンツ戦略グループのディレクターに就任します。さらに1994年、クレディ・スイス・ファースト・ボストン(2006年にクレディ・スイスとなり、2023年にUBSグループ<UBS>が救済合併)に移り、債券自己勘定取引の調査責任者を務めました。そして1997年、独立してハイダー・キャピタル・マネジメントを創設します。

     ハイダー・キャピタルはグローバル・マクロ系のヘッジファンドに位置づけられます。実際、同社の公式サイトでは「グローバル・マクロ投資に独自のアプローチを適用し、機会を捉えたトレード戦略を活用する」と説明されています。投資哲学としても「金融市場の変化に適応し、世界経済データ、地政学リスク、財政・金融政策に基づいてポジションを決定する」「高流動性の証券に投資し、変動に迅速に対応できる柔軟性を確保する」とも述べられており、典型的なグローバル・マクロ戦略を採用しているといえます。

     一方で、創設者であるサイド・ハイダーの経歴(デリバティブ、クオンツ、債券取引の専門家)から、金利先物市場においてクオンツ分析を駆使した投資も行っている可能性が高いと考えられます。ハイダー・キャピタルの公式サイトでは「当社の競争力の源泉は、機動力と戦略的な投資機会への集中にある」「学術研究で特定された投資の異常や、実務家が発見した市場の歪みを活用し、長期にわたり安定した超過リターン(アルファ)を獲得してきた」点も強調されています。これらの記述から、投資家としての経験を活かしながら、学術的アプローチも取り入れていると推測されます。具体的には、景気循環や市場の周期的な動きをクオンツ分析によって捉え、投資戦略に活用していると考えられるでしょう。

    (※続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック

    ◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):
    証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。


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