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    2025年6月1日 9時15分

    【杉村富生の短期相場観測】 ─「ヘビは足がなくても木に登る」という!

    「『ヘビは足がなくても木に登る』という!」

    ●ファンダメンタルズよりも値動き重視!

     基本的に、弱気市場なのだろう。これはアメリカ市場のこと。5月28日にはエヌビディア<NVDA>の好決算(2~4月期)の発表、米国際貿易裁判所のトランプ関税に対する「違憲判断」などの材料が出現した。しかし、翌29日のNYダウは117ドル(0.27%)高、 NASDAQ指数は74ポイント(0.39%)高にとどまった。盛り上がりに欠ける。

     もちろん、トランプ関税について政権側は控訴し、最終的に連邦裁判所に上訴する姿勢を示している。徹底的に争う方針だ。国際貿易裁判所の主張は、国際緊急経済権限法(IEEPA)による関税政策を「大統領の権限を越えている」というもの。一連の騒動が逆に、不透明感を増幅した面はある、と思う。

     ただ、再三指摘しているように、国際マネーは「脱アメリカ」の姿勢を鮮明にしている。この背景には関税に守られた高コスト、低生産性のアメリカ経済圏と欧州、アジアを中心とする自由貿易経済圏のデカップリング(経済的分断)の潮流があろう。ブラックロック<BLK>の日本株への強力介入が好例だろう。

     エヌビディアについて、筆者は昨年の夏以降、「戻り売り」の方針だったが、これを撤回する。最先端半導体の中東(輸出解禁)、日本向け輸出増(関税交渉の日本案として半導体製品1兆円購入)に加え、アメリカ国内では データセンター用GPU「ブラックウェル」の需要急増(第1四半期はデータセンター部門が73%増収)が報じられている。

     その恩恵をフルに享受するのはエヌビディアが7%出資しているコアウィーブ<CRWV>だろう。同社はAI(人工知能)特化型の大規模データセンターを展開するインフラプロバイダーだ。主要顧客は「チャットGPT」を開発するオープンAI、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>など。売上高は激増(1~3月期は420%増)している。

    ●コアウィーブの時価総額は7兆円!

     NASDAQ市場上場のコアウィーブは大幅赤字だった。その時価総額は一時7兆円を超えた。さすがに、アメリカ市場である。この時価総額は富士通 <6702> [東証P]、武田薬品工業 <4502> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]を上回る。アメリカ市場では小物扱いだが、けっして「小型株」ではない。まあ、日本株が割安ということか。

     物色面では引き続いて、防衛関連、資源エネルギー、社会インフラ再構築関連セクターがメインとなろう。特に、上下水道の劣化は著しい。政府は耐震化を含めて早急に、下水道の基幹5000キロメートルの集中更新を2030年度までに行う方針である。コンサルタントのNJS <2325> [東証P]、インフラ点検のブルーイノベーション <5597> [東証G]、栗本鐵工所 <5602> [東証P]などにも注目できる。

     半導体関連ではA&Dホロンホールディングス <7745> [東証P]はどうか。先端半導体の測定などに必須の電子ビーム技術に定評がある。走査型電子顕微鏡「CD-SEM」は主要半導体装置メーカーに納入している。株価は2000円絡み。この水準のPERは8.5倍と出遅れが著しい。2026年3月期の配当は10円増の50円とする。

     個別銘柄ではエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(NTT Com)と資本・業務提携を行ったエクサウィザーズ <4259> [東証G]が面白い。NTT Comは第三者割当増資によってエクサウィザーズの自己株式を引き受ける。これによりAIアバターのサービスなど新事業の展開に弾みがつくだろう。ただ、業績面は厳しい状況が続いている。

     これはブルーイノベーション、コアウィーブも同様だ。とはいえ、これまた述べてきたように、今年の干支は巳(ヘビ)、株式市場では「ヘビは足がなくても木に登る」という。材料よりも値動きが評価される場面が多い。コアウィーブがそうだが、あまりファンダメンタルズばかりにこだわっていると、チャンスを逃す恐れがある。

     思惑に視点を当てるとシンクロ・フード <3963> [東証P]、nms ホールディングス <2162> [東証S]、SMN <6185> [東証S]、サーキュレーション <7379> [東証G]、コスモスイニシア <8844> [東証S]などに注目できる。コスモスイニシアのPERは6.8倍、38円配当を計画している。レカム <3323> [東証S]の値動きはきな臭い。

    2025年5月30日 記

    株探ニュース