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    2023年6月14日 11時40分

    自動走行ユニット「Hakobase」で物流の課題解決 Hakobotが挑む「PFMF」とは?

    村上茂久のスタートアップ投資術-新世代アップルの見つけ方-(7)

    【タイトル】村上茂久
    株式会社ファインディールズ代表取締役、GOB Incubation Partners株式会社フェロー、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。大学院の経済学研究科を修了後、新生銀行で証券化、不良債権投資、不動産投資、プロジェクトファイナンス、ファンド投資業務等に従事。2018年より、GOB Incubation Partners株式会社のCFOとして新規事業開発、起業支援、スタートアップファイナンス支援業務等を手掛ける。2021年1月に財務コンサルティング等を行う株式会社ファインディールズを創業。著書に「決算書ナゾトキトレーニング 7つのストーリーで学ぶファイナンス入門」「一歩先の企業・株価分析ができる マンガでわかる 決算書ナゾトキトレーニング」(PHP研究所)がある。

     スタートアップ企業(ベンチャー企業)の市場は年々成長し、2021年に資金調達額が7801億円(1919社)を記録するなど、近年、日本でも盛り上がりを見せています。

     本連載では、株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームである「FUNDINNO」を通じて資金調達を行った企業を毎回取り上げ、スタートアップ企業のビジネスモデルや成長戦略について、これまで、数多くのスタートアップ企業の資金調達支援を行ってきた株式会社ファインディールズ代表取締役の村上茂久さんが考察します。

     村上さんは「スタートアップ企業は情報が少ないものの、調達にあたり、投資家に刺さるポイントがある程度、形式知化されていることも分かってきた」と話します。

     事業が成熟している上場企業とは異なるスタートアップ企業を分析する際、どのような視点が必要とされるのでしょうか。

     今回は、年間約48億個もの宅配便を円滑に運ぶために、カスタマイズ可能で走破性の高い配送ロボット「Hakobase(ハコベース)」を開発する株式会社Hakobotを取り上げ、スタートアップにおいて重要なポイントとなる「市場規模」について解説を行います。

    ラストワンマイルを無人配送するためのロボット「Hakobase」

     今回取り上げるHakobotは宮崎市創業のロボット開発メーカーで、現在は走破性の高い自動走行ユニット「Hakobase」を開発しています。同社には、実業家であり、「ホリエモン」の愛称で知られる堀江貴文氏が取締役として参画していることでも注目を集めています。

     Hakobaseの主な用途は、物流における「ラストワンマイル(顧客に荷物が到達する物流の最後の接点)」を補う自動走行による無人配送です(図表1)。

    図表1 自動走行ユニットHakobase
    【タイトル】

    出所:〈2022年に公道実証実験を予定〉年間約48億個もの宅配便を円滑に運ぶための切り札!カスタマイズ可能で走破性の高い配送ロボットを開発する「Hakobot」


     なぜ、ラストワンマイルを自動走行のロボットで対応する必要があるのでしょうか。その理由は、年々、国内EC(電子商取引)市場が拡大し、貨物輸送量が増えたことで、物流リソースが不足し始めているからです(図表2)。

     事実、配送業界では、運転手の新規雇用が難航しており、2030年には物流需要の約3割が配達できなくなるとの試算があるほどです(出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)。

    図表2 国内のEC市場規模と宅配物の量
    【タイトル】

    出所:〈2022年に公道実証実験を予定〉年間約48億個もの宅配便を円滑に運ぶための切り札!カスタマイズ可能で走破性の高い配送ロボットを開発する「Hakobot」


     それだけでありません。最近では、食品の購入等に不便さを感じる高齢者が都市部でも増えてきています。実際のところ、2020年の調査によれば、自治体の85.9%が「食料へのアクセシビリティ問題」について、「何らかの対策が必要」と認識しています(引用:農林水産省)。

     これら物流の課題に対して、「なんでも載せられる、しっかり運ぶ」をコンセプトに開発されたのが、走破性の高い自動走行ユニット「Hakobase」です。このHakobaseは図表3のように多くの利用用途が考えられています。

    図表3 Hakobase利用用途例
    【タイトル】

    出所:〈2022年に公道実証実験を予定〉年間約48億個もの宅配便を円滑に運ぶための切り札!カスタマイズ可能で走破性の高い配送ロボットを開発する「Hakobot」


    市場規模を見るためのTAM、SAM、SOM

     このように、多くの可能性を秘めたHakobaseですが、ここで注目したいのはHakobaseの市場規模です。スタートアップでは、プロダクトやサービスの市場規模がどれぐらいなのかが極めて重要になります。その際に用いられるのが、TAM、SAM、そしてSOMの3つの指標です(図表4)。

    図表4 TAM、SAM、SOM
    【タイトル】

    出所:「市場規模の考え方と、投資家への伝え方」を参考に作成


     ざっくり説明すると、TAM(Total Addressable Market)とは、市場における実現可能な製品やサービスの総需要を指します。次に、SAM(Serviceable Available Market)は、TAMのうち特定の顧客セグメントの需要を示します。最後のSOM(Serviceable Obtainable Market)は、実際に自社が取得できるSAMの部分のことです。

     このTAM、SAM、SOMの活用例として有名なのが、エアビーアンドビー<ABNB>の初期の投資家向けプレゼンテーション資料です。当時、エアビーアンドビーでは、世界の旅行予約件数をTAMとして19億件と想定しました。そして、その中でオンライン予約件数が全体の28%はあるものと想定して5.3億件と見積もり、このオンライン予約の中から2%のシェアを取ることで、1060万件の需要を取れると見込みました(図表5)。

    図表5 世界の旅行の市場規模
    【タイトル】

    出所:AirBed&Breakfast: Book rooms with locals, rather than hotels


     ここで、仮に1泊70ドルとすると平均で3泊すれば210ドルになります。そのうちの10%を手数料として取れれば、エアビーアンドビーは約20ドルを得られます。つまり、世界中のオンライン予約市場の2%となる1000万件を獲得できれば、2億ドル(1000万件×20ドル)もの収益になるという計算です。

     このように、市場規模をTAM、SAM、SOMに分解することで、将来の収益を算定することができるのです。

     なお、2022年度において、エアビーアンドビーの予約件数は3.9億件となっていることから、当初の予定を大きく上回る成長を遂げていることがわかります(※1)。

    HakobaseのTAMはどう想定されるのか?

     ここまで見てきたTAM、SAM、SOMの中でもとりわけ重要なのがTAMです。実際、メガベンチャーとしてすでに上場をしている有名スタートアップ企業の決算説明資料においても、TAMはよく使われています。

     例えば、昨年上場をして、時価総額2000億円を超えるANYCOLOR <5032> [東証P]でも、決算説明資料ではTAMが使われています。同社は「にじさんじプロジェクト」を中心にVtuberを軸としたエンターテインメント企業です。VtuberのTAMと言われてもピンとこないかもしれませんが、決算説明資料を見れば、同社がいかに大きなTAMをターゲットにしているかがわかるでしょう(図表6)。

    図表6 ANYCOLOR TAM
    【タイトル】
    出所:ANYCOLOR決算説明資料

     同社はVtuberのビジネスを軸に、国内アニメ市場(配信、ライブ、グッズ)1.2兆円、動画広告市場4205億円、国内音楽市場1.4兆円、海外アニメ市場1.2兆円とかなり大きなTAMを想定しているのです。

     このように、TAMをどのように想定しているかによってビジネスの展望も変わってきます。では、Hakobaseはどのように市場規模を想定しているのでしょうか。Hakobotに関するFUNDINNOの株式投資型クラウドファンディングの募集サイトによれば、国内の自律移動型ロボットの市場規模予測としては2023年に560億円と推定されています(図表7)。

    図表7 国内の自律移動型ロボット市場規模予測
    【タイトル】

    出所:〈2022年に公道実証実験を予定〉年間約48億個もの宅配便を円滑に運ぶための切り札!カスタマイズ可能で走破性の高い配送ロボットを開発する「Hakobot」


     今後、規模が拡大していくと予想されますが、まだそれほど大きくはないといえます。一方で、Hakobaseがターゲットとする需要の市場規模で見るとどうでしょうか。例えば、以下が考えられます。

    ・物流業界 38兆円(※2)
    ・物販系分野BtoC-EC市場規模 13.2兆円(EC化率8.78%)(※3)
    ・フードデリバリー市場 7754億円(※4)

     上記はあくまで、市場規模の一例であり、図表3で見たように、Hakobaseの利用可能性は多岐にわたります。すなわち、それだけ多くのTAMが見込めるということなのです。

    未来の市場に適応させるプロダクトフューチャーマーケットフィット

     今回は、自動走行ユニット「Hakobase」を事例に、スタートアップにおける重要な論点である市場規模について見てきました。スタートアップの文脈において、「市場」と関連するキーワードとして重要なのは、連載第1回目でも取り上げた「プロダクトマーケットフィット」(Product Market Fit=PMF)です。

     PMFとは、プロダクトやサービスが市場に受け入れられる状態であることを言います。このPMFの手前は言ってみれば、未知であるプロダクトやサービスの「価値」の検証期間であり、PMFを達成することで価値があることが示され、次に「成長」の検証に進むことができます。

     ここで出てくるPMFの「M」がマーケットであり、まさに今回取り上げたTAM、SAM、SOMのことなのです。

     一方で、こんな疑問も出てくるかもしれません。「新しいプロダクトやサービスというのはそもそも、まだ市場が小さい可能性もある。そのような中で、市場規模の算定にどれほど意味があるのか」。

     言われてみれば確かにそのとおりです。ですが、これまで大きな成長を遂げてきたプロダクトやサービスというのは、多くの場合、既存の市場に適応させるのではなく、潜在市場に適応させる「プロダクトフューチャーマーケットフィット」(Product Future Market Fit=PFMF)を達成してきています。つまり、未来の市場にフィットするプロダクトやサービスを生み出してきたのです。

     具体的には、スマートフォンがまだ普及する前にサービスが開始されたエアビーアンドビー<ABNB>やウーバー・テクノロジーズ<UBER>等はその最たる例です。ネットフリックス<NFLX>も創業当初はDVDの宅配レンタルが主業でしたが、動画市場が普及する前の2000年代中盤に、動画のストリーミングサービスに舵を切っています。

     日本においても、メルカリ <4385> [東証P]はスマートフォンで使用する前提のサービスになっていますが、スマートフォンが普及する前提で、CtoCやシェアリングという概念がそれほど浸透していない頃から、サービスが開発されていたといえます。

     このように、市場がまだ十分に発達していなくとも、今後、市場が大きくなることを見越してプロダクトやサービスを開発し、市場が追いついてきた頃に一気にシェアを獲得していくのがPFMFなのです。

     今回取り上げたHakobaseはまさに、未来の市場にフィットするように今から開発されていると考えることができます。物流のリソース不足という大きな課題に対して、今後、ロボット走行の技術が不可欠になることは間違いないでしょう。そのような未来の市場において、HakobaseはPFMFできるよう、現在、新規事業開発をしていると考えられます。

     直近では、Hakobotは2023年4月、名古屋大学河口研究室と共同研究結果の報告もしています(※5)。今後のHakobaseの新規事業開発と自動走行ロボットを活用した潜在市場規模の拡大にぜひ注目してみてください。

    (※1)出所:Airbnb, Inc. FORM 10-K


    (※2)出所:国土交通省「物流を取り巻く動向について」


    (※3)出所:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」


    (※4)出所:「<外食・中食 調査レポート>2022年計、外食・中食売上はコロナ前2019年比10.4%減、デリバリー市場規模は7754億円で前年比1.6%減」


    (※5)「自動配送ロボットを開発する「Hakobot」と「名古屋大学 河口研究室」共同研究結果報告のお知らせ」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000035462.html



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