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    2024年6月2日 14時00分

    【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─慎重な会社計画の織り込みが進展、AI半導体関連・地銀株などに注目!

    「慎重な会社計画の織り込みが進展、AI半導体関連・地銀株などに注目!」

    ●3月期決算は無難に通過、株主還元に前向きなトレンド続く

     6月の東京株式市場は引き続き、もみ合いが基本の展開となりそうだ。

     米国ではソフトランディング期待で5月中旬に主要3指数が最高値を付けたものの、直近では再度金利の高止まりを警戒する展開になっている。秋口の利下げを予想する向きがある一方で、依然として強い経済指標を気にする向きが多い。今月は米雇用統計などでセンチメントに変化が出るかがポイントとなる。

     国内では、企業業績の会社予想の慎重さを織り込んでいる。ただ、好決算企業には買い余地もあり、下値は限定的となるだろう。

     日経平均株価の予想レンジは3万7000円~3万9500円程度と予想する。テクニカル的には4月19日の安値3万7068円(終値ベース)が下値のメドとして意識される。仮に割り込むと、下げが一時的に加速する可能性もある。

     米国の注目スケジュールは、7日に雇用統計、12日にFOMC(米連邦公開市場委員会)の金融政策結果発表、消費者物価指数(CPI)、13日に卸売物価指数(PPI)、18日に小売売上高など。FOMCでの政策変更はないとの見方が圧倒的だが、出席者の今後の金利見通しが重要だ。欧州ではECB(欧州中央銀行)理事会が6日に開催される。利下げの実施があるかに関心が高い。

     日本では、14日に日銀金融政策決定会合の結果発表がある。政策変更はないとみられるが、国内長期金利は一時1.1%を付け、およそ13年ぶりの高水準となっている。こちらも先行きの見方について方向性が出るのか。当日の植田総裁の会見内容も注目されそうだ。14日は先物・オプションの特別清算指数算出(SQ)に該当する。裁定取引残高や建玉が特に多いということはないが、SQ週の火・水曜日にボラティリティ(株価変動率)が高まりやすい傾向があり、注意は必要だ。

     3月期本決算は無難にこなした感がある。東証プライム全社ベースの25年3月期の純利益予想は前期比4%減益程度とみられる。日経平均株価(225銘柄で構成)の1株利益は決算発表の集中期間入り直前の4月23日は2281円だったが、通過後の5月16日には2358円とわずかながら上昇した。途中段階では2180円程度まで低下した場面があり警戒された。会社側予想が慎重であることを織り込んできている点は安心材料だ。次は第1四半期時点での進捗状況を確認することになる。

     今回の決算で業績予想が順調な企業をピックアップすると、ボイラーの三浦工業 <6005> [東証P]、外食大手のゼンショーホールディングス <7550> [東証P]、FA(工場自動化)関連の三菱電機 <6503> [東証P]、百貨店老舗の三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]、SIの野村総合研究所 <4307> [東証P]、AI関連冷却装置のニデック <6594> [東証P]、製薬大手の第一三共 <4568> [東証P]、電線の住友電気工業 <5802> [東証P]などが挙げられる。

     決算と同時に自社株買いや増配を発表した企業も相次いでおり、株主還元に前向きな姿勢に変化はみられなかった。実施を発表した日立製作所 <6501> [東証P]、クレディセゾン <8253> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]、MS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> [東証P]などの評価が継続する可能性がある。

    ●エヌビディア絶好調が照らすAI半導体関連の前途

     注目されたAI(人工知能)半導体大手のエヌビディア<NVDA>の2-4月期決算は事前の高い期待値を上回る好内容だった。5-7月期の売上高見通しはレンジ予想だが、下限でもコンセンサスを上回っている。AI向けGPUは現行モデルの「H100」の好調に加えて拡張版の「H200」、さらに期待の次世代モデル「ブラックウェル」の引き合いの強さも確認されている。

     AI半導体はHBM(広帯域メモリー)の搭載で製造後工程の重要性が増す。HBMはウエハの積層化などで半導体の高性能化に資する。ウエハを薄く削って、通電のために貫通する必要があるが、これに対応するディスコ <6146> [東証P]、後工程装置のTOWA <6315> [東証P]の株価が堅調に推移している。

     エヌビディアの取引先で最終検査装置を手掛けるアドバンテスト <6857> [東証P]や、調達先でHBM対応のパッケージの増産を進めているイビデン <4062> [東証P]などは株価の見直し余地が大きい。

     AIデータセンター向けセラミック部品のMARUWA <5344> [東証P]、HBM普及でメモリー向けに検査用プローブカードの需要が増加している日本マイクロニクス <6871> [東証P]などのビジネスチャンスが拡大しよう。

     バリュー株では、地方銀行株をチェックしたい。10年国債利回りが1%に乗せるなど、金利がつく世界が戻ってきた。利ざやの改善などが期待でき、メガバンクに比べて出遅れ感や割安感もある。千葉銀行 <8331> [東証P]、群馬銀行 <8334> [東証P]、八十二銀行 <8359> [東証P]、ふくおかフィナンシャルグループ <8354> [東証P]、武蔵野銀行 <8336> [東証P]、コンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> [東証P]、九州フィナンシャルグループ <7180> [東証P]などに妙味がありそうだ。

    (5月31日 記/次回は6月30日配信予定)

    ■和島英樹(Hideki Wajima)
    株式ジャーナリスト
    日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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