2024年1月23日 19時30分
国際プロジェクト推進で要注目場面に、「核融合発電」関連株に熱視線 <株探トップ特集>
―「地上に太陽をつくる」SFチックな夢の技術、国策支援により実現への道筋見える―
1985年の米ソ首脳会談をきっかけとして始まった「ITER(イーター)計画」。ITERとは、核融合エネルギーの実現性を研究・実証する「国際熱核融合実験炉」を意味するが、この計画の成果結実の時が刻一刻と近づいている。夢の技術とも称される 「核融合発電」は株式市場でも注目度の高いテーマで、今後関連銘柄に改めて関心が高まりそうだ。
●サム・アルトマン氏も注目の核融合
昨年を代表するホットワードの一つが生成AI(ChatGPT)であることは間違いない。このAIを開発した米オープンAIのCEO(最高経営責任者)であるサム・アルトマン氏の名前もビジネスマンの間では、今やお馴染みとなっている。アルトマン氏に先見の明があることは「ChatGPT」が社会に及ぼした強烈な影響を見れば明らかだ。そんな彼がAIの他に、明確に興味を持っている領域に「エネルギー」が挙げられる。自身は小型モジュール原子炉(SMR)と呼ばれる次世代原発の開発を手掛ける米オクロの会長を務めている。加えて、核融合発電の研究開発を行う米ヘリオン・エナジーに2021年11月には3億7500万ドルもの巨額資金を投じた。
「核融合発電」といえば、SF映画の中でエネルギー源として登場するような夢の技術であり、「地上に太陽をつくる」ようなものとも表現される。字面から既存の 原子力発電と似たような技術だろうと誤解している投資家もいるかもしれないが、核融合発電は「資源が海水中に豊富にある」、「二酸化炭素を排出しない」といった特徴があり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものとして期待されている。
「核分裂」反応を用いる原子力発電とは根本的に違って、暴走が起きにくいほか、その処理で常に悩まされる高レベルの放射性廃棄物は排出されない。日本は、国際条約であるITER協定のもと、超大型国際プロジェクト「ITER計画」を現在推進中だ。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドが協力しているが、同計画において日本は準ホスト国となって主導的立場にある。このことからも、核融合発電は「国策」の一つと呼ぶに値する領域だ。
●そうそうたる国内大手企業が連携体制に
そんな人類の期待を背負う核融合発電だが、アルトマン氏も出資したヘリオン・エナジーが米マイクロソフト<MSFT>と電力供給契約を23年5月に交わしたことを発表した。核融合発電による売電契約はこれが世界初とされている。更に同年9月にヘリオン・エナジーは、鉄鋼メーカーの米ニューコア<NUE>と米国の鉄鋼製造施設に500メガワットの核融合発電所を開発し、炭素ゼロ電力供給で合意したと発表した。もちろんエネルギー源として確固たる地位を確立するといった段階ではないものの、かといって一生実現しないようなはるか未来の超技術という認識も改める時に来ている。東京市場においても核融合発電関連株は要マークのタイミングにあるといってよい。
くしくも、足もとで国内では3月発足を目指して内閣府が主導する核融合産業協議会の発起人が集まっている。同協議会の設立に向けた発起人には、三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、INPEX <1605> [東証P]のほか、三菱商事 <8058> [東証P]、住友商事 <8053> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]の大手商社や、古河電気工業 <5801> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]などの大手電線メーカー、プラント大手の日揮ホールディングス <1963> [東証P]傘下の日揮など錚々(そうそう)たる企業が名を連ねている。これらの企業をはじめとして、核融合発電の技術開発で注目を集める可能性のある銘柄をピックアップした。
●ここからマークしておきたい7銘柄
◆KDDI <9433> [東証P]~環境課題に取り組むスタートアップ企業への出資を行うKDDI Green Partners Fundを通じて、ヘリカル型核融合炉の開発を目指しているHelical Fusion(東京都中央区)に出資。なお、Helical Fusionは東北大学金属材料研究所と共同で、商用核融合炉での利用が期待できる新規の金属材料を開発することに成功している。
◆古河電気工業 <5801> [東証P]~同社とグループの米スーパーパワーは、商業核融合エネルギー開発企業の英トカマクエナジーと、23年1月に核融合エネルギーの推進に向けた関係を強化しており、核融合炉の建設に必要な数百キロメートルに及ぶ量の高温超電導線材を供給している。また、同社はトカマクエナジーへ約1000万ポンドの出資を行うことも今月発表した。
◆フジクラ <5803> [東証P]~高温超電導を用いた世界初の核融合発電の商用化を目指す米コモンウェルス・フュージョン・システムズにレアアース系高温超電導線材を納入している。レアアース系高温超電導線材を採用することで、核融合発電に必要な超電導電磁石を従来よりも小型化することができるという。
◆日揮ホールディングス <1963> [東証P]~22年2月に続き、23年5月に核融合の領域で先進的な技術を有する京都フュージョニアリング(東京都千代田区)へ出資を行った。核融合及び低レベル放射性廃棄物処理など原子力関連分野で培ったエンジニアリング技術を融合させ、核融合研究設備の具体化に貢献していく構え。
◆浜松ホトニクス <6965> [東証P]~100ジュールのパルスレーザーを10ヘルツの高繰り返し周波数で出力することに成功した。この研究成果により、レーザー核融合の実用化における重要なマイルストーンである、1キロジュールのパルスレーザーを10ヘルツで出力する技術の確立に向け前進したとしている。
◆助川電気工業 <7711> [東証S]~熱計測器を手掛けており、次世代原子炉の冷却材などとして利用される溶融金属の試験設備を増強。ITER計画と並行して日本と欧州が共同で実施するプロジェクト「JT-60SA」において、第1期試験から増強作業への移行と液体金属を使用した試験装置の需要が見込まれている。
◆神島化学工業 <4026> [東証S]~レーザー用YAGセラミックスが慣性核融合発電システムのレーザー発振媒体として検討されている。23年12月には、大阪大学レーザー科学研究所と革新的な高平均出力パワーレーザーの開発でカギとなるレーザーセラミックスを開発する協働拠点「神島化学工業先端レーザーセラミックス共同研究部門」を設立。
株探ニュース
1985年の米ソ首脳会談をきっかけとして始まった「ITER(イーター)計画」。ITERとは、核融合エネルギーの実現性を研究・実証する「国際熱核融合実験炉」を意味するが、この計画の成果結実の時が刻一刻と近づいている。夢の技術とも称される 「核融合発電」は株式市場でも注目度の高いテーマで、今後関連銘柄に改めて関心が高まりそうだ。
●サム・アルトマン氏も注目の核融合
昨年を代表するホットワードの一つが生成AI(ChatGPT)であることは間違いない。このAIを開発した米オープンAIのCEO(最高経営責任者)であるサム・アルトマン氏の名前もビジネスマンの間では、今やお馴染みとなっている。アルトマン氏に先見の明があることは「ChatGPT」が社会に及ぼした強烈な影響を見れば明らかだ。そんな彼がAIの他に、明確に興味を持っている領域に「エネルギー」が挙げられる。自身は小型モジュール原子炉(SMR)と呼ばれる次世代原発の開発を手掛ける米オクロの会長を務めている。加えて、核融合発電の研究開発を行う米ヘリオン・エナジーに2021年11月には3億7500万ドルもの巨額資金を投じた。
「核融合発電」といえば、SF映画の中でエネルギー源として登場するような夢の技術であり、「地上に太陽をつくる」ようなものとも表現される。字面から既存の 原子力発電と似たような技術だろうと誤解している投資家もいるかもしれないが、核融合発電は「資源が海水中に豊富にある」、「二酸化炭素を排出しない」といった特徴があり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものとして期待されている。
「核分裂」反応を用いる原子力発電とは根本的に違って、暴走が起きにくいほか、その処理で常に悩まされる高レベルの放射性廃棄物は排出されない。日本は、国際条約であるITER協定のもと、超大型国際プロジェクト「ITER計画」を現在推進中だ。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドが協力しているが、同計画において日本は準ホスト国となって主導的立場にある。このことからも、核融合発電は「国策」の一つと呼ぶに値する領域だ。
●そうそうたる国内大手企業が連携体制に
そんな人類の期待を背負う核融合発電だが、アルトマン氏も出資したヘリオン・エナジーが米マイクロソフト<MSFT>と電力供給契約を23年5月に交わしたことを発表した。核融合発電による売電契約はこれが世界初とされている。更に同年9月にヘリオン・エナジーは、鉄鋼メーカーの米ニューコア<NUE>と米国の鉄鋼製造施設に500メガワットの核融合発電所を開発し、炭素ゼロ電力供給で合意したと発表した。もちろんエネルギー源として確固たる地位を確立するといった段階ではないものの、かといって一生実現しないようなはるか未来の超技術という認識も改める時に来ている。東京市場においても核融合発電関連株は要マークのタイミングにあるといってよい。
くしくも、足もとで国内では3月発足を目指して内閣府が主導する核融合産業協議会の発起人が集まっている。同協議会の設立に向けた発起人には、三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、INPEX <1605> [東証P]のほか、三菱商事 <8058> [東証P]、住友商事 <8053> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]の大手商社や、古河電気工業 <5801> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]などの大手電線メーカー、プラント大手の日揮ホールディングス <1963> [東証P]傘下の日揮など錚々(そうそう)たる企業が名を連ねている。これらの企業をはじめとして、核融合発電の技術開発で注目を集める可能性のある銘柄をピックアップした。
●ここからマークしておきたい7銘柄
◆KDDI <9433> [東証P]~環境課題に取り組むスタートアップ企業への出資を行うKDDI Green Partners Fundを通じて、ヘリカル型核融合炉の開発を目指しているHelical Fusion(東京都中央区)に出資。なお、Helical Fusionは東北大学金属材料研究所と共同で、商用核融合炉での利用が期待できる新規の金属材料を開発することに成功している。
◆古河電気工業 <5801> [東証P]~同社とグループの米スーパーパワーは、商業核融合エネルギー開発企業の英トカマクエナジーと、23年1月に核融合エネルギーの推進に向けた関係を強化しており、核融合炉の建設に必要な数百キロメートルに及ぶ量の高温超電導線材を供給している。また、同社はトカマクエナジーへ約1000万ポンドの出資を行うことも今月発表した。
◆フジクラ <5803> [東証P]~高温超電導を用いた世界初の核融合発電の商用化を目指す米コモンウェルス・フュージョン・システムズにレアアース系高温超電導線材を納入している。レアアース系高温超電導線材を採用することで、核融合発電に必要な超電導電磁石を従来よりも小型化することができるという。
◆日揮ホールディングス <1963> [東証P]~22年2月に続き、23年5月に核融合の領域で先進的な技術を有する京都フュージョニアリング(東京都千代田区)へ出資を行った。核融合及び低レベル放射性廃棄物処理など原子力関連分野で培ったエンジニアリング技術を融合させ、核融合研究設備の具体化に貢献していく構え。
◆浜松ホトニクス <6965> [東証P]~100ジュールのパルスレーザーを10ヘルツの高繰り返し周波数で出力することに成功した。この研究成果により、レーザー核融合の実用化における重要なマイルストーンである、1キロジュールのパルスレーザーを10ヘルツで出力する技術の確立に向け前進したとしている。
◆助川電気工業 <7711> [東証S]~熱計測器を手掛けており、次世代原子炉の冷却材などとして利用される溶融金属の試験設備を増強。ITER計画と並行して日本と欧州が共同で実施するプロジェクト「JT-60SA」において、第1期試験から増強作業への移行と液体金属を使用した試験装置の需要が見込まれている。
◆神島化学工業 <4026> [東証S]~レーザー用YAGセラミックスが慣性核融合発電システムのレーザー発振媒体として検討されている。23年12月には、大阪大学レーザー科学研究所と革新的な高平均出力パワーレーザーの開発でカギとなるレーザーセラミックスを開発する協働拠点「神島化学工業先端レーザーセラミックス共同研究部門」を設立。
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