2025年6月6日 15時19分
AI半導体への追い風、鉄鋼と製造業復活、税制・歳出法案【フィリップ証券】
市場が注目していた米半導体大手エヌビディア<NVDA>の2-4月期決算は、米政府の対中国輸出規制に関する在庫引当金の費用計上といった逆風が重しとなったものの、5-7月期も強気の見通しを維持する好内容だった。その背景には、米国内のAI(人工知能)インフラ整備のための大規模投資計画である「スターゲート計画」に加え、トランプ米大統領による5/13から4日間の中東歴訪によってAI半導体に対する市場の強気スタンスが回復しつつあることがある。
スターゲート計画は、4年間で総額5000億ドルの投資を行い、AI関連のデータセンター(DC)を全米各地に建設する計画だ。生成AIを手がけるOpenAIをはじめ、エヌビディア、マイクロソフト<MSFT>、オラクル<ORCL>、ソフトバンクグループ <9984>、英アームホールディングス<ARM>などが参加する。
トランプ氏は中東歴訪に際し、バイデン前政権が導入した「AI拡散ルール」と呼ばれるAI向け半導体輸出規制を全面的に見直す方針を打ち出した。サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)は、先端半導体へのアクセスを大幅に拡大する見通しとなった。エヌビディアはサウジのAI企業ヒューメインの大規模DCプロジェクト向けに半導体を供給することに加え、UAEではトランプ政権によってエヌビディア製の最先端半導体100万基以上の輸入を認める取引が検討されている。対中国輸出規制リスクを吸収できるだけの投資機会が生み出されている。
トランプ氏は5/30、鉄鋼とアルミニウムの関税を6/4より25%から50%に引き上げると発表。既に貿易摩擦の解消と関税協議の進展を織り込んで上昇してきた株式市場にとってはネガティブな材料ではあるものの、トランプ政権が掲げる「製造業の復活」にとっては意義があると言えるだろう。自動車の鋼板をはじめ、工場の建設を進める上で鉄骨など鉄鋼製品が必要となり、スターゲート計画を進める上でも電力需要を賄うための原子力発電所やDCの建設においても鉄は必要だ。また、トランプ政権が韓国や日本の協力を得て行おうとしている「造船業の再生」においても高品質の鉄が不可欠だ。トランプ政権は、日本に対し日本製鉄によるUSスチール<X>買収案件に伴う巨額の投資に関心を持つほか、UAEの政府系企業ともアルミニウム精錬所プロジェクトの投資計画を協議している。
米国株式市場にとって好材料となり得るスターゲート計画、および製造業の復活に向けたトランプ政策の前に立ち塞がりそうなのが、上院で審議が始まった税制・歳出法案だ。投資家はこの法案によって生じる債務がさらに膨れ上がり、米国債売り(米長期金利上昇)に米ドル売りが伴う「米国売り」が発生する事態を懸念している。政府効率化省(DOGE)による歳出削減の取組みも成果を上げられなかった。6月以降の米国株式市場にとって警戒すべき正念場だろう。
■米国債のCDSは中国・イタリア並み~税制・歳出法案と債務上限問題をクリアできるのか?
米格付会社ムーディーズが5/16、米国債信用格付けを最上位「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。他の米格付け会社も、S&Pグローバルが2011年8月に、フィッチが2023年8月に既に最上位から1段階引き下げていることから市場は冷静に受け止めている。ベッセント米財務長官も「誰が気にするのか」と意に介していない。
ところが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場を見ると、投資家は米国債の信用格付けをもっと低く見ていることがわかる。5年物国債について発行体の信用リスクを表すCDSスプレッドを見ると、米国債は4月以降に上昇。足元では中国国債やイタリア国債と同水準にあり、ドイツ国債、日本国債、英国債に対して劣る。トランプ税制・歳出法案が議会上院で可決した場合のCDSスプレッド動向に要注意だろう。
参考銘柄
コストコホールセール<COST> 市場:COST・・・2025/9/26に2025/8期4Q(6-8月)の決算発表を予定
・1976年創業。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型店舗)を運営し、生鮮・加工食品、家電や自動車関連などを卸売価格で販売する。世界の店舗数は5/11現在で905店舗。Eコマースも展開する。
・5/29発表の2025/8期3Q(3-5月:5/11まで12週間)は、総収益が前年同期比8.0%増の632.05億USD、純利益が同13.2%増の19.03億USD。総収益のうち会費収入は同10.4%増の12.40億USD。ガソリンや為替変動を除いた既存店売上高は8.0%増。うちEコマースは15.7%増収と堅調に推移。
・同社は顧客への利益還元優先で会費収入のみを粗利益の源泉とする方針のため、高インフレで消費者の財布の紐が固くなる局面の価格設定で競合他社より優位性がある。会費収入は2025/8期9M(36週間)が前年同期比8.5%増。5/7発表の4月のガソリン・為替変動除く既存店売上高は前年同月比6%増。うち米国7%増、Eコマース16%増。関税や経済混乱の影響は限定的とみられる。
セールスフォース<CRM> 市場:NYSE・・・2025/8/28に2026/1期2Q(5-7月)の決算発表を予定
・1999年創業のCRM(顧客関係管理)の大手。「セールス」、「サービス」、「マーケティング・コマース」といったクラウド関連業務のほか、企業向けに「セールスフォース・プラットフォーム」を提供する。
・5/28発表の2026/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比7.6%増の98.29億USD(会社予想97.1-97.6億USD)、非GAAPの調整後EPSが同5.7%増の2.58USD(同2.53-2.55USD)。4月末の残存履行義務(RPO)が12%増、調整後粗利益率が0.2ポイント上昇の32.3%。成長性と利益率の両立が進展。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8-9%増の410-413億USD(従来計画405-409億USD)、調整後EPSを同10-11%増の11.27-11.33USD(同11.09-11.17USD)とした。2024年10月に投入した自律型AI(人工知能)アシスタントの有料契約が拡大する中、クラウドデータ管理のインフォマティカ買収(約80億USD)発表を受けて株価が一時下落。利益率の改善に繋がるかどうかが鍵を握りそうだ。
GEベルノバ<GEV> 市場:NYSE・・・2025/7/24に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・2024年3月に複合企業GEからエネルギー事業がスピンオフ。陸上・洋上風力や水力を含む高信頼性の持続可能な電力システムを構築し、発電・送電・制御・変換・貯蔵を行う製品とサービスを提供。
・4/23発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比10.6%増の80.32億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同142%増加。調整後フリーキャッシュフローが前年同期の▲6.61億USDから9.75億USDへ黒字転換。データセンター(DC)ほか電力需要の急増によりガスタービン製品の受注が拡大。
・通期会社計画は、売上高が前期比3-6%増の360-370億USD、調整後フリーキャッシュフローが同18-47%増の20-25億USD。調整後EBITDAマージン成長率が1桁台後半と従来計画を据え置いた。ガスタービン受注残は、1Qに7GW(ギガワット)追加で合計29GWに達した。米国内のAIインフラ整備の大規模投資計画(スターゲート計画)は、4年間で総額5000億USDの投資が見込まれている。
コーニング<GLW> 市場:NYSE・・・2025/7/30に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・1851年創業。世界最大級のガラス製品メーカーであり、液晶ディスプレイ用ガラスパネル、光通信の光ファイバー、ガソリン車排出微粒子制御用のセラミック基板・フィルター製品などが主力製品。
・4/29発表の2025/12期1Q(1-3月)は、非GAAPのコア売上高が前年同期比12.9%増の36.79億USD(会社予想36億USD)、コアEPSが同42.1%増の0.54USD(同0.48-0.52USD)。光通信事業における大企業向け売上は、データセンターで活用の生成AI向け新製品への強い需要を受けて106%増収。
・2025/12期2Q(4-6月)会社計画は、コア売上高が前年同期比7%増の38.5億USD、コアEPSが同17-26%増の0.55-0.59USD。同社は売上比率37%を占める光通信事業がデータセンターにおける生成AI関連に高速データ通信需要の追い風を受けるだけでなく、同25%を占めるディスプレイ事業も、電力需要増に伴う太陽光発電パネルのガラス素材向けで販売量が増加し、販売価格も上昇した。
キーサイト・テクノロジーズ<KEYS> 市場:NYSE・・・2025/8/20に2025/10期3Q)5-7月)の決算発表を予定
・ヒューレット・パッカードから独立したアジレント・テクノロジー<A>の電子計測事業を継承して2014年に設立。無線通信、航空・宇宙・防衛、半導体の各市場向けに電子計測プラットフォームを提供。
・5/20発表の2025/10期2Q(2-4月)は、売上高が前年同期比7.4%増の13.06億USD(会社予想12.7-12.9億USD)、非GAAPの調整後EPSが同20.6%増の1.70USD(同1.61-1.67USD)。売上比率70%の通信ソリューションはAIデータセンターネットワーク向けの新製品の拡大を受けて9%増収だった。
・2025/10期3Q(5-7月)会社計画は、売上高が前年同期比7-9%増の13.05-13.25億USD、調整後EPSが同4-8%増の1.63-1.69USD。通信ソリューション事業は、米国を中心としたAIデータセンター・ネットワークからの需要だけでなく、アジアや欧州における航空・防衛・政府部門からの堅調な需要に支えられている。半導体・製造業顧客の支出縮小への懸念がある中でも業績の安定が見込まれる。
ニューコア<NUE> 市場:NYSE・・・2025/7/22に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・1958年設立。米鉄鋼最大手で世界最大の電炉メーカー。熱延・冷延鋼板、鋼板、構造用鋼、鋼棒の製造を手掛ける。スクラップを電炉で溶かしてリサイクルする業者として、北米最大規模である。
・4/28発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.2%増の72.25億USD、非GAAPの調整後EPSが同77.7%減の0.77USD。営業キャッシュフローは同20.9%減の3.64億USD。販売量(トン)が同10%増の683万トンだったものの、売上原価率が同11.0ポイント上昇の92.3%へ悪化した。
・2025/12期2Q(4-6月)会社計画は、製鉄所(販売価格上昇)、鉄鋼製品(販売量の増加)、原材料の三事業セグメントともに、前四半期比での利益増を見込んでいる。トランプ米大統領は5/30、鉄鋼の輸入関税を25%から50%に引き上げる(6/4に発効)と表明。トランプ米政権は、米国の造船業再生、原発の建設加速を目指しており、鉄鋼業の復活はそれらの政策の基盤になると考えられる。
執筆日:2025年6月2日
※フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース
スターゲート計画は、4年間で総額5000億ドルの投資を行い、AI関連のデータセンター(DC)を全米各地に建設する計画だ。生成AIを手がけるOpenAIをはじめ、エヌビディア、マイクロソフト<MSFT>、オラクル<ORCL>、ソフトバンクグループ <9984>、英アームホールディングス<ARM>などが参加する。
トランプ氏は中東歴訪に際し、バイデン前政権が導入した「AI拡散ルール」と呼ばれるAI向け半導体輸出規制を全面的に見直す方針を打ち出した。サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)は、先端半導体へのアクセスを大幅に拡大する見通しとなった。エヌビディアはサウジのAI企業ヒューメインの大規模DCプロジェクト向けに半導体を供給することに加え、UAEではトランプ政権によってエヌビディア製の最先端半導体100万基以上の輸入を認める取引が検討されている。対中国輸出規制リスクを吸収できるだけの投資機会が生み出されている。
トランプ氏は5/30、鉄鋼とアルミニウムの関税を6/4より25%から50%に引き上げると発表。既に貿易摩擦の解消と関税協議の進展を織り込んで上昇してきた株式市場にとってはネガティブな材料ではあるものの、トランプ政権が掲げる「製造業の復活」にとっては意義があると言えるだろう。自動車の鋼板をはじめ、工場の建設を進める上で鉄骨など鉄鋼製品が必要となり、スターゲート計画を進める上でも電力需要を賄うための原子力発電所やDCの建設においても鉄は必要だ。また、トランプ政権が韓国や日本の協力を得て行おうとしている「造船業の再生」においても高品質の鉄が不可欠だ。トランプ政権は、日本に対し日本製鉄によるUSスチール<X>買収案件に伴う巨額の投資に関心を持つほか、UAEの政府系企業ともアルミニウム精錬所プロジェクトの投資計画を協議している。
米国株式市場にとって好材料となり得るスターゲート計画、および製造業の復活に向けたトランプ政策の前に立ち塞がりそうなのが、上院で審議が始まった税制・歳出法案だ。投資家はこの法案によって生じる債務がさらに膨れ上がり、米国債売り(米長期金利上昇)に米ドル売りが伴う「米国売り」が発生する事態を懸念している。政府効率化省(DOGE)による歳出削減の取組みも成果を上げられなかった。6月以降の米国株式市場にとって警戒すべき正念場だろう。
■米国債のCDSは中国・イタリア並み~税制・歳出法案と債務上限問題をクリアできるのか?
米格付会社ムーディーズが5/16、米国債信用格付けを最上位「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。他の米格付け会社も、S&Pグローバルが2011年8月に、フィッチが2023年8月に既に最上位から1段階引き下げていることから市場は冷静に受け止めている。ベッセント米財務長官も「誰が気にするのか」と意に介していない。
ところが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場を見ると、投資家は米国債の信用格付けをもっと低く見ていることがわかる。5年物国債について発行体の信用リスクを表すCDSスプレッドを見ると、米国債は4月以降に上昇。足元では中国国債やイタリア国債と同水準にあり、ドイツ国債、日本国債、英国債に対して劣る。トランプ税制・歳出法案が議会上院で可決した場合のCDSスプレッド動向に要注意だろう。

参考銘柄
コストコホールセール<COST> 市場:COST・・・2025/9/26に2025/8期4Q(6-8月)の決算発表を予定
・1976年創業。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型店舗)を運営し、生鮮・加工食品、家電や自動車関連などを卸売価格で販売する。世界の店舗数は5/11現在で905店舗。Eコマースも展開する。
・5/29発表の2025/8期3Q(3-5月:5/11まで12週間)は、総収益が前年同期比8.0%増の632.05億USD、純利益が同13.2%増の19.03億USD。総収益のうち会費収入は同10.4%増の12.40億USD。ガソリンや為替変動を除いた既存店売上高は8.0%増。うちEコマースは15.7%増収と堅調に推移。
・同社は顧客への利益還元優先で会費収入のみを粗利益の源泉とする方針のため、高インフレで消費者の財布の紐が固くなる局面の価格設定で競合他社より優位性がある。会費収入は2025/8期9M(36週間)が前年同期比8.5%増。5/7発表の4月のガソリン・為替変動除く既存店売上高は前年同月比6%増。うち米国7%増、Eコマース16%増。関税や経済混乱の影響は限定的とみられる。
セールスフォース<CRM> 市場:NYSE・・・2025/8/28に2026/1期2Q(5-7月)の決算発表を予定
・1999年創業のCRM(顧客関係管理)の大手。「セールス」、「サービス」、「マーケティング・コマース」といったクラウド関連業務のほか、企業向けに「セールスフォース・プラットフォーム」を提供する。
・5/28発表の2026/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比7.6%増の98.29億USD(会社予想97.1-97.6億USD)、非GAAPの調整後EPSが同5.7%増の2.58USD(同2.53-2.55USD)。4月末の残存履行義務(RPO)が12%増、調整後粗利益率が0.2ポイント上昇の32.3%。成長性と利益率の両立が進展。
・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8-9%増の410-413億USD(従来計画405-409億USD)、調整後EPSを同10-11%増の11.27-11.33USD(同11.09-11.17USD)とした。2024年10月に投入した自律型AI(人工知能)アシスタントの有料契約が拡大する中、クラウドデータ管理のインフォマティカ買収(約80億USD)発表を受けて株価が一時下落。利益率の改善に繋がるかどうかが鍵を握りそうだ。
GEベルノバ<GEV> 市場:NYSE・・・2025/7/24に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・2024年3月に複合企業GEからエネルギー事業がスピンオフ。陸上・洋上風力や水力を含む高信頼性の持続可能な電力システムを構築し、発電・送電・制御・変換・貯蔵を行う製品とサービスを提供。
・4/23発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比10.6%増の80.32億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同142%増加。調整後フリーキャッシュフローが前年同期の▲6.61億USDから9.75億USDへ黒字転換。データセンター(DC)ほか電力需要の急増によりガスタービン製品の受注が拡大。
・通期会社計画は、売上高が前期比3-6%増の360-370億USD、調整後フリーキャッシュフローが同18-47%増の20-25億USD。調整後EBITDAマージン成長率が1桁台後半と従来計画を据え置いた。ガスタービン受注残は、1Qに7GW(ギガワット)追加で合計29GWに達した。米国内のAIインフラ整備の大規模投資計画(スターゲート計画)は、4年間で総額5000億USDの投資が見込まれている。
コーニング<GLW> 市場:NYSE・・・2025/7/30に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・1851年創業。世界最大級のガラス製品メーカーであり、液晶ディスプレイ用ガラスパネル、光通信の光ファイバー、ガソリン車排出微粒子制御用のセラミック基板・フィルター製品などが主力製品。
・4/29発表の2025/12期1Q(1-3月)は、非GAAPのコア売上高が前年同期比12.9%増の36.79億USD(会社予想36億USD)、コアEPSが同42.1%増の0.54USD(同0.48-0.52USD)。光通信事業における大企業向け売上は、データセンターで活用の生成AI向け新製品への強い需要を受けて106%増収。
・2025/12期2Q(4-6月)会社計画は、コア売上高が前年同期比7%増の38.5億USD、コアEPSが同17-26%増の0.55-0.59USD。同社は売上比率37%を占める光通信事業がデータセンターにおける生成AI関連に高速データ通信需要の追い風を受けるだけでなく、同25%を占めるディスプレイ事業も、電力需要増に伴う太陽光発電パネルのガラス素材向けで販売量が増加し、販売価格も上昇した。
キーサイト・テクノロジーズ<KEYS> 市場:NYSE・・・2025/8/20に2025/10期3Q)5-7月)の決算発表を予定
・ヒューレット・パッカードから独立したアジレント・テクノロジー<A>の電子計測事業を継承して2014年に設立。無線通信、航空・宇宙・防衛、半導体の各市場向けに電子計測プラットフォームを提供。
・5/20発表の2025/10期2Q(2-4月)は、売上高が前年同期比7.4%増の13.06億USD(会社予想12.7-12.9億USD)、非GAAPの調整後EPSが同20.6%増の1.70USD(同1.61-1.67USD)。売上比率70%の通信ソリューションはAIデータセンターネットワーク向けの新製品の拡大を受けて9%増収だった。
・2025/10期3Q(5-7月)会社計画は、売上高が前年同期比7-9%増の13.05-13.25億USD、調整後EPSが同4-8%増の1.63-1.69USD。通信ソリューション事業は、米国を中心としたAIデータセンター・ネットワークからの需要だけでなく、アジアや欧州における航空・防衛・政府部門からの堅調な需要に支えられている。半導体・製造業顧客の支出縮小への懸念がある中でも業績の安定が見込まれる。
ニューコア<NUE> 市場:NYSE・・・2025/7/22に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定
・1958年設立。米鉄鋼最大手で世界最大の電炉メーカー。熱延・冷延鋼板、鋼板、構造用鋼、鋼棒の製造を手掛ける。スクラップを電炉で溶かしてリサイクルする業者として、北米最大規模である。
・4/28発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.2%増の72.25億USD、非GAAPの調整後EPSが同77.7%減の0.77USD。営業キャッシュフローは同20.9%減の3.64億USD。販売量(トン)が同10%増の683万トンだったものの、売上原価率が同11.0ポイント上昇の92.3%へ悪化した。
・2025/12期2Q(4-6月)会社計画は、製鉄所(販売価格上昇)、鉄鋼製品(販売量の増加)、原材料の三事業セグメントともに、前四半期比での利益増を見込んでいる。トランプ米大統領は5/30、鉄鋼の輸入関税を25%から50%に引き上げる(6/4に発効)と表明。トランプ米政権は、米国の造船業再生、原発の建設加速を目指しており、鉄鋼業の復活はそれらの政策の基盤になると考えられる。
執筆日:2025年6月2日
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当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則 平14.1.25」に基づく告知事項>
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