2026年6月24日 15時32分
需給良好な6月の季節性、米・イラン合意署名後の注目点【フィリップ証券】
日経平均株価は6/3の高値6万8780円まで上昇後、5月の米雇用統計が大幅に予想を上回ったこと、およびトランプ米大統領の発言や米国とイランの軍事衝突への懸念が高まったことを受けて、米半導体株とともに日本のAI(人工知能)・半導体関連株が売られた。6/11の安値6万2335円まで下落したが、その要因の中には、米宇宙開発・衛星・AI関連企業であるスペースX<SPCX>のIPOが日本でも3500億円規模の募集があったことに伴って、前受け方式による申込資金を捻出するための換金売りもあった可能性がある。
ところが、その後反転上昇し、7営業日後の6/19には7万1952円まで史上最高値を更新した。主な要因の一つとして、米国とイランが戦闘終結に向けて覚書に署名したことを受けてホルムズ海峡の開放に向けた動きが始まったことが挙げられる。その背景には、日本株を取り巻く特有の季節要因に基づく需給の良好さがある。2025年にTOPIX(東証株価指数)構成企業が支払う3月期決算分の期末配当の総額が6月末までに10兆円を超え、6/30には1日で1兆8000億円規模が支払われた模様だ。5月下旬から6月末にかけて配当が日本株への再投資に回ることに加え、公務員や民間企業における夏の賞与が6月下旬から7月上旬にかけて支給されることから、6月は日本株市場の需給が1年の中でも良好な月になりやすい。さらに今年は、米ナスダック市場に上場したスペースXが上場後も公開価格を上回る水準で推移していることから、日本国内のIPO当選者が取得したスペースXを売却して日本株投資に資金を回していることも考えられる。
日本株を取り巻く堅調な流れが変わる契機としては、多くのETF(上場投資信託)が7月の10日前後に分配金支払基準日を迎えることから分配金捻出のための売り需要が発生することが挙げられる。また、今年7月より中国政府が中国本土からの海外投資規制を強化する方針であり、中国本土富裕層のマネーが中国国内に還流した場合に、日本株市場に悪影響が及ぶ可能性もある。
米国とイランの覚書署名後、日本株の物色はAI関連への一極集中から他の分野へと広がりを見せ始めている。防衛装備品輸出ルール改定で輸出制限の「5類型」が撤廃されたことや小泉防衛相による海外トップセールスへの期待から防衛関連へ資金が回帰する可能性がある。また、食料品の消費減税をめぐって超党派の国民会議で来年4月から税率を1%に引き下げ、給付と組み合わせて「消費税を実質ゼロ化」するとした議長案が有力視されている。さらに、日本の対米投資資金を活用して米国内に次世代原発の小型モジュール炉(SMR)や天然ガス発電施設を建設する総額最大730億ドル規模の「第2次対米投資パッケージ」も最終投資決定が近いとみられる。
■TOPIXベースでPBR上振れ余地~足元1.8倍近辺に対し、2006年は2.2倍台
日経平均株価がAI関連銘柄への物色集中を受けて上昇を加速する一方、東証プライム市場銘柄の幅広い銘柄群を網羅する時価総額加重平均指数のTOPIX(東証株価指数)の出遅れが目立つ。NT倍率(日経平均株価のTOPIXに対する倍率)も6/17終値で17.4倍と過去最高水準に上っている。TOPIXのPBR(株価純資産倍率)は、「聖域なき構造改革」をキャッチフレーズとした小泉政権下で株価が堅調に推移していた2006年に2.2倍台まで上昇したのに対し、足元は1.8倍前後にとどまっている。
TOPIXについては今年10月から算出ルールの段階的見直しを開始し、プライムに限定せず、スタンダード、グロース市場の流動性基準をクリアした銘柄へと構成銘柄の対象が広がることが注目点だ。
参考銘柄
日本製鉄<5401>
・1950年設立。1970年の八幡製鉄と富士製鉄の合併(新日本製鉄)、2012年の住友金属工業との合併(新日鉄住金)を経て、2019年に現社名へ変更。2025年6月に米USスチールを完全子会社化。
・5/13発表の2026/3通期は、売上収益が前年同期比15.7%増の10兆632億円、事業利益が同24.8%減の5141億円。事業利益内訳は、製鉄(売上比率90%)が29%減の4399億円、システムソリューションが12%増の433億円、エンジニアリングが58%増の231億円、ケミカル・マテリアルが16%増の219億円。
・2027/3通期会社計画は、在庫評価差益等を除く実力ベース事業利益が7.6%増の7000億円、うちUSスチールが前期▲56億円から1000億円へ黒字転換。岩井CFOは日本経済新聞の取材に対し、米国の鋼材価格が高水準で推移しているため、USスチールの今期業績が計画値を上回る可能性があると述べた。50%の鉄鋼関税政策により、安い中国材が事実上締め出されていることが背景にある。
鎌倉新書<6184>
・1984年設立。仏壇仏具業界向け出版から開始。「葬儀」、「仏壇」、「お墓」ごとにユーザーと取引先をつなぐプラットフォームを運営する「終活事業」、および「終活関連書籍出版事業」を展開する。
・6/11発表の2027/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比12.0%増の22.0億円、調整後EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)が同34.0%増の3.9億円。主な事業別売上高は、お墓(売上比率31%)が14%増、葬祭(同21%)が21%増、介護(同12%)が48%増、官民協働(同10%)が12%増。
・通期会社計画は、売上高が前期比26.0%増の105億円、調整後EBITDAが同25.5%増の20.7億円、年間配当が同横ばいの20円。現在の事業構成は、お墓、葬祭、アセットマネジメント、介護、官民、少額短期保険、その他から構成される。「終活インフラ」の構築を目指す中、清水CEOは1Q決算について顧客に複数のサービスを利用してもらうクロスユースへの取組みが業績に結びついたと述べた。
新明和工業<7224>
・1949年に企業再建整備法に基づき前身の川西航空機の第二会社として設立。輸送機器・産業機械を製造。航空機、特装車、産機・環境システム、パーキングシステム、流体、その他事業を営む。
・5/8発表の2026/3通期は、売上高が前年同期比7.0%増の2850億円、営業利益が同16.9%増の163億円。受注高は12.2%増の3270億円、3月末受注残(13.2%増の3608億円)のうち特装車が9%増、産機・環境システムが10%増、流体が9%増、航空機が46%増、パーキングシステムが9%減。
・2027/3通期会社計画は、受注高が前期比0.8%増の3297億円、売上高が同9.6%増の3124億円、営業利益が同4.1%増の170億円。年間配当が同2円増配の58円。同社製造で海上自衛隊が運用する国産唯一の水陸両用救難飛行艇「US-2」に関し、25年10月に防衛装備庁と10号機の製造契約を締結。防衛予算の大幅増額を背景に既存の救難飛行艇の修理・整備関連受注が増加している。
ヤマハ発動機<7272>
・1963年に日本楽器製造(現ヤマハ)より分離独立。二輪車などのランドモビリティ事業、船外機などのマリン事業、サーフェスマウンターなどのロボティクス事業、および金融サービス事業を営む。
・5/15発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上収益が前年同期比16.6%増の7301億円、営業利益が同43.8%増の626億円。主な事業別の営業利益は、ランドモビリティ(売上比率66%)が76%増、マリン(同20%)が19%減、金融サービス(同4%)が57%増、ロボティクス(同4%)が黒字転換だった。
・通期会社計画は、売上収益が前期比6.5%増の2兆7000億円、営業利益が同42.4%増の1800億円、年間配当が同15円増配の50円。同社は中期経営計画でロボティクス事業を戦略事業の一つに位置付けている。同事業はボンディングやモールディングなど半導体後工程の先端パッケージやHBM(高帯域メモリ)関連需要に加え、産業用ロボットなどAIに密接に関連している。
※執筆日 2026年6月19日
※フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース
ところが、その後反転上昇し、7営業日後の6/19には7万1952円まで史上最高値を更新した。主な要因の一つとして、米国とイランが戦闘終結に向けて覚書に署名したことを受けてホルムズ海峡の開放に向けた動きが始まったことが挙げられる。その背景には、日本株を取り巻く特有の季節要因に基づく需給の良好さがある。2025年にTOPIX(東証株価指数)構成企業が支払う3月期決算分の期末配当の総額が6月末までに10兆円を超え、6/30には1日で1兆8000億円規模が支払われた模様だ。5月下旬から6月末にかけて配当が日本株への再投資に回ることに加え、公務員や民間企業における夏の賞与が6月下旬から7月上旬にかけて支給されることから、6月は日本株市場の需給が1年の中でも良好な月になりやすい。さらに今年は、米ナスダック市場に上場したスペースXが上場後も公開価格を上回る水準で推移していることから、日本国内のIPO当選者が取得したスペースXを売却して日本株投資に資金を回していることも考えられる。
日本株を取り巻く堅調な流れが変わる契機としては、多くのETF(上場投資信託)が7月の10日前後に分配金支払基準日を迎えることから分配金捻出のための売り需要が発生することが挙げられる。また、今年7月より中国政府が中国本土からの海外投資規制を強化する方針であり、中国本土富裕層のマネーが中国国内に還流した場合に、日本株市場に悪影響が及ぶ可能性もある。
米国とイランの覚書署名後、日本株の物色はAI関連への一極集中から他の分野へと広がりを見せ始めている。防衛装備品輸出ルール改定で輸出制限の「5類型」が撤廃されたことや小泉防衛相による海外トップセールスへの期待から防衛関連へ資金が回帰する可能性がある。また、食料品の消費減税をめぐって超党派の国民会議で来年4月から税率を1%に引き下げ、給付と組み合わせて「消費税を実質ゼロ化」するとした議長案が有力視されている。さらに、日本の対米投資資金を活用して米国内に次世代原発の小型モジュール炉(SMR)や天然ガス発電施設を建設する総額最大730億ドル規模の「第2次対米投資パッケージ」も最終投資決定が近いとみられる。
■TOPIXベースでPBR上振れ余地~足元1.8倍近辺に対し、2006年は2.2倍台
日経平均株価がAI関連銘柄への物色集中を受けて上昇を加速する一方、東証プライム市場銘柄の幅広い銘柄群を網羅する時価総額加重平均指数のTOPIX(東証株価指数)の出遅れが目立つ。NT倍率(日経平均株価のTOPIXに対する倍率)も6/17終値で17.4倍と過去最高水準に上っている。TOPIXのPBR(株価純資産倍率)は、「聖域なき構造改革」をキャッチフレーズとした小泉政権下で株価が堅調に推移していた2006年に2.2倍台まで上昇したのに対し、足元は1.8倍前後にとどまっている。
TOPIXについては今年10月から算出ルールの段階的見直しを開始し、プライムに限定せず、スタンダード、グロース市場の流動性基準をクリアした銘柄へと構成銘柄の対象が広がることが注目点だ。
参考銘柄
日本製鉄<5401>
・1950年設立。1970年の八幡製鉄と富士製鉄の合併(新日本製鉄)、2012年の住友金属工業との合併(新日鉄住金)を経て、2019年に現社名へ変更。2025年6月に米USスチールを完全子会社化。
・5/13発表の2026/3通期は、売上収益が前年同期比15.7%増の10兆632億円、事業利益が同24.8%減の5141億円。事業利益内訳は、製鉄(売上比率90%)が29%減の4399億円、システムソリューションが12%増の433億円、エンジニアリングが58%増の231億円、ケミカル・マテリアルが16%増の219億円。
・2027/3通期会社計画は、在庫評価差益等を除く実力ベース事業利益が7.6%増の7000億円、うちUSスチールが前期▲56億円から1000億円へ黒字転換。岩井CFOは日本経済新聞の取材に対し、米国の鋼材価格が高水準で推移しているため、USスチールの今期業績が計画値を上回る可能性があると述べた。50%の鉄鋼関税政策により、安い中国材が事実上締め出されていることが背景にある。
鎌倉新書<6184>
・1984年設立。仏壇仏具業界向け出版から開始。「葬儀」、「仏壇」、「お墓」ごとにユーザーと取引先をつなぐプラットフォームを運営する「終活事業」、および「終活関連書籍出版事業」を展開する。
・6/11発表の2027/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比12.0%増の22.0億円、調整後EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)が同34.0%増の3.9億円。主な事業別売上高は、お墓(売上比率31%)が14%増、葬祭(同21%)が21%増、介護(同12%)が48%増、官民協働(同10%)が12%増。
・通期会社計画は、売上高が前期比26.0%増の105億円、調整後EBITDAが同25.5%増の20.7億円、年間配当が同横ばいの20円。現在の事業構成は、お墓、葬祭、アセットマネジメント、介護、官民、少額短期保険、その他から構成される。「終活インフラ」の構築を目指す中、清水CEOは1Q決算について顧客に複数のサービスを利用してもらうクロスユースへの取組みが業績に結びついたと述べた。
新明和工業<7224>
・1949年に企業再建整備法に基づき前身の川西航空機の第二会社として設立。輸送機器・産業機械を製造。航空機、特装車、産機・環境システム、パーキングシステム、流体、その他事業を営む。
・5/8発表の2026/3通期は、売上高が前年同期比7.0%増の2850億円、営業利益が同16.9%増の163億円。受注高は12.2%増の3270億円、3月末受注残(13.2%増の3608億円)のうち特装車が9%増、産機・環境システムが10%増、流体が9%増、航空機が46%増、パーキングシステムが9%減。
・2027/3通期会社計画は、受注高が前期比0.8%増の3297億円、売上高が同9.6%増の3124億円、営業利益が同4.1%増の170億円。年間配当が同2円増配の58円。同社製造で海上自衛隊が運用する国産唯一の水陸両用救難飛行艇「US-2」に関し、25年10月に防衛装備庁と10号機の製造契約を締結。防衛予算の大幅増額を背景に既存の救難飛行艇の修理・整備関連受注が増加している。
ヤマハ発動機<7272>
・1963年に日本楽器製造(現ヤマハ)より分離独立。二輪車などのランドモビリティ事業、船外機などのマリン事業、サーフェスマウンターなどのロボティクス事業、および金融サービス事業を営む。
・5/15発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上収益が前年同期比16.6%増の7301億円、営業利益が同43.8%増の626億円。主な事業別の営業利益は、ランドモビリティ(売上比率66%)が76%増、マリン(同20%)が19%減、金融サービス(同4%)が57%増、ロボティクス(同4%)が黒字転換だった。
・通期会社計画は、売上収益が前期比6.5%増の2兆7000億円、営業利益が同42.4%増の1800億円、年間配当が同15円増配の50円。同社は中期経営計画でロボティクス事業を戦略事業の一つに位置付けている。同事業はボンディングやモールディングなど半導体後工程の先端パッケージやHBM(高帯域メモリ)関連需要に加え、産業用ロボットなどAIに密接に関連している。
※執筆日 2026年6月19日
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当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
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