2025年12月30日 16時00分
マーケット&北陸経済動向(12/30)【今村証券アナリストレポート】
(1)マーケット動向
12月の日本の株式市場は総じて堅調だった。18~19日の日銀金融政策決定会合前に手控えムードが広がり日経平均株価が一時4万9000円を下回る場面があったものの、0.25%の利上げは織り込み済みとして会合後に日経平均株価は5万円台を回復した。
2025年は世界で株高が進行した。春先にトランプ米大統領の関税政策への懸念を背景にリスク回避ムードが広がったが、その後は米関税に対する過度な懸念の後退やFRB(連邦準備制度理事会)の利下げ観測、AI投資活発化が材料視され世界の株式市場は上昇基調を強めた。米国の主要3指数のほか英FTSE100種総合株価指数やドイツ株価指数(DAX)、韓国KOSPI、台湾加権指数などが過去最高値を更新し、世界株の動きを反映する「MSCI全世界株指数(ACWI)」も過去最高値を更新した。日本ではハイテク株高に加えて、インフレ経済への転換が意識されたことや高市政権の発足、東証の改革などが材料視された。海外投資家の日本株の買い越し額は5兆円超(12月第3週までの累計)とアベノミクスが始まった2013年以来の規模となり、日経平均株価は一時5万2000円台に乗せ過去最高値を更新、年間では米国や欧州を上回る上昇率となった。
上昇が目立ったのはAI関連だ。昨年に続きソフトバンクグループ <9984> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]など半導体関連やフジクラ <5803> [東証P]など電線株が買われたほか、電力株が上昇、AIを搭載する「フィジカルAI」の成長期待からロボット関連株も買われ、AI関連の物色には広がりがみられた。また、値上げを通じて採算が改善した大手ゼネコンなど建設株に加え、金利上昇の恩恵が見込まれる銀行株や不動産など内需株、金(ゴールド)や銅など商品市況の上昇を受けた非鉄金属株、米関税の影響を受けにくいとみられるエンターテインメント株なども買われ、上場企業の5社に1社が上場来高値を更新した。年末にかけて円安が進行したことで自動車株など輸出株にも買いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は12月に過去最高値を更新した。
2026年も株高基調は続きそうだ。背景には、① インフレの定着による名目経済の拡大、② 堅調な国内景気と企業業績、③ 東京証券取引所(以下「東証」)による「資本コストや株価を意識した経営」の要請を背景にした企業の資本効率改善―――がある。日本の長期金利の上昇は続いているものの、物価変動を考慮した実質金利はマイナスにとどまっており、国内景気が堅調な中でゴルディロックス(適温経済)相場の継続が期待される。
注目材料は引き続きAI関連と考える。割高感が意識されるハイテク株には高値警戒感があるものの、機械やロボットなどにAIを搭載する「フィジカルAI」や「AIエージェント」などAIを活用したサービスの拡大が期待される中でAI関連の注目度は高い。引き続き注目したい。
東証の改革も注目材料だ。殊に2026年10月からは流通株式時価総額や流動性を基準にスタンダード市場やグロース市場の上場銘柄も一部TOPIXに採用される。新規採用銘柄には買い需要が発生する半面、除外される銘柄には下落リスクが高まる。個別銘柄の選択には注意が必要だ。
リスクは米利下げ観測の後退、日中関係の悪化や中国景気の減退などが挙げられる。トランプ米大統領が次期FRB議長に大幅な利下げを信奉する人物を指名するとみられることで、市場では利下げ期待が高いが、利下げ観測が後退すれば株式市場を冷やしかねない点には注意したい。とはいえ、米国に比べれば日本株はなお割安で、米国からの資金シフトが日本株の支えとなると考える。
2026年は選挙イヤーでもある。最大の注目は秋の米中間選挙だが、日本でも衆院解散・総選挙の可能性がある。日米の政府が選挙対策として景気刺激策を打ち出せば、株価は上昇基調を強めそうだ。
(2)北陸経済動向
足元の北陸経済は緩やかな回復・持ち直し基調にあるものの、一部に弱めの動きもみられる。
「個人消費」は堅調さを維持している。10月の商業動態統計小売6業態販売額(全店ベース)は前年同月比4.8%増と44カ月連続で前年同月を上回った。物価上昇の影響のほか、米マイクロソフト<MSFT>の基本ソフトの基本ソフト「Windows10」サポート終了に伴うパソコンの買い替え需要も発生した。「設備投資」も堅調で、日銀金沢支店が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、今年度の設備投資計画(全産業)の増加率は前年度比3割を超える。能力増強や新規事業向け、省力化投資が盛んだ。
「生産」は引き続き弱い。10月の鉱工業生産指数(速報値・季節調整済)は前月比4.2%減と2カ月ぶりに低下した。中部経済産業局は生産用機械工業の判断を「持ち直しの動き」から「足踏み状態」へ下方修正し、海外向けの一部で伸び悩みがみられている。また「住宅投資」も弱く、10月の新築住宅着工戸数は7カ月連続で前年同月を下回った。
先行きについては、緩やかな景気回復が続くと期待される。しかし、不透明感も漂う。12月の日銀短観において、企業の業況判断指数(DI)(全産業)はプラス14となり、2018年12月調査(プラス18)以来の高水準となった一方で、先行きDIはプラス7への低下を見込んだ。米関税政策や日中対立への警戒感、為替、国内物価の動向などに注意したい。
--------------------------------------------------------------------------------------
今村証券株式会社
金融商品取引業者 北陸財務局長(金商) 第3号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
--------------------------------------------------------------------------------------
【アナリストによる証明】
本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。
--------------------------------------------------------------------------------------
【免責・注意事項】
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的とし、信頼できると思われる各種データに基づき作成したものですが、正確性・完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見・予測等は、作成時点における今村証券の判断に基づくもので、今後、予告なしに変更されることがあります。本資料は投資結果を保証するものではございませんので、本資料の内容について第三者のいかなる損害賠償の責任を負うものでもありませんし、本資料に依拠した結果として被った損害または損失について今村証券は一切責任を負いません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください。今村証券は本資料に関するご質問やご意見に対して、何ら対応する責任を負うものではありません。
今村証券及びその関連会社、役職員が、本資料に記載されている証券もしくは金融商品について、自己売買または委託売買取引を行うことがあります。
本資料は今村証券の著作物であり、著作権法により保護されております。今村証券の事前の承認なく、また電子的・機械的な方法を問わず、本資料の全部もしくは一部引用または複製、転送等により使用することを禁じます。
――――――――――――――――――――――――――――――――-
※今村証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース
12月の日本の株式市場は総じて堅調だった。18~19日の日銀金融政策決定会合前に手控えムードが広がり日経平均株価が一時4万9000円を下回る場面があったものの、0.25%の利上げは織り込み済みとして会合後に日経平均株価は5万円台を回復した。
2025年は世界で株高が進行した。春先にトランプ米大統領の関税政策への懸念を背景にリスク回避ムードが広がったが、その後は米関税に対する過度な懸念の後退やFRB(連邦準備制度理事会)の利下げ観測、AI投資活発化が材料視され世界の株式市場は上昇基調を強めた。米国の主要3指数のほか英FTSE100種総合株価指数やドイツ株価指数(DAX)、韓国KOSPI、台湾加権指数などが過去最高値を更新し、世界株の動きを反映する「MSCI全世界株指数(ACWI)」も過去最高値を更新した。日本ではハイテク株高に加えて、インフレ経済への転換が意識されたことや高市政権の発足、東証の改革などが材料視された。海外投資家の日本株の買い越し額は5兆円超(12月第3週までの累計)とアベノミクスが始まった2013年以来の規模となり、日経平均株価は一時5万2000円台に乗せ過去最高値を更新、年間では米国や欧州を上回る上昇率となった。
上昇が目立ったのはAI関連だ。昨年に続きソフトバンクグループ <9984> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]など半導体関連やフジクラ <5803> [東証P]など電線株が買われたほか、電力株が上昇、AIを搭載する「フィジカルAI」の成長期待からロボット関連株も買われ、AI関連の物色には広がりがみられた。また、値上げを通じて採算が改善した大手ゼネコンなど建設株に加え、金利上昇の恩恵が見込まれる銀行株や不動産など内需株、金(ゴールド)や銅など商品市況の上昇を受けた非鉄金属株、米関税の影響を受けにくいとみられるエンターテインメント株なども買われ、上場企業の5社に1社が上場来高値を更新した。年末にかけて円安が進行したことで自動車株など輸出株にも買いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は12月に過去最高値を更新した。
2026年も株高基調は続きそうだ。背景には、① インフレの定着による名目経済の拡大、② 堅調な国内景気と企業業績、③ 東京証券取引所(以下「東証」)による「資本コストや株価を意識した経営」の要請を背景にした企業の資本効率改善―――がある。日本の長期金利の上昇は続いているものの、物価変動を考慮した実質金利はマイナスにとどまっており、国内景気が堅調な中でゴルディロックス(適温経済)相場の継続が期待される。
1段目:MSCI全世界株指数、2段目:赤:日経平均株価 青:米ダウ工業株30 種平均、3段目:ストックス600、4段目:円相場(青:対米ドル、緑:対ユーロ)、5段目:赤:日本10年物国債利回り、青:米10年物国債利回り、6段目:NY金
出所:ブルームバーグ
注目材料は引き続きAI関連と考える。割高感が意識されるハイテク株には高値警戒感があるものの、機械やロボットなどにAIを搭載する「フィジカルAI」や「AIエージェント」などAIを活用したサービスの拡大が期待される中でAI関連の注目度は高い。引き続き注目したい。
東証の改革も注目材料だ。殊に2026年10月からは流通株式時価総額や流動性を基準にスタンダード市場やグロース市場の上場銘柄も一部TOPIXに採用される。新規採用銘柄には買い需要が発生する半面、除外される銘柄には下落リスクが高まる。個別銘柄の選択には注意が必要だ。
リスクは米利下げ観測の後退、日中関係の悪化や中国景気の減退などが挙げられる。トランプ米大統領が次期FRB議長に大幅な利下げを信奉する人物を指名するとみられることで、市場では利下げ期待が高いが、利下げ観測が後退すれば株式市場を冷やしかねない点には注意したい。とはいえ、米国に比べれば日本株はなお割安で、米国からの資金シフトが日本株の支えとなると考える。
2026年は選挙イヤーでもある。最大の注目は秋の米中間選挙だが、日本でも衆院解散・総選挙の可能性がある。日米の政府が選挙対策として景気刺激策を打ち出せば、株価は上昇基調を強めそうだ。
(2)北陸経済動向
足元の北陸経済は緩やかな回復・持ち直し基調にあるものの、一部に弱めの動きもみられる。
「個人消費」は堅調さを維持している。10月の商業動態統計小売6業態販売額(全店ベース)は前年同月比4.8%増と44カ月連続で前年同月を上回った。物価上昇の影響のほか、米マイクロソフト<MSFT>の基本ソフトの基本ソフト「Windows10」サポート終了に伴うパソコンの買い替え需要も発生した。「設備投資」も堅調で、日銀金沢支店が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、今年度の設備投資計画(全産業)の増加率は前年度比3割を超える。能力増強や新規事業向け、省力化投資が盛んだ。
「生産」は引き続き弱い。10月の鉱工業生産指数(速報値・季節調整済)は前月比4.2%減と2カ月ぶりに低下した。中部経済産業局は生産用機械工業の判断を「持ち直しの動き」から「足踏み状態」へ下方修正し、海外向けの一部で伸び悩みがみられている。また「住宅投資」も弱く、10月の新築住宅着工戸数は7カ月連続で前年同月を下回った。
先行きについては、緩やかな景気回復が続くと期待される。しかし、不透明感も漂う。12月の日銀短観において、企業の業況判断指数(DI)(全産業)はプラス14となり、2018年12月調査(プラス18)以来の高水準となった一方で、先行きDIはプラス7への低下を見込んだ。米関税政策や日中対立への警戒感、為替、国内物価の動向などに注意したい。
(参照:日銀金沢支店発表資料「北陸の金融経済月報」、「北陸短観」、国土交通省発表資料、経済産業省及び経済産業省中部経済産業局発表資料、財務省北陸財務局発表資料、内閣府発表資料より今村証券作成)
--------------------------------------------------------------------------------------
今村証券株式会社
金融商品取引業者 北陸財務局長(金商) 第3号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
--------------------------------------------------------------------------------------
【アナリストによる証明】
本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。
--------------------------------------------------------------------------------------
【免責・注意事項】
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的とし、信頼できると思われる各種データに基づき作成したものですが、正確性・完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見・予測等は、作成時点における今村証券の判断に基づくもので、今後、予告なしに変更されることがあります。本資料は投資結果を保証するものではございませんので、本資料の内容について第三者のいかなる損害賠償の責任を負うものでもありませんし、本資料に依拠した結果として被った損害または損失について今村証券は一切責任を負いません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください。今村証券は本資料に関するご質問やご意見に対して、何ら対応する責任を負うものではありません。
今村証券及びその関連会社、役職員が、本資料に記載されている証券もしくは金融商品について、自己売買または委託売買取引を行うことがあります。
本資料は今村証券の著作物であり、著作権法により保護されております。今村証券の事前の承認なく、また電子的・機械的な方法を問わず、本資料の全部もしくは一部引用または複製、転送等により使用することを禁じます。
――――――――――――――――――――――――――――――――-
※今村証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース