探検
PR
  • トップ
  •  >  米国株
  •  >  市場ニュース
  •  >  コーポレートガバナンス・コード改訂~現金保有と親子上場”【フィリップ証券】
  • 銘柄ニュース
    戻る
    2025年12月3日 16時25分

    コーポレートガバナンス・コード改訂~現金保有と親子上場”【フィリップ証券】

     金融庁は10/21、「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」を主催。この会議は6/30に公表された「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」を基盤としている。コーポレートガバナンス・コードは2026年の改訂が予定され、稼ぐ力の向上(現金保有、人材戦略)、投資家との対話促進(株主総会、開示)、取締役機能強化(取締役の独立性)、市場環境上の課題解決(政策保有株式、開示ルール違反の罰則、親子上場)、サステナビリティ(サステナビリティ開示、セーフハーバールール)の5つの主要論点を中心に議論が進むと見込まれる。その中でも、注目されるのは、①多額の現金保有、②親子上場の2点である。

     ブルームバーグによれば、金融業を除くTOPIX(東証株価指数)構成銘柄の現金総資産比率は、2014年度の12%から2025年度の17%へと上昇している。同様に、利益準備金純資産比率も2014年度の63%から2025年度の77%に上昇している。見通しにくい政治経済情勢に対応したリスク対応や将来の投資を目的に現金をため込むことまでは否定されるものでないことから、現金保有の増加についてその目的を説明することが求められるようになると考えられる。現金総資産比率と利益準備金純資産比率の高い企業は、アクティビスト(物言う株主)の標的にされやすくなると予想される。

     2025年11月時点で、TOPIX構成企業のうち親子上場の関係にある企業は66社に上る。著名アクティビストのストラテジックキャピタルが日本製鉄<5401>の株主総会において子会社管理の見直しを提案した際にPBR(株価純資産倍率)に言及していたことが注目される。特に低PBRの上場子会社については、企業価値や資本効率の底上げ戦略の具体的な立案と実行、および少数株主保護の考え方や施策の説明が必要になるだろう。

     米アクティビストファンドのサファイアテラ・キャピタルが11/14、伊藤忠商事<8001>の上場子会社である伊藤忠食品<2692>の取締役会に対し、非公開化による親子上場の解消を提案したと発表。金融庁や東証が余剰現預金や親子上場について厳しく言うようになってきたことを背景に、アクティビストが攻勢を強めている。サファイアテラは、三陽商会<8011>に対しても主要株主の三井物産<8031>への身売りを提案する書簡を送っていた。親子上場ではないが、不動産売却や在庫圧縮で手許現金が増えて過剰資本となっていることが低PBRの原因とし、株主還元で過剰資本を圧縮して資本効率を高め、長期的な事業拡大のため大手資本の傘下に入るべきだとした。2026年はコード改訂を契機とし、余剰現預金と親子上場を放置している企業グループに対してアクティビストが要求を強めそうだ。


    ■国内10年実質金利のゼロ超え~日米実質金利差縮小でも、円安ドル高

     物価連動国債利回り(TIPS)は、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利を表す。上昇基調にある日本国債10年物の実質金利は、10月半ば以降にプラス圏に入った。一方、米国債10年物のTIPSは今年1月の2.3%台から直近の1.8%台と低下基調で推移している。日米の実質金利差が縮小すれば、金利面からは円高ドル安要因になると考えられるものの、米FRB(連邦準備理事会)高官から利下げに慎重な発言が相次いでいること、および日銀が積極的に利上げをしにくいのではないかとの懸念から、足元では円安ドル高が進行している。

     日本国債10年期待インフレ率は1.7%近辺と日銀が目標とする2%を超えていない。インフレ加速を織り込んだ債券市場の売りスタンスは行き過ぎの面もある。


    【タイトル】


    ■半導体メモリー・スポット価格急騰~AIインフラ特需と供給制約・在庫積み

     今年10月以降、NANDフラッシュとDRAMのスポット価格が急騰している。需要面の要因は、半導体メモリー製造で世界2強を占める韓国のサムスン電子とSKハイニクスが10月、米AI(人工知能)大手OpenAIが主導するプロジェクト「スターゲート」を支援するため、大型契約を発表したことが大きい。供給面の要因は、米マイクロン・テクノロジー<MU>を加えた半導体メモリー世界3強が生産ラインを広帯域メモリー(HBM)に大幅にシフトしたためNANDフラッシュやDRAMの生産量が減少していたことが挙げられる。

     過去の赤字に対応した投資不足で大手メーカーが増産に応じる余地は限定的で価格高騰が続くと見込まれる。NANDフラッシュ大手のキオクシアホールディングス<285A>には追い風だろう。


    【タイトル】


    参考銘柄

    JSP<7942>

    ・1962年に現在の三菱瓦斯化学<4182>の出資により、発泡技術を主体としたプラスチック製品関連事業を営むことを目的として日本スチレンペーパーを設立。押出事業およびビーズ事業を展開。

    ・10/31発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比1.5%減の703億円、営業利益が同4.0%減の30億円。事業別営業利益は、押出事業(売上比率35%)が建築・住宅向けの貢献により8%増の8.6億円、ビーズ事業(同65%)が自動車分野の販売減と人件費増が響き10%減の26億円。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比0.2%減の1420億円、営業利益が同12.9%減の60億円、年間配当が同横ばいの80円。同社は2023年に三菱瓦斯化学との資本業務提携を解消し持分法適用会社に移行したものの、三菱瓦斯化学グループの保有比率は2025年6月時点で約48%と高い。PBR(株価純資産倍率)0.6倍近辺の低評価であり、コーポレートガバナンスの観点から対応が望まれる。


    ふくおかフィナンシャルグループ<8354>

    ・2007年に福岡銀行と熊本ファミリー銀行(現在は熊本銀行に改称)の統合により設立。同年に親和銀行を経営統合。2019年に十八銀行を経営統合後、2020年に長崎県で十八親和銀行を発足した。

    ・11/10発表の2026/3期1H(4-9月)は、銀行合算ベースのコア業務純益が前年同期比6.2%増の706億円、信用コストが18億円と前年同期の▲25億円から増加、純利益が同2.4%増の511億円。金利上昇による貸出金利息増加に加え、有価証券ポートフォリオ見直しに伴う国債等債券損益も改善した。

    ・通期会社計画(銀行合算ベース)は、コア業務利益が前期比7.8%増の1284億円、経常利益が同12.9%増の1170億円、年間配当は同35円増配の170円。株価は1990年高値6442円および2005年高値5375円(福岡銀行時)より低位で推移。傘下モバイル専業銀行「みんなの銀行」のフルクラウド型銀行システムが今年5月、三菱UFJ銀行が新設するデジタルバンクの基幹システムに採用された。


    イオンフィナンシャルサービス<8570>

    ・1981年にジャスコ(現イオン<8267>)子会社として設立。イオングループの金融サービス事業を展開。国内部門(リテール、ソリューション)と国際部門(中華圏、メコン圏、マレー圏)から構成される。

    ・10/9発表の2026/2期1H(3-8月)は、営業収益が前年同期比8.7%増の2781億円、営業利益が同4.3%増の283億円。セグメント別営業利益は、国際部門(営業収益比率59%)が6.8%増の187億円、国内部門(同41%)が0.3%増の95億円。主にソリューション、中華圏、メコン圏が増益に貢献。

    ・通期会社計画は、営業収益が前期比6.9%増の5700億円、営業利益が同7.3%減の570億円、年間配当が同横ばいの53円。国内ではイオングループの都市型店舗「まいばすけっと」が、海外ではイスラム金融を手がけるイオンバンク(マレーシア)が好調。業績が堅調に推移し、海外展開も順調な中、11/27終値でPBR(株価純資産倍率)は0.75倍。親子上場が今後のテーマとなる可能性がある。


    三菱地所<8802>

    ・1937年に三菱合資会社より貸事務所経営部門を継承し、丸の内ビジネスセンターを整備拡充。商業不動産、丸の内、住宅、海外、投資マネジメント、設計監理・不動産サービス等の事業を展開。

    ・11/10発表の2026/3期1H(4-9月)は、営業収益が前年同期比15.9%増の7432億円、営業利益が同7.7%増の1075億円。米国不動産投資等の海外事業は金利の高止まりで回復が鈍かった一方、東京・丸の内を中心としたオフィス賃料収入が伸びた。東京都心の高額分譲マンション販売も堅調。

    ・通期会社計画は、営業収益が前期比17.1%増の1兆8500億円、営業利益が同5.1%増の3250億円、年間配当が同3円増配の46円。三井不動産<8801>の11/27終値(1855円)は2007年の最高値を39%上回る。住友不動産<8830>の11/27終値(7574円)は2007年の高値を44%上回る。一方で、三菱地所の11/27終値(3662円)は2007年の過去最高値を10%下回る。出遅れ修正が期待される。


    ※執筆日 2025年11月28日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

    【免責・注意事項】
    当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
    <日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則 平14.1.25」に基づく告知事項>

    ・ 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。



    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。


    株探ニュース