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    2025年11月19日 15時25分

    AI過剰投資とローテーション、高市政権の政策議論本格化【フィリップ証券】

     日経平均株価は11月第1週に続き第2週も、一部のAI(人工知能)関連の株価動向に左右されて不安定に推移している。その背景には、米巨大ハイテク企業によるAIインフラへの設備投資支出額が過剰ではないかという懸念がある。過剰な設備投資は減価償却費を通じて将来の利益を圧迫する要因となる。また、米国企業の人員削減についても、AIの活用によって業務の効率化が進んだことがその理由とされているが、実際には、設備投資支出の増加によるキャッシュフローのマイナスを賄うために人件費を削減せざるを得なくなっている面もあるように思われる。そのような中、日本株市場においても、寄与度が高い一部の銘柄の株価を通じて日経平均株価がボラティリティ(価格変動性)の高い動きとなっている。その一方、日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った「NT倍率」の下落とともに、好決算が目立つ内需株を中心としたバリュー株への資金シフトも見られる。

     このような一連の動きは、今年1月に発生した「DeepSeekショック」の後の動きと類似している。中国AI新興企業が発表した低コスト生成AIモデルの登場をきっかけに、米エヌビディア<NVDA>製の高性能半導体需要が減るのではないかとの懸念から、AI・半導体関連株が急落した一方、景気敏感株などへ資金がシフトしたことがあった。買われ過ぎたAI・半導体銘柄の調整局面に伴う物色の大きなローテーションが起こったという点は、最近の動向との共通点だろう。

     国内では、高市首相が発足させた「日本成長戦略会議」が11/10、初会合を開いた。また、政府は11/12に「経済財政諮問会議」を開催し、総合経済対策について議論するなど、高市政権の日本経済への舵取りが本格的に始まった。

     高市首相は「心身の健康維持と従業者の選択を前提」としつつも、労働時間の規制緩和を成長戦略の柱に据えている。「働き方改革」に逆行する面があるものの、企業が国際競争で生き残ることへの危機感や賃金を増やす選択肢を拡大することがその目的だ。

     次に、2026年度予算の編成に向け、社会保障の見直し議論が本格化してきた。現役世代の保険料で高齢者医療を賄う「仕送り」の構図が強まる中、政府は保険適用の見直しや所得がある高齢者の負担拡大を検討している。医療保険や介護保険の保険料は給与や年金といった所得の額に応じて決まる。「特定口座(源泉徴収あり)」のように、確定申告を行わない場合はどれだけ金融所得があっても翌年度の社会保険料に反映されにくく、保険料の負担が軽くなる。また、75歳以上であれば病院などで払う医療費の窓口負担も、申告している人が3割になる場合があるのに対し、1割に抑えられる。このような現状を見直すべく、政府は、金融所得の把握のため証券会社などが国税庁に提出する「支払調書」の活用を想定している模様だ。


    ■NT倍率の行き過ぎに修正の余地残る~内需株が相対優位か

     一部のAI(人工知能)・半導体関連が一方的な上昇を示したことで過熱感が指摘され、日経平均を東証株価指数(TOPIX)で割ったNT倍率は10/31時点で15.73倍と過去最高水準に達していた中、11月中旬にかけて、AI・半導体関連への利益確定売りの一方、好決算を受け業績先行きに安定感がある内需銘柄に資金が向かう傾向が見られた。そのような動きに伴って、国内売上高比率の高い銘柄で構成する日経平均内需株50指数にシフトする動きも見られた。7月の日米の関税合意以降、内需株が外需株に比べて出遅れが目立っていた。

     2021年12月以降、内需株が外需株のパフォーマンスを上回る傾向が続いていると見る余地もあり、NT倍率の低下とともに内需株への物色シフトが見込まれる。


    【タイトル】


    参考銘柄


    コメダホールディングス<3543>

    ・1968年に創業者の加藤太郎が名古屋で「コメダ喫茶店」を開業。1975年に法人化後、フランチャイズ(FC)展開を本格化。「珈琲所コメダ珈琲店」のほか「おかげ庵」など新業態の店舗ブランドを展開。

    ・10/8発表の2026/2期1H(3-8月)は、売上収益が前年同期比23.7%増の285億円、営業利益が同5.5%増の46億円。8月末店舗数は、国内事業のコメダ珈琲店が前年同期比9店増の1017店、海外事業が同31店増の79店(うち30店がシンガポールPOON社を3/1に連結子会社化したことによる。)

    ・通期会社計画は、売上収益が前期比16.6%増の548億円、営業利益が同13.4%増の100億円、年間配当が同6円増配の60円。1HのFC加盟店向け卸売の既存店売上高が前年比12%増。同社は11/14、人気メニューのコーヒーゼリー飲料「ジェリコ」の専門店「ジェリコ堂」の関東1号店を開店。主力の喫茶業態と異なり、テイクアウトに主軸を置く。2024年10月に香港で始めた業態を逆輸入した。


    BASE<4477>

    ・2012年設立。個人・小規模事業者向けのECプラットフォーム「BASE」を運営。BASE事業(ECプラットフォーム)、PAY.JP事業(オンライン決済サービス)、YELL BANK事業(事業資金提供サービス)を営む。

    ・11/6発表の2025/12期9M(1‐9月)は、売上高が前年同期比24.4%増の140億円、営業利益が同43.5%増の11億円。セグメント利益は、BASE事業(売上比率54%)が70%増の11億円、PAY.JP事業(同34%)が29%増の2.5億円、YELL BANK事業(同6%)が36%増の3.6億円とそれぞれ堅調に推移。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比30.4%増の208億円(従来計画196億円)、営業利益を同52.7%増の11億円(同10億円)としたほか、年間配当も無配を計画していたが、初の配当(4円)実施を発表。7/18に同業のEストアーを完全子会社化したことを受けて、流通総額(GMV)の拡大が加速。7/1より実施した「Pay ID」のショッピングアプリ有料化と併せて、収益性の向上が見込まれる。


    ツムラ<4540>

    ・1893年に婦人薬中将湯の津村順天堂を創業。医薬品事業を日本・中国・ラオス・米国で展開。医療用漢方薬で国内シェア8割超。高齢者、がん支持療法、女性関連の3領域を重点に市場深耕。

    ・11/10発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比0.9%増の898億円、営業利益が同18.8%減の171億円。医療用漢方製剤129処方(売上比率85%)が1%減収、中国事業(同12%)が原料生薬と飲片の生薬プラットフォームの伸長を受けて14%増収。販管費率の上昇が利益を圧迫。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比9.3%増の1980億円(従来計画1880億円)、営業利益を同12.8%減の350億円(同342億円)、年間配当を同8円増配の144円(同136円)とした。中国虹橋飲片の連結子会社化に伴う売上増に加え、加工費の低減や販管費の抑制効果を見込んでいる。売掛金サイト短縮と生薬在庫回転率向上、政策保有株式縮減など財務内容の改善が進展している。


    浜松ホトニクス<6965>

    ・1948年に堀内平八郎が静岡県浜松市で東海電子研究所を創業。主に電子管事業(光電子増倍管、イメージ機器及び光源)、光半導体事業、画像計測機器事業(画像処理・計測装置)を展開。

    ・11/7発表の2025/9通期は、売上高が前年同期比4.0%増の2120億円、営業利益が同49.7%減の161億円。事業別営業利益は、電子管(売上比率34%)が20%減の189億円、光半導体(同37%)が30%減の125億円、画像計測機器(同15%)が7%減の96億円、レーザ(同10%)が赤字幅拡大。

    ・2026/9通期会社計画は、売上高が前期比4.7%増の2220億円、営業利益が同6.4%増の172億円、年間配当が同横ばいの38円。光半導体と画像計測機器の両事業とも生成AI(人工知能)向けの高性能な半導体需要の追い風が見込まれる。同社は、核融合発電に関してレーザ装置の技術要件や実現可能性を議論する国際ワーキンググループへ参画が決まった。日本勢の参加は同社だけ。


    ※執筆日 2025年11月14日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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