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    2025年7月3日 14時31分

    6月末に向けた日本株上昇と7月上旬のETF決算日売りリスク【フィリップ証券】

     日経平均株価が6/27、1/27以来の4万円台を回復し、一時1/24以来の高値となる4万0267円まで上昇した。6月末にかけて上昇基調を強めてきたことについては、ある程度想定の範囲内だったといえる。

     東証株価指数(TOPIX)構成銘柄が6月末までに支払う配当の総額が約10兆3200億円に上り、支払いのピークは6/30。同日に1日で約1兆8000億円が支払われる見通しである。約定日ベースでは2営業日前の6/26以降になる可能性もある。これに加え、NTT<9432>のNTTデータグループに対するTOB(株式公開買付)が6/19に完了し、2兆円規模で資金が投資家に移転した。特に、上場企業の増配の動きが活発化していることにより、配当金再投資による株価押し上げ効果は来年以降、更に重要性を増すと考えられる。また、6/30は公務員賞与支給日であり、民間企業もその前後の「五十日(ごとうび)」を中心に賞与支給日となる場合が多いことも需給面で買い要因となり得る。実際に、6月になって月末にかけて同じ半導体分野で密接に関連する日米企業の株価動向を年初来の騰落率で比較すると、出遅れていた日本企業の株価が6月になって急速にキャッチアップしている。

     その一方、7月になるとETF(上場投資信託)による分配金捻出のための換金売りに直面する可能性が高い。国内株のETFの決算が集中する7/8と7/10に、現物株式と先物を合わせて2024年の1兆2000億円強を上回る規模の売りが出る見通しだ。ETFには決算期間中に受け取った分配金や配当収入といったインカムゲインについて、費用を差し引いた額を全額、分配金として支払うルールがあることによる。

     株主総会前に配当金を支払う企業が増えてきていることもあり、ETFの決算に伴う売りが株式市場への影響を強めている。以前は株主総会決議の後に配当金を支払う企業が多く、7月上旬に配当金の支払いが集中していたことから、ETFの分配金捻出売りの影響は限定的だった面もある。上場企業による増配の動きの加速は、ETFによる分配金捻出売りの影響拡大といった弊害を生んでいる側面もある。

     7月には米国関連の潜在的リスクが表面化してくる可能性が高い。相互関税の猶予および交渉期限を7/9に控えた「トランプ関税」で自動車や鉄鋼・アルミニウムだけでなく、半導体や医薬品などにも広がることへの懸念が強まることが予想される。それに加え、米連邦議会上院で審議中の「税制・歳出法案」が成立した場合、連邦債務上限引き上げを伴うことから、米国債の信用力への見方が厳しくなることで「米国売り」懸念も再燃してきやすい。

     国内造船首位の今治造船は6/26、2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)を子会社化すると発表。政府・自民党も国内造船業を復活させるための政策パッケージ策定を検討し始めた。船舶エンジン・部品を含めて最も注目すべき業界へと変貌しつつある。


    ■日米関連銘柄の相対株価比較~AI半導体、露光装置、データセンター

     日米株式相場は4月以降、AI半導体、半導体製造装置、データセンター等の関連銘柄を中心に上昇基調を示した。AI半導体では半導体メーカーの米エヌビディア<NVDA>に対しアドバンテスト<6857>が半導体検査装置を提供するなど密接に関係する。半導体製造装置ではEUV(極端紫外線)露光装置メーカーの蘭ASMLホールディングス<ASML>とEUV露光装置で使う検査装置を開発・製造するレーザーテック<6920>も密接な関係がある。データセンターで電気と光の信号を相互に変換する光トランシーバーを手がける米コヒレント<COHR>は、光を使う高速通信に不可欠なフォトダイオードを扱うデクセリアルズ<4980>や情報インフラ向け光ファイバーケーブルに強いフジクラ<5803>と補完関係にある。

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    ■家賃が上昇加速、インフレ定着も~金利上昇コスト転嫁と不動産株の動向

     総務省が5/30に発表した5月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)によると、家賃は前年同月比1.3%上昇と、4月に続き1994年11月以来の伸びだった。民営家賃も同様に、1.8%上昇と1994年3月以来の高水準だった。物件の維持・修繕費の上昇や借入金利上昇に伴うコストの増加を家賃に転嫁する動きが進んだ。家賃はいったん上昇すると下がりにくい価格粘着性が高いとされる。

     日銀の資料によると、短期貸出金利の基準となる短期プライムレートは1.875%と、2008年以来の高水準にある。住宅ローンを借りる人の約8割が変動型を選択しており、金利上昇によりローンを抱える物件オーナーが家賃引き上げに動いているとみられる。銀行株と不動産株の株価が連動する可能性があるだろう。

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    参考銘柄


    ダイハツインフィニアース<6023>

    ・1966年にダイハツ工業から分離独立してダイハツディーゼルを設立。2025年5月に社名変更。船舶ディーゼル発電用補機の世界大手。コージェネ(熱併給発電)も扱う。25年3月に自己株TOB実施。

    ・4/28発表の2025/3通期は、売上高が前期比8.6%増の887億円、営業利益が同47.0%増の76億円。内燃機関部門では、船舶機関(全体売上比率82%)は同67%増収、セグメント利益が同48%増の92億円。陸用機関(全体売上比率13%)は同16%増収、セグメント利益が同37%増の17億円。

    ・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比7.6%減の820億円、営業利益が同34.5%減の50億円、年間配当が同横ばいの62円。自己株TOB(公開買付)により、造船メーカー国内最大手の今治造船が筆頭株主となった。自民党の海運・造船対策特別委員会と経済安全保障推進本部は6/20、合同で「わが国造船業再生のための緊急提言」を石破首相に提出。業界再編の恩恵が見込まれる。


    精工技研<6834>

    ・1972年に東京都大田区で設立。精機関連(精密金型、精密成型品、精密金属部品等)と光製品関連(光通信用設備部品、光部品形状測定装置、無給電光伝送装置等)の分野で製造・販売を行う。

    ・5/14発表の2025/3通期は、売上高が前期比26.6%増の199億円、営業利益が同167%増の28億円。生成AI(人工知能)の普及や5G通信の拡大を背景にデータセンター新設が増加。売上比率54%の光製品関連事業は、光通信用部品需要増を受けた光コネクタ研磨機等が伸びて53%増収。

    ・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比10.1%増の220億円、営業利益が同6.5%増の30億円、年間配当が同10円増配の75円。電気信号と光信号を相互変換する「光電融合」がデータセンターの過剰電力消費に対し省電力化を実現できる技術として注目を集めている。同社が創業以来培ってきた精密加工・精密成形・光学技術の3つの基盤技術の統合的な活用への需要が一層高まるだろう。


    浜松ホトニクス<6965>

    ・1948年に堀内平八郎が静岡県浜松市で東海電子研究所を創業。主に電子管事業(光電子増倍管、イメージ機器及び光源)、光半導体事業、画像計測機器事業(画像処理・計測装置)を展開。

    ・5/9発表の2025/9期1H(10-3月)は、売上高が前年同期比2.7%増の1067億円、営業利益が同46.3%減の107億円。電子管事業(売上比率35%)は8%減収、営業利益が25%減の100億円。光半導体事業(同37%)は3%減収、営業利益が37%減の67億円。レーザ事業(同11%)が259%増収。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比7.3%増の2189億円、営業利益が同25.0%減の241億円、株式分割考慮の年間配当が同横ばいの38円。レーザ関連製品はシリコンウエハを高速・高品位に切断する製品が伸長。データセンター向けの光電融合技術でも伸びが見込まれる光半導体製品工場に関し、25年5月より後工程生産向けの新棟が稼働。前工程を担う新棟も25年12月より稼働予定。


    琉球銀行<8399>

    ・1948年設立。沖縄県の預金・貸出でシェア首位。本体で行う銀行業のほかリース業、クレジットカード事業、信用保証業を子会社で営む。沖縄銀行と「沖縄経済活性化パートナーシップ」を締結。

    ・5/13発表の2025/3通期は、売上高にあたる経常収益が株式等売却益や貸出金利息、リース業収入増加等により前期比4.9%増の691億円、当期利益が同1.8%増の57億円。対経常収益の経費率(臨時損益を除く)が1.2ポイント低下の41.5%。不良債権処理費用の増加を吸収して増益を確保。

    ・2026/3通期会社計画は、経常利益が前期比14.1%増の95億円、当期利益が同13.0%増の65億円、年間配当が同2円増配の40円。沖縄本島北部に広がる自然を舞台に、最新鋭のアトラクションや地元食材のグルメ等を備えた大自然没入型テーマパーク「ジャングリア沖縄」が7/25開業予定。メガバンクが軒並み慎重姿勢の中、総事業費700億円調達の中心となったのが同行と商工中金だった。


    YTLコーポレーション(YTL)  市場:マレーシア   2.27 MYR (6/26終値)

    ・1955年創業の総合インフラ開発企業でマレーシア大手コングロマリットの一つ。1996年にアジア系で初めて東証に上場したほか、2010年に北海道のニセコビレッジを買収してリゾート開発に注力。

    ・5/22発表の2025/6期3Q(1-3月)は、売上高が前年同期比1.5%増の73.18億MYR、営業利益が同10.2%減の14.24億MYR。シンガポール上場NSL社を買収した効果によりセメント・建築資材事業が堅調だったものの、売上比率62%を占める公益事業では、発電部門の価格下落が利益面で響いた。

    ・シンガポールNSL社は、マレーシア、ドバイ、フィンランド、シンガポールで事業を展開し、特にシンガポールでは化学廃水や油性廃水の処理と物流サービスを提供している。フィンランド子会社はクルーズ船向けの防火扉の設計と供給を行う。マレーシアとシンガポールの両国間で2025年1月に「ジョホール・シンガポール経済特区」の設立で合意。公益事業のデータセンター関連に追い風だろう。


    ※執筆日 2025年6月27日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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