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    2025年5月30日 15時31分

    出番を待つトランプ政策銘柄~米国債問題をクリアできるか?【フィリップ証券】

     米連邦議会下院は5/22、大型減税を盛り込んだ税制・歳出法案を僅差で可決し、上院に送った。議会予算局によると今後10年間で連邦債務が現在の36兆2000億ドルから3兆8000億ドル程度増えると見込まれる。「米国債売り・米ドル売り」につながるリスクが意識されるのは、上院審議が行われる6月上旬だろう。

     ベッセント米財務長官は5/23、銀行の米国債取引に制約を与えてきた規則である「補完的レバレッジ比率(SLR)」を当局が今夏に緩和する可能性があると述べた。銀行の自己資本規制の一つであるSLRから国債が除外されれば、銀行は中核的自己資本比率に影響を与えずにより多くの国債を購入できる。また、格付会社ムーディーズ・レーティングスが5/16に米国債の信用格付けを最上位「Aaa」から「Aa1」に引き下げたことも今のところ材料視する向きは少ない。その一方で、大手金融サービスのS&Pグローバルによる「Capital IQ」モデルは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場の価格に基づき、米国債格付けを現行水準より6段階低い「BBB+(トリプルBプラス)」に相当すると示唆している。

     トランプ政権の税制・歳出法案が議会を通過すれば、政策に財源の裏付けがついて米国株投資のテーマの柱として投資家に認識されるだろう。その中でも、①次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構想、および、②原子力エネルギーに関連する大統領令の二点が注目される。

     「ゴールデン・ドーム」は、敵国の攻撃から全米を防衛するシステムに3年で1750億ドルの予算を投入する計画であり、初年度は250億ドルが想定される。軍事産業大手企業のほか、イーロン・マスク氏が率いるスペースXがデータ解析大手のパランティア・テクノロジーズ<PLTR>や無人航空機を手がけるアンドゥリル・インダストリーズ(非上場)と組み、入札に参加した。原子力エネルギーに関連する大統領令は、原発の新設に向けた審査期間の短縮、国有地での原発建設の許可、輸入に依存する核燃料の内製化の促進などを含む。小型モジュール炉(SMR)と呼ぶ出力30万キロワット以下の原発は、主要設備を工場で製造して現場で据え付けるため工期を短くして建設費を抑えられることから注目される。オクロ<OKLO>やニュースケール・パワー<SMR>がSMRの開発に取り組んでいる。

     他方、トランプ氏が、アップル<AAPL>の外国製iPhoneに対し25%の関税を課す考えを示したことは、裾野の広いiPhone関連の電子部品・半導体メーカーの株価への重しとなる面があるだろう。さらに、炭化ケイ素ウエハー最大手のウルフスピード<WOLF>が日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条(チャプター11)の適用申請に向けて準備している点は看過できない。電気自動車(EV)需要に伴う車載半導体に関連する銘柄は要注意だろう。


    ■「S&P500/CMX金先物価格」倍率~直近2倍近辺も、1990年まで1倍未満

     国際金融システムは1971年8月のニクソン・ショックで金と米ドルの交換が停止された後、米ドル信認低下に伴い1973年に為替レートを市場の需給に応じて自由に決める変動相場制へ移行した。

     米国株の代表的株価指数のS&P500をCMX金先物価格で割った倍率は1990年頃まで1.0倍未満となるのが通常だったが、1990年代は同倍率が上昇基調で推移。ITバブルがピークアウトした2000年以降、2000年代が同倍率の低下、2010年代が緩やかな上昇といったサイクルを辿った。インフレが顕在化してきた2022年以降は同倍率が低下に転じる中、最近10年間は概ね同倍率が2倍近辺で推移してきた。今後は、トランプ関税に伴うインフレの動向次第で同倍率がさらに低下する可能性があるだろう。


    【タイトル】


    参考銘柄


    コンステレーション・エナジー<CEG> 市場:NASDAQ・・・2025/8/6に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・2022年2月にエクセロンから分離独立したクリーンエネルギー企業。発電容量のうち約9割がカーボンニュートラル。米国最大のカーボンフリーエネルギー(原子力、風力、水力、太陽光)生産者。

    ・5/6発表の2025/12期1Q(1-3月)は、営業収益が前年同期比10.2%増の67.88億USD、非GAAPの調整後営業利益ベースEPSが同17.6%増の2.14USD。原子力発電量が、生成AI(人工知能)関連インフラ需要増を背景に0.4%増だったことに加え、販売電力価格が事業エリアの幅広い地域で上昇。

    ・通期会社計画は、調整後営業利益ベースEPSが同3-11%増の8.90-9.60USDと従来計画を据え置いた。約3240万キロワットの発電能力のうち6割が原子力発電。同社は約16億USD投資して、2019年に廃炉となったスリーマイル島原発1号機を2028年に再稼働予定。同原発の電力供給先はマイクロソフト<MSFT>のデータセンター。さらに、発電大手カルパインを164億USDで年内買収完了予定。


    ヘンリー・シャイン<HSIC> 市場:NASDAQ・・・2025/8/6に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

    ・1932年設立のヘルスケア事業。米国を中心に医療機関を顧客とする。医師、歯科医師、獣医師向けの製品販売を行う「ヘルスケア流通事業」、開業医向けの「テクノロジー・付加価値事業」を営む。

    ・5/5発表の2025/12期4Q(1-3月)は、売上高が前年同期比0.1%減の31.68億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.5%増の1.15USD。売上高販管費率が同1.6ポイント低下の23.3%と営業効率が向上した。売上比率84%のヘルスケア流通事業のうち、歯科向けが61%、病院向けが39%を占めた。

    ・通期会社計画は、売上高が前期比2-4%増、調整後EPSが同1-4%増の4.80-4.94USDと、従来計画を据え置いた。米国ではフッ素に虫歯の予防効果があるとして、フッ素が水道水に添加されている中、米厚生長官のロバート・ケネディ・ジュニア氏は、フッ素が発がん性や知能低下などの弊害があると主張して禁止を求めている。ユタ州に続きフロリダ州が5/15、水道水へのフッ素添加を禁じた。


    ヴァンエック・ウラン原子力ETF<NLR> 市場:NYSEArca・・・分配金:年1回(12月)

    ・MVIS Global Uranium & Nuclear Energy 指数に連動する投資成果を目指す。同指数はウラン・原発セクターの主要銘柄に投資。浮動株ベース時価総額加重平均であり、1銘柄のウェート上限が8%。

    ・5/23終値で時価総額が12.4億USD、過去12ヵ月間の実績分配金利回りが0.3%。組入上位7銘柄は、コンステレーション・エナジー<CEG>、オクロ<OKLO>、カメコ<CCJ>、ニュースケール・パワー<SMR>、パブリック・サービス・エンタープライズ・グループ<PEG>、エンデサ(スペイン)、PG&E<PCG>

    ・昨年末終値から5/23終値までの騰落率は、当ETF(インカムゲインを除く)が+19.2%に対し、ダウ工業株30種平均株価が▲2.2%、S&P500株価指数が▲1.3%、ナスダック100が▲0.5%。トランプ米大統領は5/23、原子力エネルギー関連の4つの大統領令に署名。原子力発電所の新設に向けた審査期間短縮のほか、核燃料の内製化を促すなど、電力需要増と同時に安全保障強化も狙う。


    プラネット・ラブズ<PL> 市場:NYSE・・・2025/6/4に2026/1期1Q(2-4月)の決算発表を予定

    ・2010年設立の衛星画像データプロバイダー。軌道上で200機以上の衛星を運営し、毎日撮影した地球イメージデータを収集・提供するほか、基礎的な分析能力を備えたプラットフォームを提供。

    ・3/20発表の2025/1期4Q(2-4月)は、売上高が前年同期比4.6%増の61.5百万USD(会社予想61-63百万USD)、非GAAPの調整後EBITDAが前年同期の▲9.8百万USDから2.4百万USD(同0-2.0百万USD)へ黒字転換。調整後粗利益率が7ポイント上昇の65%。営業キャッシュフローも赤字幅縮小。

    ・2026/1通期会社計画は、売上高が前期比6-15%増の260-280百万USD、調整後EBITDAが▲13-▲7百万USD(前期実績▲10.6百万USD)、調整後粗利益率が55-57%(同60%)。トランプ米大統領は5/20、次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」の設計を選定したと発表。費用は約1750億USDに上る見通し。同社に対してもイーロン・マスク氏のスペースXを通じて恩恵が期待される。


    RTX<RTX> 市場:NYSE・・・2025/7/25に2025/12期2Q)4-6月)の決算発表を予定

    ・ユナイテッド・テクノロジーズの航空宇宙部門とレイセオンの経営統合で2020年に設立。コリンズ航空宇宙システム、プラット&ホイットニー、インテリジェンス&宇宙、ミサイル&防衛の4部門から構成。

    ・4/22発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.2%増の203.06億USD、調整後EPSが同9.7%増の1.47USD。3月末受注残が同7%増の2170億USD(うち、商業部門は横ばいに対し、防衛部門が19%増)。フリーキャッシュフローが前年同期の▲1.25億USDから7.92億USDへ黒字転換。

    ・通期会社計画は、一時的要因を除く既存事業ベースの売上高成長率が前期比4-6%増、調整後EPSが同5-7%増の6.00-6.15USD、フリーキャッシュフローが同56-67%増と従来計画を据え置いた。トランプ米大統領が発表した「ゴールデン・ドーム」構想について、米政府は既に参画が決まった企業として、同社のほか、ロッキード・マーチン<LMT>とL3ハリス・テクノロジーズ<LHX>の名前を挙げた。


    ズーム・コミュニケーションズ<ZM> 市場:NASDAQ・・・2025/8/21に2026/1期2Q(5-7月)の決算発表を予定

    ・2011年設立。クラウドを使用したWeb会議サービスを提供。ビデオ・オンライン会議、チャット、レコーディングなどを組み合わせ、主にWeb上でのコミュニケーション・ソフトウェアを提供する。

    ・5/21発表の2026/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比2.9%増の11.74億USD(会社予想11.62-11.67億USD)、非GAAPの調整後EPSが同5.9%増の1.43USD(同1.29-1.31USD)。直近12ヵ月間で10万USD超を支出した顧客が8%増加。自社株買いを560万株となり、前四半期の430万株から加速。

    ・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比2.9-3.1%増の48.0-48.1億USD(従来計画47.85-47.95億USD)、調整後EPSを同0.4-0.9%増の5.56-5.59USD(同5.34-5.37USD)とした。同社は生成AI(人工知能)普及が追い風となっている。AIアシスタントの「Zoom AI Companion」のサービス提供により、会議内容をリアルタイムで自動要約できるなど、日常業務における生産性向上に貢献している。


    執筆日:2025年5月26日


    フィリップ証券
    フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
    (公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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    フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。



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