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    2023年5月24日 13時30分

    国内金の最高値更新が続く、米地銀の経営不安が追い風に <コモディティ特集>

     国内金は5月、米国の金融不安が再燃したことを受けて一段高となり、現物(店頭小売価格、税込)が9794円、 先物(JPX金先限)が8870円とともに最高値を更新した。

     4月に米地銀のシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行の破綻、スイスの金融大手クレディスイスの信用不安を受けて金融不安が広がったが、買収されたことで落ち着きを取り戻した。次に米地銀ファースト・リパブリック・バンクが破綻。米金融大手が支援策をまとめたが、第1四半期決算で預金が4割減少したことが明らかになると、経営不安が再燃し、株価が急落した。5月に入ると米連邦預金保険公社(FDIC)が同行の破綻と公的管理下に置くことを発表した。JPモルガン・チェースが同行の預金と資産を買収したが、パックウェスト・バンコープ<PACW>の株価が急落するなど、米地銀の破綻に対する懸念が広がった。ただ、米連邦準備理事会(FRB)の報告で「SVBとシグネチャー銀行の破綻につながった要因は銀行部門に広範に見られるものではない」とされ、米地銀の信用不安は最悪期を脱したとの見方が出た。

     その後は米債務上限問題に対する懸念が金の強材料になった。米財務省は、早ければ6月1日に政府の債務支払いを履行できなくなる可能性があると発表した。バイデン米大統領と議会指導部が協議し、債務不履行(デフォルト)はないとされ、楽観的な見方が広がる場面も見られたが、19日の協議で行き詰まった。主要7ヵ国首脳会議(G7広島サミット)に出席した米大統領が帰国すると22日に協議が再開された。イエレン米財務長官は6月1日が交渉の期限としており、まとまるかどうかを確認したい。

     5月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%ポイントの追加利上げが決定され、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は5.00~5.25%となった。6月以降は利上げ停止の可能性が示唆されたが、経済指標次第とされた。その後に発表された指標が堅調な内容となり、米金融当局者のタカ派発言が出るなど追加利上げの可能性が高まった。4月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は25万3000人増と事前予想の18万人増を大幅に上回った。また、失業率は53年ぶりの低水準となる3.4%に改善した。米小売売上高は前月比0.4%増と堅調となり、米鉱工業生産指数は製造業の生産指数が同1.0%上昇と事前予想の0.1%上昇を上回った。また、米新規失業保険申請件数は前週比2万2000件減の24万2000件と労働市場のひっ迫が示された。

     パウエル米連FRB議長が19日の会議で地銀の混乱を指摘したことで追加利上げの見方が後退したが、米金融当局者の発言から6月に利上げを停止しても、その後に利上げする可能性があることが示された。

     バイデン米大統領がG7広島サミットでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、3億7500万ドルの新たな軍事支援を約束したことは軍需産業への資金投入であり、米経済の下支え要因である。

    ●現物相場は2ヵ月連続で上値を試す

     現物相場は昨年3月以来の高値2066ドルをつけ、2ヵ月連続で上値を試した。同月高値2067ドルを突破すれば史上最高値2072ドルを試すとみられている。ただ、月足では2ヵ月連続で長い上ヒゲが現れ、2000ドル台を維持できなかった。中国の金準備増加が続いていることは支援要因だが、4月の小売売上高や鉱工業生産指数が事前予想を下回り、景気回復の遅れに対する懸念が出ている。2000ドル割れで上海金のプレミアムが上昇しており、実需筋の買いが続くかどうかを確認したい。

     また、目先はトルコ大統領選の決選投票が28日にある。3位だった候補が現職のエルドアン大統領を支持すると表明しており、現職が有利とみられている。トルコでは昨年、インフレヘッジとして金が買われ、需要が急増した。中銀の金準備も148トン増の542トンとなった。ただ、金輸入の増加で経常赤字が拡大したことから2月に輸入抑制措置が採られ、3月には金準備が15トン売却された。大統領選の結果とトルコの政策の見通しを確認したい。

     一方、米国の商業用不動産に対する懸念が出ていることは金の下支え要因である。米地銀が商業用不動産への最大の貸し手だが、不動産向け融資の上限を上回っており、売却される可能性が出ている。リスクが表面化すると、金は再び2000ドル台を試すとみられる。

    ●金ETFに安値拾いの買い

     世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、5月22日に943.89トン(3月末928.02トン)に増加した。高値で利食い売りが出る場面も見られたが、2000ドル割れの安値拾いの買い意欲が強い。当面は6月1日が期限とされる米債務上限問題の行方を確認したい。

     一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは昨年5月3日以来の高水準となる5月9日の19万5814枚をピークとして縮小し、16日は17万9814枚となった。2000ドル割れで手じまい売りが進んだ。

    (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

    株探ニュース