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    2022年10月26日 11時41分

    S&P500 月例レポート ― 金利上昇・高インフレの現実に屈した市場 (3) ―

    ●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

     ○FRBのパウエル議長は講演で、インフレとの戦いを続ける姿勢を明らかにしました。市場はこれを受け、FRBが9月下旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.75%の利上げを行うとの見方を強めました。

     ○地区連銀経済報告(ベージュブック)では、景気減速の兆候が見られ、経済見通しが一段と弱まり、物価上昇は収束し始めている可能性があることが指摘されました。

     ○カナダ銀行は政策金利を0.75%引き上げ(従来の水準は2.50%)、追加利上げが必要となる可能性を示唆しました。

     ○欧州中央銀行(ECB)は、7月の0.50%に続き、9月は0.75%の利上げを行い(同0.00%)、今後も利上げを継続する可能性を示唆しました。次回の政策理事会会合は10月27日に開かれます。

     ○スウェーデン中銀のリクスバンクは、インフレが高止まりしていると警告し、予想を上回る1.00%の利上げを行いました。30年ぶりの大幅な利上げ幅で、政策金利は1.75%となりました。

     ○FRBは予想通り、0.75%の利上げを全会一致で決定しました。3会合連続での0.75%の利上げとなり、政策金利は3.00%になりました。

      ⇒FRBは2022年末までにさらに1.25%の追加利上げを行い、政策金利を4.25%とする意向です(年内のFOMC会合は次回の11月1-2日と12月13-14日に予定されています)。さらに、2023年の金利水準は4.6%、2024年には3.9%を見込んでおり、2024年には利下げが行われることが示唆されます。

     ○ノルウェー中銀は、政策金利を0.50%引き上げて2.25%としましたが、今後の追加利上げについては「より漸進的」になるとの見方を示しました。

     ○イングランド銀行(BOE)は、英ポンドの対ドルレートが1985年以来の低水準に下落したことを受け、政策金利を0.50%引き上げて2.25%としました。

     ○日銀は、短期政策金利である翌日物金利をマイナス0.10%、長期金利である10年物国債の誘導目標を0%に据え置きました。また、通貨の下支えのために1998年以来となる円買いの為替介入を行いました。

     ○英国政府は、減税による景気刺激策を打ち出しました。英ポンドは対ドルで史上最安値を更新し、BOEは減税の影響を打ち消すために「必要なだけの規模で」長期国債を購入すると発表しました。

    ●企業業績

     ○決算期がずれている企業による2022年第3四半期決算の発表が始まりました。15銘柄中9銘柄で利益が予想を上回り、また9銘柄で売上高が予想を上回りました。第3四半期は前期比17.8%、前年同期比6.1%の増益が見込まれています。

     ○2022年第2四半期の決算発表シーズンが終わり、暫定分を含む決算内容を振り返ると、372銘柄で営業利益が予想を上回り(74.5%)、102銘柄で予想を下回り、25銘柄で予想通りとなりました。また、売上高は356銘柄で予想を上回り(71.5%)、四半期ベースでの過去最高を更新しました。

     ○2022年第2四半期は前期比5.0%の減益(第1四半期は過去最高となった2021年第4四半期から13.0%減益)、前年同期(2021年第2四半期)比10.0%の減益となりました。売上高は前期比2.3%増、前年同期比12.2%増となり、過去最高を更新しました。

     ○2022年通年の利益は前年比0.3%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年予想株価収益率(PER)は17.2倍となっています。

     ○2023年の利益は同14.3%増が見込まれており、2023年予想PERは15.0倍となっています。

     ○2022年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第1四半期の16.6%から2022年第2四半期は19.8%に上昇しました(5銘柄中1銘柄近く)。この割合は2021年第2四半期は5.4%でした(2020年第2四半期は17.8%、2019年第2四半期は24.2%)。

     ○2022年第2四半期に、企業によるコスト上昇の転嫁はあったものの、営業利益率は10.86%となり、前四半期の11.93%から低下しました(1993年以降の平均は8.24%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

    ●個別銘柄

     ○生活用品小売企業のベッド・バス&ビヨンド<BBBY>は、現金調達のための新株発行、150店舗の閉鎖、従業員の削減を行うと発表しました。

     ○スナップチャット(Snapchat)を提供するソーシャルメディア企業スナップ<SNAP>は、コスト削減のため、従業員(6400人)の20%をレイオフすることを明らかにしました。

     ○コーヒーメーカーでコーヒーチェーンを展開するスターバックス<SBUX>は、ラクスマン・ナラシンハン氏(英消費財大手レキット・ベンキーザー・グループの前最高経営責任者(CEO))を次期CEOに指名しました。

     ○ドラッグストアチェーンのCVSヘルス<CVS>はアマゾン・ドット・コム<AMZN>と医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>を退けて、ヘルスケア関連企業のシグニファイ・ヘルス<SGFY>を80億ドル(現金)で買収すると発表しました。

     ○iPhoneメーカーのアップル<AAPL>は、iPhone 14(Pro、Pro Max、iPhone 14 Plus、ベースモデル、9月16日に販売開始)を発表しました。iPhone 14は前シリーズから若干改良されていますが、価格は据え置かれました。

     ○映画館チェーンのリーガル・シネマズのオーナーであり、AMCエンターテインメント・ホールディングスA<AMC>に次ぐ世界第2位の映画館運営企業である英国のシネワールド・グループ(CINE.ロンドン)が米連邦破産法11条の適用を申請しました。

     ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、リサーチ・コンサルタント企業のコスター・グループ<CSGP>と不動産投資信託のインビテーション・ホームズ<INVH>を2022年9月19日の取引開始前にS&P500指数に追加し、アパレル大手PVH<PVH>と娯楽企業ペン・エンターテインメント<PENN>を同指数から除外しました。

      ⇒S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、公益企業のPG&E<PCG>とエネルギー企業のEQT(EQT Corporation)<EQT>を2022年10月3日の取引開始前にS&P500指数に追加し、ソフトウエア企業のシトリックス・システムズと不動産企業のデューク・リアルティーを同指数から除外すると発表しました。

    ●注目点

     ○住宅ローンの30年固定の平均金利が6.7%に達しました。これは2007年7月以来の最高で、1年前の3.0%の2倍の水準です。

     ○ロシアのプーチン大統領はウクライナ4州の併合について住民投票を実施し、その後に同4州を併合しました。

     ○米議会は2022年12月16日までの政府資金を提供するつなぎ予算案を可決し、10月1日の政府機関の閉鎖を回避しました。

    ※「金利上昇・高インフレの現実に屈した市場 (4)」へ続く

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