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    2026年8月20日 18時10分

    明日の株式相場に向けて=「バイバック増額」でグロース株の騰勢は続くのか

     20日の東京株式市場で日経平均株価は反発。終値は890円高と前日まで2営業日で3900円近く下落したことを踏まえるとやや力強さに欠ける動きとなった。前日との組み合わせで日足は「陰の陽はらみ」を形成。翌日に上昇し陽線を引けば、底入れのシグナルとなる。TOPIXも同様だ。

     世界的な金利上昇(債券価格の下落)の流れに歯止めを掛けたのが、米財務省が19日に発表した既発国債対象の買い入れ・消却(バイバック)の上限増額措置である。過去に発行されて取引量が少なくなった超長期債が対象。中央銀行がマーケットに資金を供給するQE(量的緩和)ではなく、既発債の取引活性化を目的に定期的に行われるオペレーションで、買い入れ上限額は20億ドルから、「少なくとも40億ドル」に変更された。巨大な債券市場を前に、日本円にして3170億円程度の増額措置は実弾としては大した規模ではなく、開始時期も9月9日からとまだ先だ。イールドカーブの傾きが急となる「スティープニング」を見越してポジションを構築してきた債券投資家に対し、ベッセント財務長官が「銃口」を向けた格好となったが、不意を突かれた市場参加者は即座に反応し、米長期金利は低下した。ただし短期ゾーンは発行増の思惑が膨らんでいる。

     短期金利の上昇と長期・超長期金利の低下を促す「オペレーション・ツイスト(ツイストオペ)」的な手法が奏功することになれば、イールドカーブの傾きは緩やかになる。短期ゾーンで資金を調達し、長期で運用する銀行株の利ざや縮小につながることになる。20日の銀行株をみると三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクは冴えない動きとなった。一方、米長期金利と逆相関の金相場の上昇と、金に連動した銀相場の上昇は住友金属鉱山<5713>や東邦亜鉛<5707>の物色人気化につながった。

     米財務省の発表に先立ち、韓国では半導体メモリー大手のSKハイニックス<SKHY>が日本円で40兆ウォン(約4兆5000億円)の自社株買いと消却、すなわちバイバックを19日に発表し、20日の同社株は急伸した。同日にはサムスン電子が100兆ウォンを超える株主還元策を発表する見通しだと、現地メディアが報じている。キオクシアホールディングス<285A>の株価には一定の支援材料となったものの、AI・半導体株全般を押し上げるまでには至らなかった。

     米国の連邦債務総額は18日時点で40兆ドルを突破し、2017年のトランプ大統領就任時点から2倍以上に膨らんでいる。コロナ禍を経て財政出動に舵を切り、ウクライナ戦争からホルムズ海峡危機に至るまで戦乱が続いた結果、構造的なインフレ圧力にも苛まれるようになった。その構図自体は、ベッセント財務長官がマーケットに銃口を向けたとしても何ら変わってはいない。米財務省のバイバック上限増額は一種の「時間稼ぎ」に過ぎず、狡猾さを自認する債券投資家は時が経てば再び財政をネタに長期金利の上昇を見越したショートポジションを構築するに違いない。債券市場の反応は「面従腹背」の色合いが濃いと言えそうだ。

     20日は「金利低下=グロース株」という連想もあって、AI・半導体を除く成長期待株は全般に買いが優勢となり、東証グロース市場250指数は4.67%高と上昇率は5月8日以来の大きさとなった。「SaaSの死」説を根拠に6月まで低調だったフリー<4478>が騰勢を強め、GENDA<9166>など材料株が活況高となったほか、主力のトライアルホールディングス<141A>も一段高となっている。

     市場では「米国の財政問題の根本のところは何も変わっていないとはいえ、金利がいったん落ち着きを取り戻した事実は、短期的には株式相場のサポート要因になる」(国内証券)との声がある。グロース銘柄のなかではサイバーセキュリティー関連のFFRIセキュリティ<3692>や防犯・監視カメラのセーフィー<4375>の反騰機運の高まりに期待したいところ。「バイバック」への市場の関心が一段と高まるというシナリオを描くのなら、キャッシュリッチ・好財務銘柄の仕込み場が到来したともいえる。ガリレイホールディングス<6420>や日本ギア工業<6356>、日本パーカライジング<4095>などに注目をしておきたい。

     日程面では21日は国内では寄り前に7月全国消費者物価指数が公表される予定。取引時間中には7月の食品スーパー売上高が発表される。海外ではユーロ圏や米国の8月製造業PMI、サービス業PMIが公表される予定。8月のユーロ圏消費者信頼感指数の発表も控えている。(長田善行)

    出所:MINKABU PRESS