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    2025年11月19日 10時00分

    清水満昭(東洋証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

     日米の株式相場は上下動を繰り返しながら高い水準を維持している。日本では高市早苗政権の発足を受けて政策期待が高まり、米国では利下げが予測されている。もっとも米国のインフレ懸念や雇用不安は根強く、今後の相場に影響を与える懸念もある。トランプ米大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」と豪語したロシアによるウクライナ侵攻は収束のメドがつかず、イランを中心とした地政学的リスクも残る。

     金融・資本市場が「トランプ相場」の様相を呈する中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第43回は、東洋証券の清水満昭・投資情報部長に話を聞いた。

    ●清水満昭(しみず みつあき)
    東洋証券株式会社 投資情報部 部長
    1980年5月神奈川県生まれ。2005年4月東洋証券入社。同社広島支店をはじめ、国内の営業店にて、顧客ニーズをヒアリングし、最適な提案を行うソリューション営業に従事。2023年より現職。



    清水満昭氏の予測 4つのポイント
    (1)半年後の日経平均株価は5万~5万3000円程度
    (2)半年後のS&P500種株価指数は7200ポイント程度
    (3)半導体は当面、強気相場が続き、株式相場を下支え
    (4)注目するセクターは防衛関連、ゲームなどコンテンツ関連

    ―― 高市政権への政策期待もあり、特に日本の株式相場は堅調に推移しています。半年後(2026年5月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。

    清水:私は半年後の日経平均株価を5万円から5万3000円程度と予測しています。半年間は4万8000円から5万4000円程度で推移するでしょう。半年後のS&P500種株価指数<^SPX>は7200ポイント程度だと予測しています。

    ―― 米国株が特に上昇するという予測かと思います。予測の背景を教えて下さい。

    清水:米国では今年1月の「DeepSeek(ディープシーク)ショック」で半導体需要が縮むとの懸念が浮上し、株価が急落しました。しかし、夏場から米オープンAIの動画生成AI(人工知能)「Sora2(ソラ2)」などが登場し、データセンターへの投資が急増するとの見方が拡大しています。データを一時保存するDRAMを複数搭載した最新の複合部品「DDR5 DRAM」も今後普及していきます。DRAMの特徴は新世代と前の世代の互換性がないことです。半導体は製造に半年程度必要なので、すぐには増産できません。「DDR5 DRAM」のアウトプットが増え、その需要を満たせるようになるまでには早くても来年2月くらいまではかかります。こうした背景から半導体の需要や強気相場は当面続き、株式相場を下支えすると考えられます。


    図1 DRAMとNAND価格の推移
    【タイトル】

    ―― 半導体は早ければ来年1~2月に需要を満たすことができるという話でしたが、その後は相場が崩れるリスクがあるということでしょうか。

    清水:あくまで早ければと1~2月ということで、半導体需要を満たせる時期は遅れる可能性も少なくありません。日米の株式相場は半導体関連主導で上昇してきましたが、循環物色により割安株などにも上昇が波及しています。このため、半導体株が下がったとしても相場全体が大きく崩れるとは考えていません。

    ―― 米国ではインフレが続き、社会不安も広がっているように見えます。米連邦準備理事会(FRB)による利下げの先行きにも影響があるのではないでしょうか。

    清水:トランプ米政権の高関税政策の影響もあり、インフレは続く公算が大きいと思います。ただ、FRBは雇用をより重視しています。生成AIの影響でホワイトカラーの人材の一部が不要となり、アマゾン・ドット・コム<AMZN>など大手テック企業が人員削減をしています。生産性向上で雇用が悪化し、むしろ利下げしやすくなってくるでしょう。順調であればFRBは年末に1回、来年は年央までにもう1回、来年末にもう1回、それぞれ0.25%の利下げを実施すると考えられます。

    ―― 市場関係者の一部では、米国の貿易赤字を減らす観点から、トランプ政権主導による第二のプラザ合意のリスクを指摘する声もあります。半年後の円相場をどうみていますか。

    清水:私は半年後の円相場は1ドル=150~157円程度で推移しているとみています。円相場は上昇したとしても146~147円でしょう。市場で第二次プラザ合意への懸念があることは理解できます。トランプ政権としては何らかの動きをみせなければ貿易赤字を減らすのが難しいからです。

     ただ、物理的にできるかどうかは別の話です。日本は利上げしてもせいぜい1%でしょう。米国もインフレに悩まされており、ドル安政策のために極端な利下げはできません。構造的に円安が進んでいる以上、口先介入の効果は限定的です。政治的にも拡大したマーケット規模を考えても、かつてのプラザ合意のように日米欧がドル売り介入をするのは難しいように思います。


    図2 ドル・円(週足)
    【タイトル】

    ―― 日経平均株価はすでにダウ工業株30種平均の絶対値を超え、PER(株価収益率)も上昇しています。さらなる上昇余地はあるのでしょうか。

    清水:日経平均株価のPERは23倍程度まで上昇していますから、この半年の間には瞬間的に4万5000円程度まで下がる可能性はあると思います。ただ、日本では高市政権への政策期待だけでなく、東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業を念頭に「資本コストや株価を意識した経営」を要請しました。ROE(自己資本利益率)を引き上げようとしている日本企業も増えました。外国人投資家の間では日本株が再評価されているだけに、日経平均株価のPERのベンチマークは5年前の15倍程度から19倍程度には上昇しています。このため、過去のように日経平均株価が1万~2万円といった水準に戻ることはないでしょう。


    図3 日経平均株価とS&P500の予想PER推移
    【タイトル】

    ―― 日本株で注目するセクターや銘柄は。

    清水:まずは防衛関連全般です。背景には日本政府が防衛費をGDP比2%に引き上げることがあります。防衛関連の大型株では三菱重工業 <7011> [東証P]に注目しています。豪州政府は8月に日本政府からの提案を受け入れ、三菱重工などとフリゲート艦を共同で開発することになっています。三菱重工は欧州など競合に勝ったことから今後、ほかの国からの受注も見込めます。

     コンテンツ産業にも関心を持っています。市場規模は13兆円を超え、時価総額も自動車を超える規模に育っています。個別銘柄では任天堂 <7974> [東証P]に注目しています。ゲーム機「Nintendo Switch 2」は来年には製造販売が2500万~3000万台になると予想しています。過去の販売動向を見る限り、「Switch 2」のハード販売に成功すれば3年間は成長が継続すると考えています。


    (※聞き手は日高広太郎)

    ◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
    【タイトル】
    1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。


    株探ニュース