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    2022年6月25日 11時00分

    ESG最前線レポート ─「多様性と企業価値」

    第9回 「多様性と企業価値」

    ●女性取締役ゼロ企業に厳しい対応

     6月は上場企業の株主総会の季節。国内の機関投資家が、女性取締役がいない投資先企業に対し、取締役選任案などの総会議案に反対することを議決権行使基準に盛り込む動きが広がっています。

     世界では、女性役員比率が高い企業の方がROE(株主資本利益率)やROS(売上高利益率)などの経営指標がよい傾向にある、などの実証結果も出ており、早くから取締役会の多様性を重視していました。そして、近年は海外の機関投資家が、日本企業に女性取締役を増やすよう働きかける動きが見られます。

     2021年12月には、議決権行使助言業者で最大手のアメリカのISS(Institutional Shareholder Services: インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が日本の上場企業向けの議決権行使助言方針の改定を公表し、23年2月から女性取締役がいない場合には、経営トップの選任議案に対して反対を推奨する基準を導入するとしています。

     同じくアメリカの議決権行使助言会社のグラスルイス(Glass Lewis)は、2023年2月以降に開催される株主総会からは、プライム市場の上場企業については少なくとも10%以上の性別の多様性がない取締役会の場合、会長など最上級役員または指名委員長に対して、原則として反対助言を行う予定であるとし、方針を厳格化しています。

    ●なぜ、多様性(ダイバーシティ)が求められるのか

     なぜ、多様性が求められているのでしょうか。

     ダイバーシティは、取締役会を活性化し、リスク低減に寄与し、企業価値向上につながると捉えられているからです。

     世界の大企業が参加している世界経済フォーラムの創立者で会長のクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)教授は、「世界が潜在的に持っている能力の半分は女性にあり、したがって、国の競争力はその女性たちの能力をいかに引き出し、活用するかに大いにかかっている」と述べています。

     同フォーラムが発表している「Global Gender Gap Report」の21年度版では、対象156カ国中、日本は120位と遅れています。

     人材が国の競争力の決定要因であるというのは、企業にとっても同じであり、多様な人材の能力を発揮させ、生産性を高め、組織の活力を向上させることが求められています。

     例えば、今回のコロナ危機では、これまでの常識を覆すほどの短期間でワクチンが開発されましたが、中心的な役割を担ったドイツのベンチャー企業ビオンテック(BioNTech)<BNTX>の創立者はトルコからの、製薬会社のモデルナ<MRNA>の創立者はギリシャ系、ファイザー<PFE>の創立者はアルメニア系の移民であり、世界中でワクチン開発に関わった人々の半分が女性であり、その国籍は60カ国に及んでいたそうです。このことは、多様性がいかに価値をもたらすかを示しているのではないでしょうか。

    ●ダイバーシティは投資の指標にも

     ダイバーシティは、ESGにおける「S(Social:社会)」での取り組みの一つです。

     ESG投資では、トップが多様性を活かす人事施策を経営戦略に位置づけ、人材育成・活用に継続的に取り組むことで自らの競争力を高め、企業の持続可能な発展につなげているかを評価し、投資判断の指標になっています。

     弊社が「S」を中心に投資助言を行う投資信託も、2004年より運用を開始しており、弊社の評価の高い企業の方が低い企業よりもパフォーマンスに寄与するとの分析結果が出ています。ファンドマネージャーも、非財務評価が「投資の指標になり得る」と評価しています。

     取締役会の多様性は、「G:ガバナンス」にも関連します。機関投資家がこのような方針を打ち出す中、個人投資家もESG投資によって、企業のダイバーシティを後押しすることができるのではないでしょうか。

    情報提供:株式会社グッドバンカー

    (2022年6月21日 記/次回は7月30日配信予定)

    株探ニュース